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2015年08月18日

【ニコ生ゼミ映画スペシャル 前編】実写版『進撃の巨人』をメッタ斬り!

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実写版『進撃の巨人』は
『ゴジラファイナル』??? 


この記事のポイント

  1. いよいよ公開・実写版『進撃の巨人』
  2. シルク・ドゥ・ソレイユの何倍も高度なもの「立体機動」をどう魅せるか
  3. 『進撃の巨人』は『ゴジラファイナル』?
  4. 接待する相手を間違えるな!

オタキンング
┃いよいよ公開・実写版『進撃の巨人』

 実写版『進撃の巨人』ですね。ついに公開されました。今日はどういう風に話そうかと思ったんですけど。

 点数で言うとね、5段階で言うと2点かな。最初は1かなと思ってたんですけど、まあ2くらいじゃないかなと。で、たぶんこの5段階で2っていうのはあまり悪い見方でない。

 今コメントで「見たけどけっこうひどかった」って流れたんですけど、そうですよね。色んな映画評論家の人がすごく気を使って書いてるんですよ。たぶん映画批評家って全部樋口真嗣監督の友達関係知り合い関係に入ってるんですよね。後編に期待しようとか、みんなちょっと引っかかってるみたいな感じがしてると思いました。

 ネットニュース『超映画批評』だったかな、100点満点中40点って書かれてて、キレた監督が「誰だこいつを試写会に呼んだのは!」っていうのを友達だけのツイッターに流したつもりが全体公開になってて炎上してたり、特撮監督やった西村さんが「みんなそんなハリウッド映画みたいな予算とかスケジュールが十分なもの見たかったら、ハリウッド映画見にいけばいいじゃないかよ!」っていう風に書いてて、それもまた色んな所で炎上しててww
 たぶん同時期に公開されている『ジュラシックワールド』とか、そういう映画とどうしても比べられるいらいらがあるんでしょうけど。

 僕はかなり低評価であります。

 もうね、ストーリーは行き当たりばったり。どこにハサミ入れてもいいくらい前後関係が繋がってない。たぶんね、もっと精密な構成だったのがダメになっちゃった感じがする。初めからはちゃめちゃな脚本だったわけじゃなくて、すごい複雑な脚本を上げていったところ現場でそんなの撮れないよってなって、ぶつぶつ切れたから繋がらなくなってしまった気がする。でないとあんなにいきあたりばったりにならない。

 あとね,キャラが書き分けられてない。おまけにほとんどの人間の顔が薄汚れてて同じ制服着てるじゃん。誰が誰だかよくわからない。
 肝心の巨人は白塗り。裸芸人みたいな感じで、白塗りの大きいのが出てくる。原作の持ってるプロポーションのへんな感じっていうのを出せてない。着ぐるみ着せたり、特殊メイクしたりしてるんだけど、絵と実写ってちがうじゃん。絵はほんのちょっと人間でなくなったら人間でなくなっちゃうんだよね。 ところが実写っていうのは、人間をちょっとくらい変えても人間に見えてしまう。人を人として見る認識能力の恐ろしさ。だから巨人がわさわさ出てくるシーンっていうのは、ウソ感が激しかった。『仮面の忍者赤影』的なグリーンバックでなくスクリーンプロセスっぽい。ごめん、古い専門用語使って。
 白塗りの巨人と手前にいる人物との色味はばっちりあってる。色味はばっちり合ってるからリアリティとしては巨人が大きく見えないんだよね。巨人が人間サイズに見えて、人間サイズのものを大きく見せてる感じがしてしまった。

 特撮はね、予算やスケジュールもないと言ってる監督にはほんとに申し訳ないんだけど、へたくそだったよ。樋口真嗣のほうが100倍うまい。
冒頭にね、ものすごいでっかい壁が見えるんだよね。世界を閉じ込めてる壁が見えるんだけど、煽りで見るときのその壁が100%ミニチュアなの。もうそのミニチュア感があまりに激しくてちょっと悲しくなっちゃった。もっと予算の少ない『ガメラ空中決戦』時の樋口特撮の方がうまかった。そこらへん不思議だよね。

┃シルク・ドゥ・ソレイユの何倍も高度なもの「立体機動」をどう魅せるか

 あとワイヤーワークね。もう予告編見てる時からみんな不安になってたよね。ぼくらはもう『スパイダーマン』を経験してるわけじゃん。で立体機動見せたらどうなるのかって言ったら、もうはなっから肉体訓練をやってないであろうモデルさんのヒロインと、あとイケメン俳優のお兄ちゃんが主役でワイヤーワークで戦ってるシーンっていうだけでさ、そんな期待できるはずがない。

 言ってしまえばシルク・ドゥ・ソレイユの何倍も高度なものをいかに特撮で見せるのか。おまけに日本映画特有の縛りがある。たとえば立体機動で飛んだ俳優さんが巨人を倒した後にやりと笑うとか、そういうカットをどうしても見せなきゃいけない。そうなるとどうしても吊ってる、飛んでる最中の人間を見せなきゃいけない。
 アニメでは巨人と人間と同じセル画で描かれてるわけだけど、それが複雑に動いてたら「目が何を見ているのかわからない」という錯覚を起こすんだ。それがアニメの版の立体機動のすごさを出している。ところが特撮で立体機動をやってしまうと、目の照準が合っちゃうんだよね。実写の場合は焦点距離が複雑なものだから、ピントが手前から奥まで色々あるもんだから、見ている人間が何を見てるのか早い目に判断ついちゃう。そうなると落ち着いて「吊られている」人間が見えちゃう。

 結果紐で吊られて「わーー」って飛んでるヒロインのお姉さんとか「ひゃーー」て感じで飛んでる主人公の兄ちゃんらの「吊られてる感」がすごいわかってしまって、ああこれなんかダメだと思った。

考える2



















┃実写『進撃の巨人』はゴジラファイナル???

 で、こんな風なダメ出しの仕方したら、監督の言うようにハリウッドみたいに撮るしかねえのかよ。じゃあハリウッドみたいな技術とか予算出せよ」って話になっちゃうんだけど、せっかく原作者の諌山さんが「原作と変えていいです」って言ったわけだよね。原作を見た人はわかると思うんだけど、思い切り変えてるんだよ。ほんとに思い切り変えてるんだよ。思い切り変えたんだから、立体機動をやめたらよかったんだ。なんで立体機動をやらなきゃいけないのか。

 これはね、一番最初に見せ場を立体機動に決めた大失敗だと思うな。だって原作は馬車の世界だよ。馬の世界、機械なんてほとんど出てこない世界だよ。でも映画はディーゼルエンジンあるし、自動車走ってるしさ、冒頭から築地にありそうなタレットカーが走ってて、ちょっと待てちょっと待てとw

 だったら巨人の後ろを爆撃するとかさ、ナイフに爆薬付けて首の下にグサッと刺して逃げるとか、対戦車銃で狙うとか。そんなものが今回の世界ではありそうなものなのに、技術レベルがばらばらなのね。たぶんこの技術レベルのばらばらさっていうのは後編部分の謎解きに繋がってると思う。
 立体機動ってアニメで表現するにはあんなにむいてるものはないんだ。スタイリッシュで、背景動画っていうアニメーション特有の技法を山ほど使って見てる人間の目を幻惑できるし、あとエレメント、人物とか背景とか飛んでくものの要素を重ねれば重ねるほど絵としての深みを増すんだけど、実写の映像って重ねれば重ねるほど嘘っぽい絵になっていくんだよね。

 立体機動をやめて地上戦にすれば、もうほんとにいろんな人が書いてる通り、平成の『サンダ対ガイラ』っていうのかな、大怪獣映画として復活出来たと思うんだけど。そこに下手に空中機動いれちゃったもんだから、『ゴジラファイナル』に戻ったちゃった。

 見たことあるかな?いわゆるゴジラシリーズの、ハリウッドへ行く前のゴジラなんだけど、カンフーでエビラとか倒すっていうすごい映画なんだよね。ゴジラに対抗するために日本政府は超能力者によるチームを作ったという設定で、ゴジラ映画なのにしょっぱなからカンフーアクションやってる。これどうすんのかなって思ったら、エビラが香港に現れて、エビラをばっかんばっかん叩いたりして、なんだかんだいって勝っちゃうんだよね。ケイン・コスギがエビラにどつき勝ったみたいな印象の映画なんだけど。これに戻っちゃうことになるから、ワイヤーワークはやめたほうがよかったな、と思う。


┃接待する相手を間違えるな!

最後は役者ね。ハリウッド映画の役者さんてどれくらい役に重きを置かれているのか、ストリーポイントに影響があるのかを重視する。ハリソン・フォードとか自分がゲスト出演するときでもよく難癖をつけたと言うよね。

 日本の役者さんは役者から映画俳優になった人よりモデル上がりが多いんだよね。だからどうやっても「どう見えるか」というのをシナリオから見ちゃうんだよね。シナリオの中に絵的な見せ場があるのかっていうのを優先しちゃう。

 たとえばエレンがジャンと喧嘩するシーンでも急に逆光にって技を決めるシーンがあったり、あとシキシマさんっていう原作で言えばリヴァイ兵長にあたる人が、かっこよく剣を出してシャキーンってしまうところがなぜか逆光だったり。何かっていうと逆光で俳優さんのカッコいいところを見せようとして、もう接待してる感が半端ないのね。なんで俺たち観客を接待してくれないのか、なんで俳優さんとかスポンサー筋をいい気持ちにさせるんだよ、っていうイライラがけっこうあった。センス古い見せ方だったよ。《後編へ続く》



ライター / 構成:歴史のカオリ
挿絵 / 起こしのヤスタカ 




otakingex at 07:00コメント│ この記事をクリップ!
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