岡田斗司夫ゼミ 5月8日号より。
秀吉が真田信繁に対して言うの。
「徳川家康が真田を滅ぼすけど、それを真田に連絡しちゃいけないよ」って。
主人公の信繁はパニックになって、そこらじゅう走り回る。
そこに出てくるのが、茶々なんだよね。
*+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+
真田丸って作品は、歴史的・通俗的な解釈と違いや、
マニアックな目線からばかり捕えられてる。
だけど三谷幸喜のシナリオは、
コメディーの中に怖い部分があるんだ。
*+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。:+* ゚ *+:。.。:+* ゚ ゜゚ *+:。.。.。:+* ゚ ゜゚ *+
第16話『表裏』の解説をするね。
これは「ひょうり」でいいのかな?
茶々っていうのは秀吉の側室。
秀吉がメチャクチャ可愛がってるんだよ。
可愛がっているあまり、
茶々と目線が合ったり、イチャイチャしてる側近がいたら、バンバン殺すんだ。
その事に関して、茶々が秀吉に聞くんだよ。
「あの側近が死んだってウワサを聞いたけど、本当?」って。
みんなは秀吉が殺してるのを知ってるから、凍りつく。
秀吉は「あぁ、死んだらしいなぁ」っていう。
ものすごい怖い冷たい空間が流れるんだよね。
それを茶々は、「あ、そうなんだ。じゃあもう会えないね。」って、サバサバしてる。
信繁は女中頭に「どうして茶々様は、あんなに気に入っていた側近が殺されても平気なんですか?」って聞く。
そしたら女中頭は「茶々様は悲しむのをやめたんですよ」って答える。
信繁は、まったく意味が分かんないんだよね。
でも見てる人間に歴史知識があれば、分かるんだ。
茶々がひどい目にあわされて、数奇な運命の末に秀吉の側室になったというのがね。
竹内結子が茶々役をもらった時に、
「茶々は秀吉に親や家族を殺された。だから秀吉には恨みのこもった視線をするんだろうな。」と思って、役作りをしてた。
そしたら三谷幸喜から、「茶々は明るく楽しそうにしてくだい」って言われたらしい。
竹内結子は、理由がまったく理解できない。
「でも言われたんだから。」
そう思って、一生懸命 明るくバカに見える演技をやっていた。
それが“悲しむのをやめた”って事だったんだ。
権力者の近くにいるって事は、心のどこかを殺す事なんだ。
そういうのは、僕ら視聴者には伝わるんだよね。
茶々は、秀吉から南蛮のキレイな帯をもらって、嬉しそうに信繁に見せる。
信繁は、それが分からない。
「なんで茶々様は、そんなにひどい目に会いながら楽しそうに出来るんだ?」と。
オレは、それをドラマで見ててゾッとしたね。
つまり、茶々っていうのは未来の真田信繁なんだ。
真田家が滅ぼされようとしている。
しかし真田家の次男の自分は、秀吉にすごい可愛がられているわけだよ。
権力者に家族が殺されるかも分からない。
しかし秀吉に可愛がられる事は、すごく楽しい。
でも、これを受け入れてしまったら、茶々のように悲しむのをやめる人間にならなきゃいけない。
そういう葛藤があるからこそ、茶々のエピソードと、真田家を滅ぼそうとする秀吉のエピソードが、同時に進行するんだよね。
本当に伝わりにくい。
伝わらなくても、話として面白い。
三谷幸喜がやろうとしてるのは“正しい歴史”ではない。
そこにあったかもしれない人間のドラマ。
それを1年間、作ろうとしてる。
だから、すごいドキドキするんだよね。(25