
『悩みのるつぼ』、今回は「試験で不正をした元同級生を許せない女性」からの相談です。
40代の女性です。
大学はバブル期に卒業しました。試験時には、一番後ろの席が取りあいになり、机に解答を書いている人や、英語の訳本を膝に置いている人がいました。
難関と言われる大学です。
入試での不正行為は大きな社会問題になっても、学内の試験での出来事は封印されています。カンニングが発覚すれば半年分の単位が没収で、彼らの卒業は偽りのものです。
そんなメンバーと最近、再会したら、彼ら彼女らは、公務員や大企業の正社員という立派な肩書きを持っていました。
社会に出ると、学力だけでなく、人柄やコミュニケーション能力、さまざまな技能が望まれます。「世渡り力」も能力のうち、といってしまえばそれまでですが、不器用でも健気に生きている人たちは、浮かばれないのではないでしょうか。
今は就職難で、学生は私たちの時よりきちんと学んでいると思いますが、代返や代筆、試験前にノートを借りにくる連中、いつの時代もありそうです。
そう思うと、往々にして要領のいい人の天国になりがちな大学を、そう楽しいところとは思えません。私は再会した同級生を今もなお、許せない感情は失せません。
彼らは決して食肉偽装を指摘できる分際ではありません。自分の胸に手を当てて考えてもらいたいです。おかしいとは思われないでしょうか。
大学時代のあなたは「純粋」だったんですね。
損か得かで言えば、損かもしれません。
でも当時のあなたも、それぐらいわかってたはずです。損とか得とか関係なく「私はカンニングいやだ」「そういうの、カッコ悪い」と思ってやらなかった。
当時の同級生には「そういうごまかしは、いつまでも通用しない」と思ってた。だから彼らの不正を「見逃して」あげたんですよね?
でも40代になって、軸がブレています。
いまさら「けっきょくカンニングした人が得をしている」という損得勘定に惑わされています。
かつての自分の純粋さが信じられなくなってるんです。
じゃあどうするか、ちょっと考えてみましょう。
仮に”過去と通話できるケータイ電話”があったら、20代の自分にどう言いますか?
「けっきょくズルい奴が得をする。お前もカンニングすべき」と言いますか?
もし言ったとしたら、20代の頃のあなたは納得してカンニングすると思いますか?
たぶん、しませんよね。
あなたの説得を「汚い大人の理屈」と排するでしょう。
だって、当時の彼女はまだ「純粋」だから。
だから、昔の自分にはこう言いましょう。
あなたが考えているほど、世の中は甘くない。がんばった分、認めてもらえるほど公平でもありません。イヤなこともいっぱいありますよ。
いま私は40代です。正直、損な生き方してると思います。昔のあなたのような「純粋」さを失ったから、こう思うのでしょうか。
でも、そんな社会にめげず、そんな友達に染まらず、自分らしく、ちゃんとまっすぐ生きてきました。
いまの純粋さを守って生きてください。私はそんなあなたに軽蔑されない生き方を貫きます。
あなたは昔の「純粋さ」を失いつつある。でも、若い頃って世間知らずだから純粋でいられるだけです。
年と経験を重ねたあなたは、そういう単純な純粋さのかわりに「強さ」を手に入れました。
世界が自分の信じたいものと違っても、自分を見失わない「強さ」。
損得じゃなく、自分らしいかどうかで生き方を選ぶ「強さ」です。
昔の自分も、いまの自分も励ましてあげましょう。
かつての自分の純粋さを誇り、いまの自分が選んだ生き方を誇ってください。
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