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2015年02月21日

【2/21大阪 宮脇社長対談記念:海洋堂特集】『食玩バブル』

王立科学博物館

 何を隠そう、僕も食玩バブルに乗った一人だ。
 その海洋堂に声をかけ、食玩シリーズの総監督を始めたのだ。
 最初に手がけたのは、『王立科学博物館』と銘打ったアポロ宇宙船や月着陸船を中心にした宇宙開発テーマの食玩。
 もともと世界最高レベルの海洋堂原型に、こだわりのリテークをガンガンいれて凝りまくった。
 これではとても採算が取れない、というわがまま放題な注文にも、バブルで気が大きくなっていた発売元タカラ(当時:現在のタカラトミー)も海洋堂も、「ま、金ならあるし」と鷹揚に応じてくれた。
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週刊アスキー連載『ま、金ならあるし』 食玩バベルより』2008年9月~
 
世界最大のガレージキットイベント"ワンダーフェスティバル"を始めた男、ガイナックス初代社長 岡田斗司夫と、"ワンダーフェスティバル"を受け継ぎ、育てた男"海洋堂 宮脇修一社長。
"マーケティングは行わない" "5年後のことは考えない"等、型破りな経営論で会社を引っ張りながら年商20億越え。日本オタク界の”センム”宮脇修一との対談が行われます。

岡田斗司夫×宮脇修一(海洋堂 社長)対談
テーマ   3Dプリンタが拡げるモノ作りの未来と問題点
開催日時 2月21日(土) 開場16:30 開演17:00
開催場所 大阪産業創造館  地下鉄:堺筋本町駅 徒歩分
お申込   こちら
 
これを記念して、 海洋堂の宮脇社長との思い出をつづったコラムを再録します。
『ま、金ならあるし:食玩バブル』。

1999年9月に登場したフルタのチョコエッグには、チョコの中に日本の動物シリーズが入っていて、大ヒットしました。
食玩の企画&原型は、ガレージキットメーカー・海洋堂の松村しのぶ氏。

日本中を巻き込んだそんなブームもすっかり下火になった2008年にこのコラムは書かれています。
海洋堂や岡田斗司夫が、踊らせたり、踊らされたりする奮闘記を、苦しがりつつも、楽しげにつづるコラムをお楽しみください。

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 数年前、後に業界で「食玩バブル」と呼ばれる時代があった。
 食玩とは、ちょっとしたお菓子に、フィギュアのおまけをつけた商品のことだ。
 フルタ製菓のチョコエッグ・シリーズなど、ご記憶の方も多いと思う。

 百五十円~三百円という気軽に買える値段、大々的なコンビニ販売、大人も驚かせる精密さ。
 そして何より、どのフィギュアが入っているか見えないギャンブルとしての楽しさ。

 ニュースでも大々的に取り上げられる一大ブームとなり、コンビニやスーパーの一番目立つ棚がまるまる食玩に占領されたあの頃、チョコエッグシリーズは累計数千万個の怪物商品にまで成長した。

 作る側もノリノリで、とにかくブームの最中は面白そうな商品をどんどん出しまくろう、と張り切っていた。
 原型製作で有名になった海洋堂は年に四回、ボーナスを支給したというからハンパじゃない。

 何を隠そう、僕も食玩バブルに乗った一人だ。
 その海洋堂に声をかけ、食玩シリーズの総監督を始めたのだ。

 最初に手がけたのは、『王立科学博物館』と銘打ったアポロ宇宙船や月着陸船を中心にした宇宙開発テーマの食玩。
 もともと世界最高レベルの海洋堂原型に、こだわりのリテークをガンガンいれて凝りまくった。
 これではとても採算が取れない、というわがまま放題な注文にも、バブルで気が大きくなっていた発売元タカラ(当時:現在のタカラトミー)も海洋堂も、「ま、金ならあるし」と鷹揚に応じてくれた。

 このプロジェクトは金儲けではなく、文化事業と割り切ってくれ、と海洋堂の専務がタカラ社長に直談判してくれたおかげだ。
 「究極の食玩を作ろう」という合言葉の元に、とんでもない企画が動き出した。

 僕はもともと「物書き」である。
 それが総監督をつとめる企画なら、なにより食玩といえど「読み物」であるべきだ。
 「見るフィギュア」ではなく「読むフィギュア」へ。
 フィギュアには「読み取れる情報量」を与え、さらに消費者には「読み取るリテラシー」を提供する。つまりオモチャであると同時に教材であり、感動を与える「作品」であることを目標とした。

 そのため、なによりもこだわったのが解説書だ。
 普通の食玩なら、小さい紙切れにフィギュアの組み立て図がモノクロで載ってるだけ。
 シリーズのカラー写真があれば上等、という世界だ。

 しかし「王立~」のそれは全16ページの折り畳みリーフレットになった。
 コラムや解説、図解、描き下ろしのマンガまで発注する。
 制作費に印刷費とうなぎのぼりだが、なんせ「究極の食玩」なんだからしかたあるまい?

 肝心のフィギュアだってすごかった。
 シリーズの中には「クリスタルガラスに七宝焼した透明な地球儀」とか「ガラス内にレーザーで銀河系を封印彫刻」という商品まであった。
 どう考えてもひとつ数千円はかかるシロモノだ。

「経費がかかる?ま、金ならあるし」と、誰もが実に太っ腹。
 製作発表を超一流ホテルでやったぐらいだから、その狂いっぷりはいま考えると我が事ながら呆れてしまう。

 シリーズは無事発売され、食玩としても記録的な販売を成功させた。
 評価も高く、米国スミソニアン航空宇宙博物館から「発売させてくれ」というオファーがあったくらいだ。

 しかし、まったく儲からない。むしろ売れれば売れるほど赤字。だって売値より原価が高いんだから当たり前だ。
 僕は焦った。こうなればもっとすごい企画で取り返すしかない!
 起死回生を狙う人は、必ずさらに大きいドツボにはまる。僕もその例に漏れず、さらに巨大な墓穴を掘ってしまった。
 「究極の食玩」第二シリーズ、悪夢の『ドリームカー』がスタートしたのだ。

週刊アスキー連載『ま、金ならあるし』 食玩バベルより』2008年9月~ 

 




otakingex at 07:00コメント│ この記事をクリップ!
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