「3Dプリンターを作れる3Dプリンターの登場」
なぜこれが「目指すべき究極のゴール」なのでしょうか?
2014/01/28日号掲載
現在の3Dプリンターが出力できるのは、まだ「部品」です。部品を組み合わせた「機構」は、職人などの組み立てに頼っています。3Dプリンターで歯車やネジは出力できても、人が組み立てないと時計はできません。
しかし、これも数年で乗り越えられる壁です。
2010年代後半の3Dプリンターは、歯車やネジ、電子部品や基盤などが組み合わさった状態まで出力できるようになるでしょう。液晶ディズプレイや電池、小型モーターなども「3Dプリントできる」デザインに再設計されるはず。
そうなると「iPhoneそのものを3Dプリント」という段階に来ます。
ここまでが、2020年までの課題。
しかし、製造機械だけでマシンは作れません。
素材やエネルギーが必要。
エネルギーは太陽発電パネルになるでしょう。これは3Dプリンターで簡単にできそうです。パネルを敷地内に敷きつめるロボットも、もちろん3Dプリンター製。
素材はかなり難問です。
原油採掘を3Dプリンター製の自動機械にやらせるには、まだまだ時間がかかるでしょう。採掘した原油からナフサやプラスチック素材を仕分けるには、まだまだ重化学プラントが必要です。
素材ができても、消費地の近くまで運ばないとダメ。運輸も3Dプリンター製の無人船や無人機、ロボットカーになります。
金属部品を作るためには、鉱山の採掘や精錬、素材加工に原料加工が必要です。
これらすべてを3Dプリンターで作ると「ロボット生態系」が完成します。
しかし、ここまで完璧な仕組みはたぶん50~100年は無理でしょう。
でも、「3Dプリンターを作れる3Dプリンター」があれば、上の生態系モドキを考えなくても、ずっと楽になります。
自己複製が可能なら、プログラムやデータを変えれば、その3Dプリンターは自分より大きなプリンターや小さなプリンターも製作可能になります。
大小さまざまな3Dプリンターで部品や機構を作り、そのメンテナンスや素材調達は「ヒト」に外注すればよろしい。ヒトだって、体内にさまざまな酵素や菌などを住まわせています。蛋白源や炭水化物を摂取するために植物を育てています。
言い換えれば、無数の「他の生物」との共存無くして、人間は「生きて、繁殖」などは不可能。
同様に、3Dプリンターたちは「生きて、繁殖するため」、言い換えれば「可動し、複製するため」には、人間との共存が不可欠、と考えればいいんです。
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