今回は「悩みの聞き役になりたくない50歳の女性」からの相談です。
50歳の女性です。どこに行っても誰に出会っても、何となく悩みを聞いてしまいます。
こちらから聞きだそうとするわけでもなく、何気ないお天気の話や雑談からいつの間にかそうなってしまうのです。
気分転換に出かけた歌のサークルでは「私は昔から虐待を受けていました」。新しく始めようと思った語学の講座では「子供がいじめにあっていて…」。楽しむために行ったはずの動物園では、飼育員さんから「腰が痛くてたまらない。よく考えてみたら体力的なことだけではなくて…」など、必ずそういう話になり、最近では誰かと知り合ってもあまり親しくならないようにして自分を守っています。
小さい頃から常に聞き役。秘密を打ち明けられ、相談事を聞き、その相手がいざ解決できたり気持ちがすっきりしたりすれば、その人は私から離れていきます。嫌な思い出とともに私を切り離したいのでしょう。
そんなわけで長続きした友情も、友達らしい友達もいません。長くても数年で出会った人は離れ、私にはやるせない思いが残るだけです。
職業としても子供や親の話を聞いて支える立場を選んでいます。結局自分がひとにしてあげられることと言ったらそれしかないからです。はじめは天職かと思いましたが、いまでは毎日が苦痛でなりません。
こんな自分を変えるいい方法はないでしょうか。
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1.見知らぬ人からも、いつのまにか悩みを引き出してしまう。
それは人によってはうらやむしかできない、まるで魔法のような能力です。でも今のあなたにとっては、自分を苦しめる「呪い」になっちゃったんですね。
天職なのに、それが同時に呪い。人を助けているのに、同時に人を遠ざけてしまう。哀しいのにどこか可笑しい、不思議な話ですよね・・・。
2.常連のいないラーメン屋は潰れます。
客商売はリピーターが命。一度、来てくれたお客さんがもう来ない場合、それはあなたの提供する「商品」が粗悪だからです。リピーターのいないお店は潰れて当然。あなたも転職を考えるべきでしょう。
以上、2通りの答を用意してみました。
2番目の答は論理的で明快。これからの方向性も助言しています。でも、イヤな気持ちになるでしょう?
こんなことすでに自分でも考えたことがあるし、こんな正論を押しつけられても、なんの解決にもならない。そうじゃないですか?
1番目の答は、実用的な要素ゼロ。「わかるよ、苦しいね」って言ってるだけ。でも、これを聞いて怒る人はまずいません。 「苦しい気持ちをわかってくれた」と本音をさらけ出してくれます。
私たちの仕事は「相手の話を聞くこと」です。解決策の提示は「聞くためのいち手段」にすぎません。解決法は「相手が勝手に思いつく」のが最善であり、私たちはその助産婦であるべきです。
あなたはたぶん、優秀すぎる。だから解決法を思いついちゃう。でもだいたいの場合、正しい解決法は実現が難しい。相談した人は「解決できない自分」に劣等感や罪悪感を感じてしまう。あなたに会うと、その罪悪感を思い出す。だから避けるようになる。
ポイントは「問題を解決する」じゃない。 「相手の苦しみを軽減する」です。悩みの渦中の人は、その重さで押しつぶされそうです。その重みを少しだけ軽くする。
悩みが解決しなくても、苦しみが軽くなれば、人は自分で実行できそうな解決策を思いつきます。病気を薬で治すよりも、まず体力を上げて免疫力を高める。相談を解決するのは、私たちじゃありません。相談者自身なんです。
最後に悩み相談のコツを教えます。相談者に共感し、同情した上で「いっしょに笑う」こと。いっしょに笑えれば、悩みは軽くなります。 その時の笑顔こそ、私たちへの「正しい報酬」です。
<<前回、「娘の容姿に悩む母親」はこちら
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