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2014年04月10日

「金を持っているやつを騙して何が悪い!」マフィア化していく日本人~マスコミのタブー

この記事のポイント
1.「振り込め犯罪結社」書評
2.犯罪統計と振り込め詐欺
3.金を持っているやつを騙して何が悪い!
4.真実を報道できないマスコミのジレンマ
2014年4月6日岡田斗司夫ゼミ「笑っていいとも最終回に岡田斗司夫がもの申す!テーマは悪!」より

少し真面目な話題で、「振り込め犯罪結社」という本について語ります。この本は、コミックモーニングで連載中の漫画“ギャングース”の原作者“鈴木大介”さんが書いたノンフィクションで、“ギャングース”が面白かったから、ちょっと読んでみたけれど、これがめちゃクチャ面白いんだ。本当はツイッター読書会とかでやりたいぐらいなんだけど、この本で書いている内容は、現在の日本の犯罪がどうなっているかなんだ。

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┃犯罪統計と振り込め詐欺

僕らは、「犯罪のバックにすべてを握るヤクザみたいな胴元がいて、気の毒なお年寄りから金をだまし取っている」と思いがちだけれども、「振り込め犯罪結社」を読んだら、今の犯罪は、話がもっと大きくなっていることが分かったんだ。まず、今までの犯罪と何が違うのか。これまでの日本で起きた知能詐欺のような事件の統計では、戦後や高度経済成長時代からあと、この振り込め詐欺が出てくるまでは、詐欺犯罪の被害額は、年間10億とか20億円規模だったんだ。ところが現在、金のとり方も巧妙になってきて被害額は200億円規模になっているんだ。

例えば、「振り込め犯罪結社」では、一人暮らしのお年寄りの名簿を渡す“名簿屋”という人たちがでてきて、この名簿屋が用意する名簿に載っている人たちに対して、振り込め詐欺をかけるんだけど、名簿の質にも良い悪いというのがあって、質が良い名簿には、いろいろな補足情報が書かれているんだ。子供についての名前はもちろん、性別や年齢から「どこに住んでいるのか?」、「どこの企業に勤めているのか?」みたいなことまで、データが書いてある。だから、今は「もしもし、母さんおれだけど」じゃないんだよ。「もしもし、おばあちゃんフミヒロだけど」というところから、振り込め詐欺は始まる。これだけのデータが全部そろっているので、5万円で名簿を買ったとしても儲かるんだね。

【2:10】では、名簿屋というのは、どうやって名簿を手に入れるのか。僕らは、ついついアンダーグラウンドなことを考えるんだけど、今のやり方は違うんだよ。今は、陰に隠れてこそこそとアンダーグラウンドな組織を編成するのではなく、フロント企業として堂々と看板を出して、真面目に経営をしているんだ。この名簿屋みたいなものが、副業としている主な業種は、「バリアフリー関係のリフォーム会社」、「遺産相続の法律相談事務所」、「福祉関係の会社」などで、ここでおじいちゃん、おばあちゃんから山ほど相談を受けて、その相談内容をすべて名簿に記録していく、ここで集めた個人情報を組織的に悪用して、詐欺を行う人たちに流すわけではなく、組織にひとりでも悪いやつがいたら、その人が、名簿を流しちゃんだよ。こういった一部の日本人の中に入り込んでいる“ワル”、犯罪者の分子みたいなものが、無限に細かくなってきていて、どんどん犯罪市場に流れるようになっているんだ。だから、おれおれ詐欺とか振り込め詐欺というのは、「暴力団が元締めでやっている」とか、例えば今でいうと「関東連合みたいなところが元締めでやっている」というのは、警視庁が流しているデマみたいなもので、実際は、組織犯罪なんだけれども、あまりに実態が広すぎて、ぜんぜん補足できていないんだ。

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┃金を持っているやつを騙して何が悪い! 

【3:45】これは、何が起こっているのかというと。この「振り込め犯罪結社」には、犯罪を起こしている人たちのインタビューも収録されているんだけれども、犯罪をやっている人らからすれば、「何が悪いのかよくわからない」、「おれたちが騙そうとしている人は、最終的に誰かに騙される人です」さらには、「例えばサラ金とかに比べると、僕たちのやっていることは、まるでマシだ」と言っている。なんでかというと、「サラ金というのは、お金に困っている人たちにお金を貸している」つまり「無理矢理、金がない人から金を奪って、風俗で働かせたりして、さらに困っている状態にする。おれたちはそうじゃない。いざとなれば孫に500万ぐらいポンと出せる人から金を奪ってるだけだ。出せる人間から奪ってるんだ」と言うんだ。

ニコ生でこういう格差の話をすると、よく、金持ちのおじいちゃんとかおばあちゃんがいるから、こういう人たちから、どうやって金を出させようかという話になってくるけど、この振り込め詐欺市場で起こっていることも同じなんだ。つまり、格差社会が前提となり、金持ちの老人層の人たちがいて、その人たちの孤独さにつけ込んで、僕ら普通の人間が、日常生活の中で悪に加担して、彼らから金を奪おうとしている。これは日本国民がイタリア化というか、マフィア化していってるとも言えて、現状の日本は、法治国家という表面層の一段奥に、「僕らの友達の中の誰かが、実はそういう詐欺組織に入っている」とか「誰かがそういう名簿を詐欺組織に流している」などがあって、今以上になにをやっているのか、わからないというということになってしまうんだ。

【5:23】僕はこの本を読んで、地下経済という表現は、変なのかもしれないけど、普通の人たちが「大学を出ても、就職しにくい」と言っていたり、最近の若者の就職率の低さや正規労働の低さ、派遣率の高さみたいなものが、最終的に国を危うくしていって、徐々に日本国民全体が、マフィア化していくという予兆を感じて、少しゾクッとしたんだ。だから、2014年と2015年の2年間が、「犯罪者がアンダーグラウンドにいて、それとは別に市民がいる」というような感覚が持てる最後の年なのかもしれない。オリンピックが近づいてきて、貧富の差の格差が今よりもっと広がったまま固定されるようになってしまったら、僕ら自身が半分犯罪者になり、自分自身や周りの人もマフィアみたいなものだということを、わかっていながら利用しあい、徐々にイタリア化していくのではないかと思えてしまう。こうして国民がマフィア化していくのが、ひょっとしたら新しい社会の形なのかもしれないし、国民のマフィア化を肯定る考え方が、保守層として現れて、この人たちが、民間の犯罪が当たり前になってきたときに、再び地方ごとに取り締まる組織として、警察と別の権力構造を持って誕生するのではないかと僕は考えてしまいました。

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┃真実を報道できないマスコミのジレンマ

【6:50】ところが日本のマスコミは、この今起きていることを報道してしまうと、日本国民自体が、日本国民の敵になるという話になってしまうから、このことを報道できないんだよね。

「イタリアってそういう国なの?」(ニコ生コメント)

イタリアはね、地下経済のほうが発達していて、GDPは低いんだけども、実際の経済力はもっとあるんだ。なぜマフィア化と表現したかというと、マフィアは、見知らぬ人からは大きくとるんだけど、身内には、すごく手厚いからなんだ。同じように「振り込め犯罪結社」で紹介された人たちも、見知らぬおじいちゃん、おばあちゃんからは、金をとるんだけど、友達とかに対してはとことん親切な、良いやつたちばかりが犯罪をしていたりしてて、結構面白かったので、興味のある人は、ぜひ読んでみてください。

今日のテーマの“タブー”で、この本を紹介したのは、この振り込め詐欺事件を報道するときマスコミの人は、「暴力団の資金源だから」とか、「関東連合がバックにいて」という話で落ちつけたがっているんだけど、それは、「日本の格差が生んでいる犯罪を生み出す構造」、「貧困が犯罪組織というのを日常化している」ということを言いにくいからだと思ったからなんだ。

振り込め犯罪結社

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┃マフィア化しないための処方箋
 ▶超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略 増補改訂版

┃地方からの切り口で語った電子書籍新刊
 ▶「いや、上京するの面倒くさいし地元の方が楽だよね: ジモらくのススメ [Kindle版]」


この記事は、2014年4月6日岡田斗司夫ゼミ「笑っていいとも最終回に岡田斗司夫がもの申す!テーマは悪!」の放送内容をもとに、読みやすいように再構成したものです。もとになった動画の該当部分と聞き比べながらお楽しみください。

ライター:城谷尚也(FREEex)




otakingex at 07:00コメント│ この記事をクリップ!

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