FREEexなう。

2014年11月02日

【映画批評】ウォーリー(WALL-E)はハリウッド版『風の谷のナウシカ』

ウォーリー(WALL-E)と風の谷のナウシカが似ている件

この記事のポイント
  1. ウォーリーの基本的な設定
  2. 風の谷のナウシカの基本的な設定
  3. ウォーリーがナウシカ以上に売れた理由

この動画の全長版はクラウドシティ岡田斗司夫のひとりマンガ夜話Vol2「ウォーリーとナウシカと自炊代行業者とニューヨーク旅行の意外な共通点」【第二部】で絶賛公開中


 今日はマンガ夜話の延長でアニメの話をしておりますけども。ちょっと『ウォーリー(WALL-E)』の話をしようと思います。

 きっかけは単純で、ニューヨークの“トイザらス”ですごく出来のいいウォーリーのトーキングフィギュアを見つけたんだ。それで、ウォーリーを久しぶりに見たくなって、ブルーレイディスクを取り出したんだけど、そこで「あれ?」って思ったことがあって。

Still004

┃ウォーリーの基本的な設定

 映画『ウォーリー』の世界で、地球は“ゴミの山”になってるんだよね。ウォーリーっていうのはそこのゴミ処理ロボットで、集めてきたゴミをギューッとプレスで圧縮して積み上げる仕事をしている。そんなことを何百年も続けているロボットなんだ。

 かつてはこのロボットがいたるところにいたんだよ。なぜかというと、地球上がゴミで溢れたからだよね。そして、今やこの地球に人間は一人もいない。人類が絶滅した後にゴミの山とロボットだけが残っている。この物語の主人公のウォーリーは、どうやらその最後の1台らしくって。だから、町中には彼と同じ型の壊れたロボットの残骸が無数に転がっている。

 で、人間がいなくなってから何百年も経ってるから、風が吹く度にものすごい量のゴミがグワッと舞い上がって。その中を、来る日も来る日も、暑い日差しの中を一人っきりのウォーリーがゴミを運んで行く。そういうものすごく切ない世界なんだよ。もう、カッコいいじゃん。

 そのウォーリーが、ある日“植物”を見つけるんだよね。冷蔵庫のスクラップをパカっと開けたら、そこには土の溜まった靴が入っていて、そこから植物の目が出ているのを見つけたんだ。「珍しいもん見っけた!」ってことで、彼はそれを自分の宝箱の中に入れるんだけど。

 そこに、ウォーリーとは明らかに世代が違う、宇宙人が作ったような未来的な白いタマゴ型のロボットがやってきて。そいつが、ウォーリが拾った植物を見てパニックになる。このタマゴ型ロボットは“イヴ”っていうんだけど、こいつが信号を発すると、巨大な宇宙船が雲を突き抜けてガーッと降りてくるんだ。

 イヴは植物を持ったままその宇宙船に入って行く。ウォーリーも彼を追って一緒に宇宙船に乗り込むんだけど。乗り込んだ先は、ハレー彗星のように地球に近づいては離れを繰り返す軌道をとる巨大宇宙船で、この船の中に生き残った人類が全部乗ってたんだ。

 なんでこんなことになったのかというと、大昔に「ゴミの山になり果てた地球にはもう人は住めないから他所の星を探して“移民”しよう!」という話になっていたみたいで、この宇宙船はつまり移民船だったんだ。ところが、他の星にいこうと思ってみたものの、そんな星は見つからない。おまけに、外の世界に出ていくのが怖くなっちゃったみたいなんだよね。

 そこで、数世代前の船長が、「イヴのような探査ロボットを時々おろして、地球にもう一度植物が生えたのを確認したら、宇宙船を降りて元の土地に戻ることにする」と決めたみたいなんだ。これは代々の船長のみが知っている秘密で、他の人達は「いつか楽園のような新天地で暮らせる日が来るに違いない」と思いながら、宇宙船の中でラクチンな生活を続けてる。

 ――ここまでが“設定”だよ? 映画全体のストーリーじゃなくて、設定なんだよ。本当に面白いから、『ウォーリー』は絶対見たほうがいいよ。

Still005

┃ナウシカの基本的な設定

 で、「植物が生えているのを見つけたので、これから人類が地球に戻ってくるんじゃないか?」っていう話なんだけども。

 これさ、俺、頭の中でそこまでの設定を思い出して気がついたんだけど、『風の谷のナウシカ』だよね。ウォーリーって“ナウシカの逆”なんだよ。

 風の谷のナウシカの設定ってさ。まず、人類文明が滅びて、汚染された大地に巨大な“腐海”という密林地帯が生まれたと。その腐海という場所は人間たちに忌み嫌われていて誰も住まなくなっている。その中に、ナウシカという勇気ある少女が一人入っていって、腐海のことをひたすら研究して。最後のラストシーンで、腐海の中で“クコの実”というナウシカが持ち込んだ種から植物が生え出した。これが、この世界の救済のヒントになっているわけだよね。

 腐海というのは、立ち入る人間をことごとく殺してしまう毒の森なんだけど。なんでそんな毒を発するかというと“自浄作用”なんだよね。森の中心部に清浄な場所を作るために、毒素を周囲に押し出している。真ん中にきれいな場所が出来たら、役目を終えた腐海は崩れ落ちていく。つまり、腐海の中心部では地球の再生が始まっている。

 だけど、人間たちはそんなこと知らなくて。トルメキアとか土鬼、ペジテというような国家たちが、人間が住める土地を奪い合って戦ってる。これが、風の谷のナウシカの基本の設定なんだ。

 ウォーリーの「汚れた地球を離れて人間が宇宙に行った話」と、ナウシカの「腐海を恐れてる人間たちの一方で、腐海の底には植物が生え始めている、希望の光が見えているという話」。実はこの二つの話は、同じ設定のものを別の角度から見たものなんだ。

Still003

┃ウォーリーが世界中で受け入れられたワケ

 じゃあ、なぜナウシカに比べてウォーリーの方がメジャーヒットしたのかというと、それは至極簡単で。ナウシカは“想像力が豊か過ぎる”んだ。

 ウォーリーの世界に出てくる滅びた文明って、僕らの目から見てもすぐに理解できるんだよ。「ああ、僕らの世界でもゴミ問題っていうのがあるもんな」、「夢の島とかはゴミだらけだし、東南アジアにもそういう場所ってあるもんな」、「ゴミで埋もれてしまうって人もいるよな」と。

 あるいは、その中で一人ぼっちで働いているロボットの境遇っていうのもすぐにわかるよね。ウォーリーのごみ処理の方法も、アメリカのスクラップ工場で車とかを潰すのと全く同じ方法だし。つまり、ウォーリーの世界は、全てが現代人である僕らが直感的に理解できるパーツで組んであるんだよ。

 ところが、宮﨑駿はイメージ力がすご過ぎて。「腐海に沈んだ人類文明」なんていうけど、その滅びた人類文明の時点で、もう、わけがわかんないんだよ。巨神兵が滅ぼしたという世界も、僕らからしたら“ラピュタのような見たこともない変な文明”なんだよ。

Still002

 お? スタッフが「そろそろ限定放送に行け!」と言ってるよ。しょうがないね。
 じゃあ、『ウォーリー』と『風の谷のナウシカ』の類似点の話は限定放送でやるとするか。
 ごめんな。


この動画の全長版はクラウドシティ岡田斗司夫のひとりマンガ夜話Vol2「ウォーリーとナウシカと自炊代行業者とニューヨーク旅行の意外な共通点」【第二部】で絶賛公開中

ライター:矢村秋歩(FREEex)

ウォーリー [Blu-ray]
ディズニー
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2010-11-03




来週は11月2日(日)夜8時から「ニコ生岡田斗司夫ゼミ11月号」タイムシフト予約よろしく!
岡田斗司夫ブロマガチャンネルをお気に入り登録してニコニコからの最新動画のおしらせを見逃すな!

ex206




otakingex at 12:00コメント│ この記事をクリップ!

コメント一覧(新規コメント投稿は、上のFacebookソーシャルプラグインをお使いください)