声優の世界っていうのは、逆に言えばルールが公平ではない訳ですね。
声優学校の人たちが声優になれない理由っていうは、数字を持っていない。
もうただその一言に尽きるんですよ。
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2013年12月8日に行われた「岡田斗司夫ニコ生ゼミ」で声優業界の矛盾について語る。
この特殊な職業は、才能や技術がある人が必ずしも仕事にありつけるわけではない。
第一線で活躍しているプロの声優は、大体顔ぶれが決まっていて実力派ばかり。
しかしその一方で、芸能人やアイドルなど、声優学校に行っていないタレントが、吹き替えなどで主役のアフレコをしたりする。
「純粋にプロの声優になりたい」という夢はなぜこうも叶いにくくなっているのか?
この声優業界のモヤモヤとした構造を、ニコ生ゼミで1時間たっぷり、岡田斗司夫がこのテーマについて真正面からバッサリ切リ込む。
そのハイライトをどうぞ!!
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声優業界にはですね、何種類かの人種が生息しています。
A:プロ声優:100~200人
B:一応プロ(正式所属):1000人
C:預かり(準所属):700人
D:専門学校・養成所:1万人
E:なりたい人:数10万~100万人
(中略)
昔声優志望で、今声優業界を社会学として研究している子にしてみれば、なんか自分が思ってるのと話が違うと。
最初から「預かり」になれる子はもうほぼ決まってる。
まぁぶっちゃけていえばそれは、強いコネを持ってる人であったり、事務所の社長のお気に入りであったり、もしくはもう最初に入所した時からすごい可愛くて「この子アイドルとしても売り出す」っていうのが見込めてるようなもんだ、と。
そんなのちょっと考えたら、「そりゃそうなんでしょう。現実の人間社会だから当たり前なんだけど」って言いたいですけども。
彼女としては、そういう建前はあっても、もうちょっとこの専門学校・養成所に入って「預かり」になって、その後一応プロになってっていうルートが、 まともに動いてると思ってたんですね。
僕相談を受けて、彼女に味方したいのは山々なんですけども、「ちょっと無理っぽい」って思うんです。
だって元々の枠が100~200人しかないんですよ。
で、そこに数十万人が押し寄せたら「どんなことになるのか?」といったら、プロ野球の人数とまぁ似たようなもんだと思うんですね。
結局、打率とか防御率でしか野球選手として判断されない訳だから、数値化された上で才能と将来性っていうのを見極められて、そして年間すごく認められた20人とか30人だけが、プロの世界に入ることが出来ると。
で、ほとんどの人はもう中学校か高校卒業する時点くらいで、よっぽどの人はともかく、プロの野球選手になるという夢は諦めて一般社会で生きていくということをやるんですよ。
でも声優の世界っていうのは、そこまで厳しくない。
逆に言えばルールが公平ではない訳ですね。
だからみんなもいつまで経っても入りたい。
例えば20歳過ぎても声優になりたいという夢も、別に無茶なものには聞こえないし、僕らもそんなの別に30になっても40になっても声優は始めれるんだと。
現に見てみろと。
風立ちぬの主演声優なんて、もう50過ぎたオッサンが めちゃくちゃ下手だけどやってる訳ですよ(笑)
それを聞くと、この養成所とか専門学校で言っていることが全て逆に聞こえるんですよね。
だって庵野秀明は、養成所や専門学校で教えているスキルを何一つ身に付けてないけども、ちゃんと主演が出来る訳ですから。
なんで枠が決まっている仕事に関して数万人とか数十万人が押し寄せてるのに、ここに正当なピラミッド、正しい順序立ったピラミッドを期待しちゃうのかというと、普通の仕事にはこんな枠が無いからです。
声優さんっていうのは、いかになりたくても、事務所を自分で開いて、自分でアニメを作るという訳にいかないんですね。
だからこの枠次第で決まってしまう、すごい特殊な業界なんですよ。
小説家とか漫画家とかは違います。
面白い漫画さえ描けば絶対載ると。これその通りなんですよ。
面白い漫画家がもし今の人数の10倍になっちゃったとしても、少年漫画の種類をあと5~6誌増やせばいいだけであって、売れさえすれば可能なんすよ。
でもアニメがどんなに評判になって売れようとも、アニメの上限数は決まってるんですね。
それは20世紀の終わり、1980年代の終わりぐらいだったと思うんすけども、第2次アニメブームの時に週間70番組くらいアニメが放送されたことがあったんですよ。
その時が頂点で、やっぱそれはアニメの体制からしたら無理だったので、今週間50番組以下に落ちてるはずです。
それぐらいしか枠がないので、この上の数字が限られてる。
面白いのはD(専門学校)の人が目指すのが、A(プロ声優)を目指さないんですね。みんなC(預かり)を目指しちゃうんですよ。
つまり専門学校とか養成所に行っちゃうと、みんな「預かり」(準所属)になりたいと強く熱望するようになっちゃうんですね。
で、「預かり」や準所属になっちゃうと、ここで向上心っていうものがあまり出なくなってしまうと。
言っちゃえば、もう「預かり」になっちゃった瞬間に、声優さんの友達がいっぱい出来ちゃうし、飲み会とかパーティとかも声優さんの所行けるしで、ある程度納得出来ちゃうんですね。
で、もうこっからB(一応プロ)にまでなってしまったら人生の目的達成したようなもんで、さらにAのプロの声優だけで食っていこうという人ってあんまりいない。
まぁそんなことが出来る人が少ないっていうのもあるんですけど。
これもう仕方がないんですよ。
プロ野球の選手の例でいうと、40歳越えて現役の人って、もうほとんどいないじゃないですか?
つまり毎年毎年新人は入るんだけども、リタイアしてプロ野球を辞める人口も必ず同じくらいか、まぁ決まっている訳ですよね。
毎年100人新人が入っていったら、100人か200人オールドの人が抜けていく業界なんですよ。
ところが声優業界は、サザエさんを見てください!
死ぬまで出来るんですよ!(笑)
つまり、いったんプロの声優とか一応プロになっちゃったら、
その人は生涯寿命が続くまで仕事続けるんですよ。
枠の制限があるのに、オールドの人たちがリアタイアしない業界はどうなってしまうのか?
新人の枠が年間10~20しかないことになるんですね。
年間10~20しかないような新人の枠に対して、「預かり」の人とか、なりたい人数十万人が、ガーっと押し寄せると。
ここまでも過当な競争なのに、「ジブリ」なんていう所はですね、声優を、プロの声優を全く使わないというえげつないことをしやがるもんだからですね(笑)
だから増々仕事の幅が狭まってしまって、「こっから先どうなるのか」「なんでこんなこと起こるんですか?」「なんで声優になりたい人たちは夢を掴めないんでしょうか?」という風に聞かれたんです。
まぁ僕としては、声優業界に詳しくは無いですけれども、大体プロの業界というかエンターテイメント業界がどういう流れかがわかるし、あと声優業界もどういうロジック、論理で動いているのかはわかります。
で、言っちゃえば、声優学校の人たちが声優になれない理由っていうは、数字を持っていない。
もうただその一言に尽きるんですよ。
なんで、アイドルやってたりAKBやってたりした人達が急に声優になったり、そういう風なことが可能なのかっていうと、彼女ら彼らは数字っていうのを持ってるからですよね。
アニメの新作の映画っていったらアニメ業界でしか記者会見されないのが、アイドルとかお笑いタレントが声をやることによって、急にバラエティー番組とかでも露出するようになると。
その露出の効果っていうのは、テレビのCM枠っていうのは15秒とか30秒で大体500万~1000万円するので、換算するとものすごい経済効果になると。
だからアイドルとかお笑いタレントを使うんだ。
ここまでは誰でも知ってる話だから、わかるよね。
同様にプロの声優さんでも人気がある人っていうのは、固定客っていうのを、数万人~数十万人持ってる。
その人達は、その声優さんが出てさえすれば、CDとか色んなものを絶対に買ってくれる人だと。
だから、あるアニメ作る時には、怖いからまず数字が取れる、絶対に物を買ってくれる、DVDとか買ってくれるファンの人達っていうのを、数万人持ってる声優さんでメインの俳優・主演人物を決めていって、それでリクープやDVDの売り上げっていうのをやると。
現にアニメっていうのはゴールデンタイムにオンエアして、視聴率で稼ぐようなビジネスモデルから、深夜の「○○物語」とか、「とある○○」みたいなものになりだしてから、もうDVDの売り上げで稼ぐようになったは見て分かるでしょ。
アニメっていうのはもう作り方が変わっちゃてるんです。
だから、サザエさんとかちびまる子ちゃんとか、クレヨンしんちゃんでもいいですが、ゴールデンタイムでオンエアされるような番組は、別にいわゆる人気声優ではないですよね。
だからそこは数字が取れる声優ではなくて、配役でそれらしい声が演技ができる人が出ると。
そうじゃなくて深夜の時間帯とか、そういう風になってくるに従って、それぞれの声優さんが数字を持ってないと駄目になってくる。
それがDVDの売れ行きっていうのを保障するからだ。
だから、こういう構造にならざろう得ない。
「プロの声優」になれる人っていうのは既に数字を持っている人で、「一応プロ」っていうのは数字を将来取れるかもしれない人。
つまり、それぞれの人がキャラクター商品を出せるぐらいの人気が見込める、いわゆる本当にアイドルみたいな人達しか、一応プロにはなれない。
じゃあ真面目に一生懸命声優になりたい人はどうすればいいんですか。
いや、そんな元々の枠が100とか200しかなくて、年間の新人枠が10とか20しかないような業界に、「まともな夢を持って、頑張ってる人達はどうなるんですか」って、「そんなもん無理だよ!」と。
本当にチャレンジしたいんだったら、自分達でこの一番上のプロの声優の枠を広げるしかないんだけども。
やっぱりこういう事を考える人っていうのは、自分達でコミケとかでアマチュアの声優っぽい人達が朗読したり、CDやアルバム出したりする事を、すごい嫌うんですね。
嫌うというか負けたと思っちゃう。
専門学校とか、養成学校に行ったら、いつかは「預かり」になって、その後プロになるっていうのがルートであって、そういうアンダーグラウンドな活躍してると、自分で負けを認めるみたいになる。
だから昔の漫画業界で言うと、同人誌出したら負けだと。
そうじゃなくて「自分は持ち込みとか、投稿一本で行くんだ」「そこでアマチュアの表現に逃げたら負けなんだ」みたいな悪い意味でのプロ意識があったんですけど。
やっぱ声優業界ってまだ、そのそっくりのものがあるらしいっていうような事が、修士論文を書いてる女子大生の話から聞いて、僕はもの凄く興味深かったです。
ライター:天邪鬼のシュンスケ

価格:月額 884円 / 年額 10,500円
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