「あ~無理むり。そんなアプリ、普通の人には扱えませんよ!」
キュゥべえは断定した。月島にそびえる超豪華億ションの最上階に、そのキュゥべえは住んでいる。論理モンスター・キュゥべえ、またの名を書評家・小飼弾という。
2013/09/17日号掲載 「みんなのアニメ」の企画相談に行ったわけ。そこでシステム周りの話をしようと思ったら、このキュゥべえ野郎はいきなり企画自体に対してダメだしして来やがった。
「岡田さんの欠点は、いや岡田さんに限らず天才の問題点は『誰もが自分と同じにできるはず』と仮定して仕組みを作ることです。普通の人にアニメなんか作れません。たとえMADというパロディでも、30分作品から5分のMAD作れません!」
僕がいいわけにモゴモゴしてると、どんどんたたみかけてくる。
「そうですね~、30秒かな? 長すぎるかな? 15秒かな? 普通の人が作れるのは、その程度の長さですよ」
アニメに限らず、映像をつくる最小要素をカットという。カットが連続してシーンになり、シーンを組み合わせてエピソードを作る。
120分の映画は通常、4つのエピソードで構成される。各エピソードは、
①主人公の挫折とライバル
②偽りの成功と失敗の予感
③挫折と再起
④クライマックスと主人公の回復
というのが、だいたい娯楽作の流れだ。各エピソードはそれぞれ2~30シーンでできていて、シーンは2~30カットでできている。
映像の最小要素・カットはだいたい平均して3秒。短い場合はほんとに一瞬(1/6秒程度)だし、長い場合は20分という「長回し」もありえる。
弾の言う「15秒で作れる映像」とは、平均3秒のカットを5つ繋げてストーリーを作れ、という意味だ。
これ、逆にシロウトには難しい。短くて面白いものって、本当にセンスある人にしか作れないからだ。
しかし、「シロウトや初心者に長い素材を与えて、長いアニメを作らせるのはハードル高すぎる!」という指摘もよくわかる。だいたい、30分もあるアニメをスマホにダウンロードさせて、それを自由に編集できる、なんていうアプリ開発は僕たちの扱えるサイズじゃない。
「そんなのの開発はGoogleやAppleに任せればいいんです」と弾は言う。いやまったくごもっとも。
となると、現実的な落としどころは5分のアニメを作って、それを自由に編集できるようにして、15~30秒程度のパロディや自主制作が作れるぐらいかなぁ。それならスマホの性能や通信環境でも可能だろう。
アレコレ考える僕に弾はさらにとどめを刺す。
「ダメです!まだ岡田さんは難しく考えすぎてる!もっとバカになりきって考えないと」
バカになりきる?
「岡田さんが次に会うべきは、田中圭一さんです!」とキュゥべえは予言した。
え? あのお下劣マンガ家の?
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