11月20日(日) ニコ生 岡田斗司夫ゼミ のハイライトです。
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『この世界の片隅に』は、主人公、すずさんを
実在の人物だと観客に信じ込ませるために、
3つのポイントをたててます。
ひとつめのポイントはキャラクターを信じさせるための、
綿密な取材と背景描写。
ふたつめのポイントはショートレンジの仮現現象による、
目の残像というのを応用した、新しい作画の領域。
みっつめが声優の、のん。
もと能年玲奈だよね。
この、のんの演技。誰が見てもむちゃくちゃ褒めるんだよ。
僕もね、なんでかと思ってたんだけど。
すずって主人公は絵で見ると幼そうに見えるんだけど、
19歳なんだよね。
19歳で嫁入りして、20歳くらいまでの話なんだけど。
愚痴も言わずに、義理のお姉さんのいじめにも耐えて、
どうしてもいい子に見えちゃうんだ。
文句言わずに現実逃避する、弱い人間として登場してるんだ。
お義姉さんとかにも逆らわないのは、この子が弱いからだ、
というのは、作画じゃなくて演技力なんだよ。声優の。
ストーリー進行につれて、のんの内面が、
のんの演技が、どんどん変わっていく。
それはすずの内面が溢れ出したように、ちゃんと見えるんだ。
それはのんの演技力なんだよ。
作画もアニメーションで見せるのが目的でなくて、
監督のやろうとしてることは、すずがこの世にいる、いた、ということを信じさせること。
だから、のんの演技もこれのサポートに徹しているし、
作画ものんの演技の、サポートに回ってるんだよね。
だからほんとこの映画っていうのは、
のんに、声優としてすごくいい演技をさせるために、
サポートがあるように見える。
仮現運動を含めたアニメーションが、
演技をサポートしてるように見えてしまうくらいなんだ。
作画中心でもなくて、
声優中心でもなくて、
すずを実在させるということだけを、中心に置いたたったひとつの目的で、
すべてのテクニックと演出が集中してる。
①キャラクターを信じさせるための、綿密な取材と背景描写。
②ショートレンジの仮現現象による、目の残像というのを応用した、新しい作画の領域。
③声優の、のん。
このみっつで、見た人はみんなあの世界を信じちゃうし、
キャラクターの実在を信じちゃう。
その上でのお話だから、みんなものすごい感動して、
その感動が言葉にならない。
実際にあったことの現実を、どかーんと何年分か、
心の中に叩き込まれたような感じ。
今コメントに
宮崎駿「くそう~!!」
ってあったんだけど、そのとおりだよ。ほんとに。
高畑勲の『思い出ぽろぽろ』とか
宮崎駿の『魔女の宅急便』へのアンサーになってる。
これから見る人へのアドバイスなんだけど、
泣くな、なんです。
泣けますか?って質問に対して、
泣けるけど、絶対に泣かない方がいい。
なんでかっていうと、人間って泣いた瞬間に感性が閉じちゃうし、
理性が働かなくなっちゃうんだ。
泣いた瞬間に
「泣く映画だ」と思っちゃう。
で泣くところを探しちゃう。
一度泣き出すと、理性が働かなくなっちゃう。
この映画は理性と感性を、全開にしたほうが絶対いいんだ。
口で言えないほど、泣くこともできないほど、
すさまじい感動が泣かずに踏ん張ってたら、
最後に「うおおお!」と来るから。
なので安易に泣いて、泣ける映画にしないほうがいいと思うよ。
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