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2014年08月07日

「デスゲーム系の流行で普通のリアリティに満足できない」刺激ジャンキーになる日本人

この記事のポイント
1.ミステリーものを作る難しさ
2.てっとりばやいファンタジーものという選択肢
3.デスゲーム系の流行で刺激ジャンキーになる日本人
※2014年6月24日大阪ひとり夜話Vol5より

「大阪ひとり夜話Vol.7」チケット販売中
日付 2014/8/16(土)
時間 開始14:00~16:00(開場13:30)
場所 大阪産業創造館
〒541-0053
大阪市中央区本町1-4-5
大阪産業創造館6F 会議室E
最寄駅 地下鉄中央線,堺筋線「堺筋本町」
地図 http://goo.gl/BtSJHn


「『デスゲーム』系のマンガが多いのはなぜ?」という質問に答えます。デスゲーム系というのは「この教室の中にみんなを捕まえました。出るための条件は……」というくだりではじまる漫画ですね。あと他のパターンでは「全員に金を与えた。この中で金の奪い合いをしてみて負けた人間は借金を背負う」とか、こういったものだと思います。さて「何で、こういうマンガが増えたんですか?」というのに関しては、以前にミステリーブームがあって、それまでにあった恋愛小説や文芸小説というジャンルが、没落していって、日本で売れる小説というのが、宮部みゆき先生などのミステリーが主流になったんです。映画でもヒットする映画は、すべてミステリー形式の謎があって、それを解き明かすというものが、すごく多くなってきたんですね。

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┃ミステリーマンガの難しさ

最近では、一見ミステリーに見えなくても「主人公には誰にも言えない秘密がある」というような、“ミステリー仕立てで進む恋愛モノ”なども増えています。デスゲーム系のマンガが多いのは「このミステリーブームが、マンガの世界にどう入って行くのか?」という流れで、『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』のような探偵モノもあるんですけど、このジャンルは、毎回『ブラックジャック』のように、主人公がトリックを暴かなきゃいけなくなるし、もしくは殺人事件を解決しなければいけなくなるので、続けていくのがかなり難しいんです。そんな事をしようとすると、異常に主人公の周りが殺人事件ばかりの不自然なモノになってしまって、正直マンガでは描きにくいんですね。ではなぜ『金田一少年の事件簿』とか『名探偵コナン』では可能なのかというと、このふたつはミステリーを描くというよりは、ほとんどキャラクターモノにまで寄せているから可能なんですね。

なかなか、ミステリーをマンガにするというのは難しいので。野球マンガやサッカーマンガのように1,2本ヒットがでたとしても、ミステリーマンガが続けて生まれてきづらいんですね。そんなか生まれたデスゲーム系は、きっかけがどの作品かわからないですが『デスノート』の登場あたりから「枠を決めて、その枠の中でお約束を守る」というやり方が出てきたんですね。僕はこれを「ファンタジー的な作り方」と呼んでいます。

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┃てっとりばやいファンタジーという選択肢

このファンタジーというのは、例えば『ハリーポッター』の世界観の設定に、問題意識を持つ読者はほとんどいませんよね。『ハリーポッター』の中では、魔法を使うんですけれども、現実で魔法なんていうのが使えてしまったら、何でもできてしまいますよね? この世界には、エネルギー不変の法則というものがあるはずなんですが「物を燃やす魔法や火を吹く魔法というもので得られる熱量は、この世界のどこで失われるんだ?」と疑問に思ったとして「エネルギー不変の法則が、無いからこその魔法じゃないか!」と、言いだしてしまうと「いやそれだと魔法を使ってやりたい放題になってまうよ?」となってしまいます。

どんな生物にだって、弱点はあるんです。例えば「キリンの首が長い」というのは、ただ単に遠くを見る為であって「キリンは首が長いから、最強の生物」というわけではないですよね。「クジラが海の中で最大の生物だから、最も強い!」ということもないです。体の体積が大きくなったということには、デメリットもつきもので、例えば「大きさを維持するだけのエサを、食べなければならない」などの制約がでてくるはずなんですけども『ハリーポッター』の世界観では、なぜかこういった制約というものがほとんどありません。魔法というのを使えるなら「強い魔法使いは、強い魔法を使える」という、それだけのことしかないんです。言い方を変えるとファンタジー的な作り方をしたマンガというものは「あまり知性を働かせなくても良い」という、変なんですけども。その枠内でのお約束を守ってたらOKという表現になるんですね。

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┃デスゲーム系の流行で刺激ジャンキーになる日本人

さて、ここまでの流れを踏まえて、質問にあったデスゲーム系のマンガというものを考えると「何で警察に行けかないんだ?」というものがほとんどになります。このデスゲーム系マンガの中でも最もスタンダードな『デスノート』にしても、おかしい所がいっぱいあって作者も編集者も知力を尽くして、この設定のおかしい所を読者がわからないように工夫をしてるんですね。例えば主人公がデスノートを主人公が使っていろいろ人を殺していくと、その瞬間に何か、世界のどこかにいる世界一の名探偵が「これは私の出番だな!」と言って、主人公に宣戦布告をする。この流れは一見、論理的に見えるんですけれども、宣戦布告をする必要はないし、世界一の名探偵と、ノートしか持ってない殺し屋が戦う必要はどこにもない、どう考えてもおかしいんですよ。

でも、これらの「必要がない」要素を、マンガの世界やから「そこしかない」というふうに、寄せて行くのが作者の腕になるんですが、『デスノート』みたいにうまく作れる人ってめったにいないんですよ。なので「教室の中に集めて生き残りたければ……」とか「何億円ずつ配って、金を奪い合う……」という、非現実的で不思議な設定も成立するんですね。だから「いや、こんなものどう考えても、弁護士事務所に持って行ったら、一発で解決するじゃん!」みたいな案件だとしても、その作品内では、借金が無限に膨らんで「こんな絶対、破産宣告だよ!」みたいな状態になっても話を進めれちゃうんですね。「なぜ、このようなデスゲーム系が流行るのか?」というと、これは一種の「社会系のファンタジー」だと思うんですね。この言い方をするならば、魔法モノは物理法則を捻じ曲げる「理系のファンタジー」とも言えます。

デスゲーム系というのは、「本当の人間なら、どんな行動をするのか?」とか「本当の経済ならどうなるのか?」というのを、あえて無視して考えず。極限状態を作って遊ぶという「社会系のファンタジーモノ」なんですね。現在、僕らは、そういうファンタジーモノしか楽しめなくなって来た。現在はリアリティーがあるだけの作品を楽しむ知識というものが、失われて来ているのでデスゲーム系の作品がヒットしているのではないかと思います。

この記事は、イベント『大阪ひとり夜話Vol.5』のほんの一部です。この濃密な講演が2時間にわたってライブで楽しめますので、聞いてみたいという方がいらっしゃいましたら是非一度イベント会場に足を運んでみてください。岡田斗司夫が質問を聞いて回ったり、お話しできたりするかもよ?

大阪ひとり夜話の全長版動画はクラウドシティ岡田斗司夫のひとり夜話in大阪Vol.5「全部答える、会場からの一問一答」で絶賛公開中!!

ライター:城谷尚也(FREEex / アルテイド)

「大阪ひとり夜話Vol.7」チケット販売中
日付 2014/8/16(土)
時間 開始14:00~16:00(開場13:30)
場所 大阪産業創造館
〒541-0053
大阪市中央区本町1-4-5
大阪産業創造館6F 会議室E
最寄駅 地下鉄中央線,堺筋線「堺筋本町」
地図 http://goo.gl/BtSJHn




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