録画をした君は、この解説を頭に入れてもう一度みてみよう!
- 手塚賞のひみつ
- 描きたかったアニメ作画のひみつ
- ファーピクのひみつ・前編
- ガイナ組の志のひみつ
ドラマ24『アオイホノオ』(テレビ東京系)毎週金曜日24時12分
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アオイホノオ最終回を岡田斗司夫と一緒に見よう!実況ニコ生やっちゃいます!タイムシフト予約よろしく!
放送局によっては、ネタばれ気味になっちゃうけどごめんね。配信でドラマ本編は流れないけど、文字じゃどうしても伝えられないことがあるんだよ。 -
・「岡田トシオの頭のおかしさに驚愕する庵野たち」
岡田の学生時代のニックネームは完全な放送禁止用語だったから、オープニングのナレーションでここまで言われても仕方ない。ただし、本人的には「君ら常識的なことしか考えてへんから、常識的なことも出来へんねん。常識以上のこと考えて、はじめて常識程度のことが出来る。頭のおかしいこと考えて、はじめてすごいモンが出来るねん」と考えていたことを付け加えておこう。
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・「15ページじゃなくて、31ページにしよう」
週刊少年ジャンプに限らず、売られている雑誌や本にはすべて法則がある。それは「8または16または32の倍数でページ数が決まる」ということだ。
雑誌には「4色カラー折り」「2色折り」「モノクロ折り」が混在している。折り、とは大判の紙を2回とか4回とか折った状態のこと。大判用紙を1回折れば、表裏で4ページ、2回折れば8ページ、3回で16ページになる。これを印刷業界では「折り」と呼ぶ。雑誌の目次を決めるときは、モノクロやカラーページの順番を決めるために「折り」で考えることになる。
モユルが最初に描いたマンガは15ページ。これに広告やお知らせの1ページを足せば16ページ折りになる。ホーリィが提案したのは、もっと大きな32ページ折り(広告1ページをマイナスして31ページ)をモユルに描かせようということ。 -
・諸星大二郎とか星野之宣
どちらも手塚賞を授賞した作家。
諸星は「誰の影響も受けてないような、上手いのかヘタなのかわからないけど、異常なまでの作家性と世界観」でマンガ界に衝撃を与えた。いわば水木しげるタイプの作家。
星野は「マンガなのかデザインイラストなのか見分けつかないほどの端正な画風と、複雑な設定」でマニアを唸らせた。いわば士郎正宗タイプの作家。
1974年に諸星、75年に星野がそれぞれ手塚賞を取ったので、しばらくは手塚賞は「あれぐらいすごい新人でないと取れない」と怖れられた。 -
・作画している赤井
実際にアニメを作画している人間は、このように「座って黙々と描く」場合は少ない。自分の描いている動きを脳内で確認するため、「作画しているキャラと同じ動き」をする。
つまりこのシーンの場合、赤井は「コップを持って、ニッコリ笑う」という動作を何度も自分で繰り返しながら、作画しているのだ。
隣で見ていると、実はかなり気持ち悪い(笑) -
・核シェルター
岡田邸の核シェルターは、実際には放射能には対応していない。放射能に対応する核シェルターには「1.衝撃と熱に耐える装甲」「2.電源用の発電機と燃料」「3.空気循環フィルターとポンプ」「4.備蓄の食料と飲用水」が必要。岡田邸のシェルターには2と3がなかった。これは岡田の父・博が「核戦争で一番怖いのは暴徒。ウチみたいに外から見ても金持ちまるだしの家は暴徒に襲われるのが一番怖い」と考えたため。
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・期限切れの保存食
ちなみに実際に備蓄されていた食品で、庵野と岡田が盗み食いしていたのは「ポッカ缶コーヒー」「ハーシーの業務用特大チョコ」「とよすハイサラダ」。
業務用チョコはタテ30センチ横60センチ厚み3センチぐらいあって、備蓄棚には木槌が常備されていて、それで叩かないと割れなかった。 -
・「君はほんま描くだけの人間やなぁ」
庵野は「アニメのみに打ち込む人間」だけど、「描くだけの人間」ではない。
アニメの上映会があると遠くても出かけるし、しょっちゅう作画をサボってビデオでアニメを観ていた。マンガも大量に読むし、SF小説だって読んでいた。 -
・「筆で描いて動かすっっ!」
TVアニメ「タイガーマスク」「カムイ外伝」や「佐武と市捕物控」などから影響を受けまくった焔モユルの「荒い画風でダイナミックに動かしまくりたい!」という狙いは、けっきょくこの時代のアニメ界では主流にならなかった。
僕が庵野たちと作ったアニメ会社・ガイナックスから独立したスタッフたちが2013年にアニメ「キルラキル」を作り、ようやっとモユルの目指したアニメは完成した。
もちろん原作者・島本先生は「キルラキル」に狂気。札幌まで打合せに行った岡田にいきなり第一話を見せる、という「おもてなし」をしてくれた。 -
・「アニメ用紙を使っていない!」「次からはその方法を真似させて貰うがな!」
このシーンのウラ話、先日のスタッフ座談会で赤井孝美本人が語っていた。
「島本君が僕の絵を覗きながら聞くんですよ。『そのやり方だったら、下の絵が透けて見えちゃうんじゃない?』って。たしかに透けるけど、それが”前の絵の残像が見えてる”ぽくなるから逆に効果的だ、って説明してあげたんですよ」
「そしたら島本君、次回のファーピク作品で真似してきて、なんと”止め”シーンでも下の絵が透けてるんです!止めシーンに残像あるわけないじゃないですか!あいつ、本当にアホでしょー!」
その場の福田監督も武田さんも山賀君も大爆笑。ああ、島本和彦ってなんて可愛くてバカなんだろう!! -
・にゃんにゃこタイガース
冒頭のネコの作画は「セリーグAクラスに上がろうとするけど、すぐにずり落ちてBクラスになるタイガース」という意味。当時のタイガースファンの挨拶は「今年のタイガースはひと味違うで!」だった。つまり「昨年は弱かったけど、今年は強いぞ」と毎年、言い続けるわけ。
春先は優勝を夢見て、夏前はAクラス残留を希望し、でも夏が終わる頃にはBクラスに落ちている。このタイガースの哀愁を描いているわけだ。
シンゴ 『帰ってきたウルトラマン』が撮られたのって、僕が生まれた1983年なんですよ。
岡田 円谷プロのやつな。
シンゴ ではなくて、DAICON版って言ったらいいんですか?
岡田 『DAICONFILM版の帰ってきたウルトラマン』な。あれも円谷プロから出てるから大丈夫。
┃帰ってきたウルトラマンは「おまけ」
シンゴ なんの因果かちょうど僕が生まれた年に撮られてて、ぼくも自主映画の人ではあるんですけど、当時のマネタイズの考え方ってどうだったのかなって。
岡田 あれはな。オープニングアニメというキラーコンテンツがあるからできたんだよ。
『帰ってきたウルトラマン』とか『愛國戦隊大日本』とか、あの当時の自主映画はすべて、スタジオジブリでいえば宮崎監督以外の映画なんだよ。ジブリブランドで宮崎監督映画があるから、あまり客が呼べない人の作品でも、「ジブリ映画です」と言うだけで、宮崎駿監督の3割か4割の客が入るんだよ。ブランドで合計してのマネタイズなんだよ。
DAICONFILMのいろんな作品もこれと同じで、DAICONⅢのオープニングアニメとかDAICONⅣのオープニングアニメの上映会をやれば、どこの地方でも必ず100人や200人集まるわけなんだけど、3分で客を返すわけにはいかないから色々作ったんだよ。
シンゴ そういうコンテンツだったんですか!
岡田 おう。あれは水増しなんだよ。当時の上映会の料金は700円だったからさ、3分のものに700円だと、やっぱり抵抗があるじゃん。DAICONFILMのオープニングアニメというカルピスの原液があって、それを20倍希釈して1時間のコンテンツにすればお客さんだって700円払ってくれるわけ。でも、実は値打ちがあるのはオープニングアニメの3分だけなんだよ。
では、「残りの50分何しましょうか?」となって、実写で庵野くんとか赤井くんが昔から撮りたかったようなものを水増ししてみたら、案外面白くてラッキーだったんだよな。
┃ビジネス?マネタイズ?しゃらくさい!
岡田 昔から怪獣映画撮りたいとか思ってたけどさ、それで金が取れると思うほど甘くないよ。オープニングアニメを作るときの金だって、上映会とかビデオの販売でペイできるとは思ってなかったんだよ。
シンゴ なるほど。
岡田 お前らみたいに、すぐ「マネタイズ!」とか「どういうふうにビジネス成立!」とか「PV稼げる!」とか言ってるやつらとは、志が違うんだよ! こっちは遊びでやってんだ! お前らみたいな半ちく商売でやってるんじゃねえよ!
シンゴ なんかすごくかっこよく聞こえるんですけど(笑)
なるほど。みんなのアニメっていうのは、その延長なんですか?
岡田 「みんなのアニメ」はSF大会で、もっとレベルが低いんだよ。いかにレベルが低いのを「自分たちだけがやっているから楽しいよね」って、身内ウケだけを狙ってる。だから参加者が多いほうがいいの。
この対談の全長版はクラウドシティとYoutube,大怪獣グララVS岡田斗司夫『YouTube大解剖』で絶賛公開中!!
ライター:城谷尚也(FREEex / アルテイド)
「アオイホノオの全てを語る」
開催決定!ついに舞台は関西へ!!
あんなチャーミングな島本先生見られるのは、この対談だけ!