FREEexなう。

2014年01月27日

岡田斗司夫の近未来日記 289回「3Dプリンター」3

 進化し続ける3Dプリンター。

 その究極の目標は「3Dプリンターそのものを出力できる3Dプリンター」です。

 自己複製できるなら、それはもう「生命」と呼べるのでは?

 と僕は考えます。


2014/02/04日号掲載


2014y01m21d_010259529  確かに、3Dプリンターの原材料を採掘するため、運搬するためには、まだまだ人間の手が必要でしょう。

  しかし、それを言うなら人間だって他の生物の助けがないと生存できない。

  土や岩を食べて人は生きられません。

  土と太陽の光を有機栄養に変換する植物がいないと、人は生きていけないのです。

  同様に、3Dプリンターたちは「生きて、繁殖するため」、言い換えれば「可動し、複製するため」には、人間との共存が不可欠、と考えてみました。

  こうなると、機械と生命の境界線はとてつもなくアヤフヤになります。

 【自己複製できる機械は生命である】

 【生命は進化する】

  生命の定義をこのようにまとめると、3Dプリンターは「生命」になってしまいます。

  え?

  人間がプログラムしないと動かない3Dプリンターは生命とは言えない?

  ところが、その境界も「人工知性」が埋めつつあります。

  コンピューターが発明された当初、「機械に知性が持てるかどうか?」の論争は、以下のポイントに絞られました。

・人間にチェスで勝つ。
・人間の自然言語による質問に答えることができる。

  この二つが可能なら、その機械は人間と同じく知性がある。

  これがミンスキー博士をはじめとした、20世紀後半の人工知能学者たちの定義です。

  映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピューターHAL9000は、宇宙飛行士たちと会話し、チェスで人間を負かせます。

  キューブリック監督が「このコンピューターには知性がある」と説明するために挿入したシーンなのです。

  映画が作られた1960年代後半、「人間にチェスで勝つコンピューター」は、まだまだ遠い未来と思われていたんですね。

  しかしIBMの「ディープブルー」は1996年に人間の世界チャンピオンに勝利しました。

  すでに「ミンスキーテスト」の前半はクリアされていたんです。

  もう一つのテスト「自然言語の対話」はかなりの難問でした。21世紀の直前ぐらいまでは「あと100年は無理」と言われたぐらいです。

  しかし、機械翻訳の商業化で情況は大きく変わりました。

  ついにiPhoneが登場し、人工知能は大きく進化したのです。

<<前回、「3Dプリンター」2はこちら

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