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2017年02月08日

二次元アニメの時代ふたたび!? 『君の名は。』がもたらす世界の潮流

1月29日(日) ニコ生 岡田斗司夫ゼミ のハイライトです。
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今回は二次元アニメの時代がまたくるかもしれない!?話です。


深夜にテレビ見てたら、倉本聰が出てたんだよね。

倉本聰というのはドラマ『北の国から』」の脚本家で、テレビ界では有名な重鎮。
「富良野塾」というのをやっていて、演技派の役者さんがいっぱい出てきた。すごい影響力のあるおじさんなんだ。

その倉本聰がインタビューを受けてた。
『北の国から』は終わってからもう10年以上経ってるんだよね。
これから新しい『北の国から』を作るつもりあるのか?という話になった。
僕はそれにあんまり興味なかったんだけど、インタビュアーがいきなり「『君の名は。』を見ましたか」と。

そしたら倉本聰は生き返ったように「見たよ。すごいね」と。
『君の名は。』をめちゃくちゃ誉めだしたんだよね。
 
あれができるんだったら。あんな新しいことが出来るのだったらって。
そしたらインタビュアーもノッてきて
「じゃあ、倉本さん。次はアニメじゃないですか」と聞いたら
「そうなんだよ。俺も考えてるんだよ」

あの『北の国から』って五郎が最後に蛍と純に残す言葉、遺言みたいなのがあるんだよね。それが富良野に行くと、石碑になってるらしいんだ。

倉本聰には見せたい絵があった。
『北の国から』を本当はいつまでも作り続けたかった。
でも、色んな事情があって作れない。

でも『君の名は。』を見た時に、あー!っと思ったと思うんだよね。
アニメだったら、役者さんがスキャンダルを起こさないし、歳を取らない。
でも一番大きいのは、富良野の美しい風景というのを撮るのに、テレビドラマでは限界を感じてたんじゃないかな。
『君の名は。』で何が一番面白くて新しかったのかというと、普通の風景をものすごく美しく・きれいに撮ってるということ。
そこがめちゃくちゃ新しくて、倉本聰はそのあたりに食いついて来たんじゃないかな。

たとえば、黒沢明ってモノクロの映画を撮る時に、逆光で竹藪の中をガーッと走るシーンがあるんだけども。その時に竹藪の竹を、墨で真っ黒に塗らせたんだよね。
そしたら逆光の中で、黒い竹藪の中をガーッと走るってめちゃくちゃ格好いいじゃん。現実のまま撮ればいいんだけども、黒沢明は、自分の中に「こういう風に見せたい」格好いい絵があるとなったら、もう黒く竹藪を塗っちゃうんだよね、

その考え方は、もうアニメなんだよね。実写と言うよりは。
アニメというのは、そういうことが出来ちゃう。
現実的に言えば、そんな真っ黒な逆光にならない。そんな逆光の中で人間の眼だけが見えるはずがない。

そういう嘘が平気でつけちゃう。そういう美しさを作ることができるんだよね。

宮崎駿が『風立ちぬ』で、昔の日本は美しかったと。
田園風景とかそういうものの中で、宮崎駿の記憶の中にだけあるものを言ってる。

それもやっぱり、写真じゃダメなんだよね。
頭の中にある風景というのをやらなきゃいけない。

それのサンプルみたいなやつを持ってきたんだけども、『COLLIER'S』という雑誌。1953年のバージョンのやつで、これ、表紙が写真なんだよね。

『COLLIER'S』という雑誌では珍しく、写真表紙。ふだんはイラストなんだよ。『COLLIER'S』で絶対に一番、金がかかっている巻末の広告ページはイラストなんだよね。

中を見ても、だいたい高級なブランドの広告とかって、全て写真よりはイラストが中心になってるんだよね。

『COLLIER'S』にあるのは1950年代の宇宙開発。
こういう宇宙開発のイラストとかを見たくて買ったんだけど。
これも裏表紙を見てみると、イラストなんだよね。

1950年代からアメリカでは、写真よりイラストの方が上なんだよ。
そっくりだったら、写真でやればいいかというとそんなもんではない。

ノーマン・ロックウェルというイラストレーターがいるよね。
アメリカのイラストレーター。
ノーマン・ロックウェルは、必ずイラストを描く前に同じような配置でモデルを座らせて写真を撮ってた。

ほとんど同じで、微妙に違う部分はたとえば表情とか、背景を描き足したりとか。ここまでの構図が取れるのだったら、写真でも良い気がするけど。

写真だと漫然としちゃうんだけども、イラストの方を見るとノーマン・ロックウェルの描きたいものがわかる。

たとえばこのイラストは、警官に憧れている男の子と、その相手をするでぶっちょの警官。それを見ているソーダファーム店のおじさんという人間関係が分かる。

他にもBarberという自分がモデルで入っているやつ。
奥の方にある部屋の中だけが明るくて、その中でイラストを描いている自分。
これも写真を撮ってからイラストにすると、光の加減とか自分の思い通りに構成できるわけだ。

つまり、絵というのは写真を超えるということなんだよね。
なぜ歴代『スター・ウォーズ』のポスターがずっとイラストなのか。
たぶんアメリカだけじゃなくて、ヨーロッパ全般にいえるのかもわからないのだけども。写真で撮ったそのものよりも、それをイラスト化してよりデフォルメした美しさ。
デフォルメして余計なものを省略したものの方が、アートに近いという考え方があるからだと思うんだけども。

絵は写真を超えるという思想って、ニ次元アニメの時代が再び来るような気がするんだよね。

倉本聰くらいの力があっても、富良野の大自然を描く、その中で人間関係を描く時に、「アニメーションの人間の演技なんて」と思ってたと思うんだよ。

『君の名は。』がそんなに倉本聰に力を与えたというのは、これだったら俺でも脚本描いて『北の国から』をもう一回作れるんだなって思えたということ。

すごい励みになるね。
ニ次元アニメの時代は、三次元で駆逐されたように見えた。

世界的な大きい流れで見たら、ピクサーとかに負けたように見えたんだけど、そうじゃないかも。
そういう風に思えたんだよ。
 
 
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otakingex at 08:00コメント│ この記事をクリップ!

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