FREEexなう。

2014年06月01日

【悩みのるつぼ】医学生でも死が怖いです 回答編

るつぼタイトル

 『悩みのるつぼ』、今回は「死ぬのが怖い医学生」からの相談です。

***************************** 相談 ******************************

  現在、私はある地方大学医学部の3年生で、将来は子どもの心身ともにケアできる優しい小児科医になりたいと思っています。

  しかし、実習や研修、仕事で避けることのできない「死」が怖くて仕方ありません。


  人間が死を恐れるのは当然かもしれませんが、小学生の頃から死ぬことを考えると、とても恐ろしい気分になります。いつか自分の体が骨となり意識もなくなると想像すると、恐怖で叫び出したくなるほどです。

  中高生のときお世話になった病院の先生に憧れて医師を目指したのですが、医師になれば生死を少しは理解できるのではないかとも考えました。

   実際、医学の勉強を始めてから死に対する意識は少し変わり、「人は死後も後の世代に影響を残すことができる」と今は考えています。

  自分が死ぬまでに病気の子どもたちにできるだけ良いことをしたい、と思い至るようになりました。

   今は友人と必死に実習・勉強して試験後は思いきり遊ぶという生活を満喫し、大学にいれば死の恐怖に囚われることはありません。家に一人でいるふとした瞬間のみ、そういった恐怖を感じます。

  このままでは、将来余命の短い患者さんを受け持ったとき、その人の死に向き合うより自分の死を恐れてしまう気がして心配です。

  何か良い心の整理の方法はありますでしょうか。アドバイスを願いいたします。

 ***************************** 回答****************************** 


 私の父はガンで他界しました。大正生まれの父は弱音など吐いたことがありません。でも末期ガンで入院してるとき、「ようやっと自分が死ぬのがわかってきた。斗司夫、死ぬのは怖いぞ」と笑って言いました。

  死は「理解すれば怖くなくなるもの」ではありません。理解すればするほど、理不尽に思えたり怖くなったりするものじゃないでしょうか。

  父はけっきょく、「死の恐怖」と和解したようです。「死ぬことは怖い」という本音を認めて、すこしだけ楽になったみたいでした。

  あなたは死が怖い。私の父のように「もうすぐ死ぬ」から怖いんじゃなくて「いつか自分も死ぬ」から怖い。子供の頃から怖いので、これはもうあなたの「個性」の一部です。

 「個性」なんだから治そうとか乗り越えようとしてもムダ。宗教や哲学も、たぶん助けにならないと思います。

  犬が怖い人は、無理して犬を飼う必要はない。「犬が怖い」を克服するためにあえて飼うのは時間と犬の人生のムダでしょう。同様に、死が怖いあなたが「死を意識する職業」を選ぶのはムダだと私は思います。

  医者にならなくても、子どもたちのためになる仕事はいくらでもあります。医者以外に医師免許の必要な職業もいくらでもあります。厚生労働省の医系技官、外資系コンサル会社でのキャリアコース。保健所長は法律上、医師以外なれません。

  死が怖いんだから、堂々と逃げてもいいんじゃないですか? 私の父のように「必要になるまで」は直面しなくてもいいと思います。

  もう一つ、気になる点があります。ひょっとして医学部に合格しちゃったから「医者にならないともったいない」と考えてるんじゃないですか?

 「死が怖い」「子どもの役にたちたい」「医者に憧れている」

  この三つだけでも相互に矛盾してしんどいのに、おまけに「せっかく医学部に合格したからもったいない」まで考え出したら、そりゃ動きも取れなくなりますよ。完全に「心の積載量オーバー」です。

  怖いことは逃げてもいいんです。医学部に合格しても、医者にならなくてもいい。

 「死が怖い」のは、あなたの個性の一部です。否定せずに、その個性といっしょに幸せになる道を考えてください。

<<前回、「悲劇のヒロイン気取り嫌い」はこちら

***********************************************************

岡田斗司夫のSNS『クラウドシティ』では、この連載をはじめ、すべての連載やインタビューが連載前から読めます。
バックナンバーもそろっています。
また、悩みのるつぼゼミで、自分たちで回答を考えたりもします。
クラウドシティ入会者 随時募集中
価格:月額 840円(税抜) / 年額 10,000円(税抜)
動画・音声・テキスト・電子書籍:岡田斗司夫コンテンツアーカイブ見放題

詳細はこちら お申込みはこちら

 




コメント一覧(新規コメント投稿は、上のFacebookソーシャルプラグインをお使いください)