FREEexなう。

2014年06月29日

【悩みのるつぼ】ある大学への偏愛で 回答編

るつぼタイトル

 『悩みのるつぼ』、今回は「将来の進路に悩む22歳の予備校生」からの相談です。

***************************** 相談 ******************************

  岡田斗司夫先生にお願いします。22歳になります。〇〇大学(美術系)を目指している予備校生です。人生の可能性を提示してください。

  現役時に高望みしなければ大学で楽しい大学生活を送り、就職を迎えられたのにと後悔しています。自業自得なのでしょうか。 中退者としてブラック企業に就職して死ぬまで惨めな思いで働くのでしょうか。

  中学の恩師に死ぬ間際、「お前は絵が得意だから〇〇大学に行けよ」と言われたのが始まりでした。高校では他の進路のことを考えずにいました。

  現役はそこそこの所に受かったにも関わらず蹴り、一浪。しかし途中から自分の意思で進路を選んだのか、という迷いから予備校を休みだします。

  〇〇大学には受からず、ある大学に引っかかり、両親の説得に応じ入学します。半年で〇〇大学に行きたかったという思いが強くなり、うつになり半年休学します。復学はしますが周りとのギャップに悩み、また半年休学しました。

  復学か退学かの選択を迫られ、中退のリスクを熟考せず大学を辞め、また〇〇大学を目指して予備校に通っています。つまり通算4浪目の大学中退者です。

  甘かったです。〇〇大学に行けなかったら大学中退で就職です。我慢して大学を出ておくべきだったと後悔しています。〇〇大学に受かる確率も、非常に低いのです。

  他の進路に進む可能性として思いついたのは看護師と保育士です。あまり深く考えてないですが。


 ***************************** 回答****************************** 


 高望み、自業自得、甘かった、後悔と、あなたの相談文は自分の選択へのネガティブな評価で埋め尽くされています。実は、そのこと自体があなたを苦しめているのです。

 仮に、現役で受かった大学に高望みせずに行っていたとしても、あなたならきっと中退したでしょう。この前まで通っていた大学に復学しても、また休学することになったでしょう。

 それどころか、あこがれの大学に受かったとしても、こんなはずじゃなかったと考えて、休学してしまうかもしれません。ブラックではないちゃんとした企業に就職しても、やっぱり途中でやめることを考えるでしょう。

 あなたが今苦しいのは、今までの努力が報われなかったからではありません。過去など絶対にやりなおせないのに、いつまでもこだわって、あのときああすれば、このときこうすればと考えて、落ち込んでいるから、苦しいのです。

 だからといって、今ここで僕が「人生、気の持ちよう。これからは過去を振り返れないで。迷わず、やるべきことだけに集中してください」と書いたら、あなたはできるでしょうか?無理ですよね。あなたは、そういう「迷ったり、後悔したりする生き方」しかできない人なのです。

 それは、あなたにとって苦しいかもしれませんが、悪いことばかりとは限りません。たくさん苦しんで、たくさん考えて、あがいて、チャレンジして、その末にしかつかめないものもあります。それは、素直に、普通の生き方ができてしまう人には絶対につかめないものです。

 言い方をかえれば、あなたは大器晩成型なのです。自分の道を見つけられるのは30歳を過ぎてから、成功するのは40歳過ぎてから、と考えてみて下さい。その間は、苦しい修行の時期なのです。だから、目先の小さな成功にふりまわされないようにしましょう。

 楽になることはあきらめて、思いっきり迷い、悩み、苦しんで下さい。


 大学に行くべきだと思うなら、四浪どころか、十浪、二十浪してもかまいません。予備校に行くのは親に迷惑をかけるので、自分なりの勉強法で、とことん勉強して、受験してください。

 保育士や看護師が良いとおもうのなら、資格をとって、就職してください。さっさと就職するべきだと思うなら、雇ってもらう会社に就職してください。

 あなたはまだたった22歳で、これからも大学受験をすべきか迷えるほど恵まれています。一方、僕は55歳で、朝日新聞の人生相談コーナーを担当している、そこそこの文化人です。子供も独立して、生活の不安もありません。

 そんな僕でも、今のあなたの人生と、今の自分の人生を取り換えられるとしたら、取り替えてみたいです。その方が断然、おもしろそうに見えます。はっきり言ってうらやましいです。

あなたの人生には、僕にはなくなった「未来」があるからです。可能性があるからです。その可能性のせいで、あなたは悩んだり苦しんだりしているのですよね。

 だから、たくさんの応援と少しの嫉妬の気持ちをこめて、こう言わせてください。
 
「ムダな努力はあるけど、無駄な修行はない」。

 どうか、気が済むまで、迷い苦しんでください。

<<前回、「医学生でも死が怖いです」はこちら

***********************************************************

岡田斗司夫のSNS『クラウドシティ』では、この連載をはじめ、すべての連載やインタビューが連載前から読めます。
バックナンバーもそろっています。
また、悩みのるつぼゼミで、自分たちで回答を考えたりもします。
クラウドシティ入会者 随時募集中
価格:月額 840円(税抜) / 年額 10,000円(税抜)
動画・音声・テキスト・電子書籍:岡田斗司夫コンテンツアーカイブ見放題

詳細はこちら お申込みはこちら

 




コメント一覧(新規コメント投稿は、上のFacebookソーシャルプラグインをお使いください)