そういう「恐ろしい映画」であるなあ、と思って2回目見に行って欲しいですね。1回目感動して、感動が何か分からなかった人はある種残酷で恐ろしくて美しい映画。美しいということは残酷なんです。
『風立ちぬ』について、「賛否というより僕自身がよく分からないので、いろんなみなさん、先生方のお話を伺いながら自分なりの映画の見方、この映画から何を受け取るかという答えを見つける」という毎日新聞記者がオタキング事務所に来訪。岡田斗司夫がこの記者のインタビューに答えながら『風立ちぬ』をふまえて、アニメの見方から創作の根源まであつく語った。
まず、21日夕刊に掲載されなかったインタビューのハイライトをお届けします。続いて、インタビューの全文も掲載。 最後までじっくりとお楽しみ下さい。
【インタビュー・ハイライト】
記者
(『風立ちぬ』で)堀越二郎が主人公なのは?(監督の宮崎駿)ご自身が飛行機好きで?堀越さん自身が好きなのだろうか?
岡田
たぶんいろんなスポンサーに囲まれながらアニメ作っている自分と堀越さんが重なったんでしょうね。作家性の映画だから、自分が投影できる対象を見つけたということですね。
あとは同年代にせず、若い頃の青春期を描いているから「自分にとってアニメというのはこういうものだった」と言う過去の話を描かなければいけないので、弟子の庵野くんに声をやらせると。庵野くんが一番自分ぽい生き方で、彼も社会に対して問題ありげなこと言っているけど、自分と同じでそれはまゆをしかめる程度。でも作家ってそういうもんじゃないのと。
例えばアーティスト。歌を作る人。あの人たちは「せつない恋」とかいろんなもの歌うけど、あれも一瞬思っているだけで、本当にそんな風に生きていたら人前で歌を歌うなんてチャラチャラした職業選ぶはずがないじゃないですか。そんな苦しい思いがあるんだったら人前で堂々と声にして歌えるはずがないんですよ。ということは、しょせん「ちらっと」思った程度ってこと。
それをすごい技術で歌うから僕らは癒される。おまえら庶民は何を期待しているんだと。本当にそんなこと思っていたら歌えるはずがないだろと。本当の恋をしている女性が恋の歌なんて歌えるかいと。創作の根源にまで至るようなことですけども。
記者
そう見ると、人を突き放す映画ですよね。
岡田
作家性が強いですから。でも決して僕らの生活と無関係ではないから。僕らも自分自身の中で小規模でさっき言ったことやっている訳ですから。だから美しいものを追ってしまうという人間の「罪」を描いた映画ですね。「罰」はないんですけど。
記者
後ろめたさの認識は?
岡田
あります。だから死んだ女の子が最後「免罪符」。
これは僕の持論なんですけど、あらゆる物事で感動するというのは罪悪感が解消されるからなんです。立派に生きた人の映画を見て僕らが感動するのは「そんな風に生きられない自分自身」を肯定されているような気がして感動するんです。
何か人間がポロポロ泣くというのは「もうそんな風になれない自分」を感じるから泣くんであって、だから子供は感動しないです。感動する話は大人にならないと分からないとか、物心ついて、10歳とか11歳くらいにならないと分からないというのは罪悪感がないからです。
罪悪感があって、もうすでにそんな自分はなれない、そういう風に頑張れないと思うからです。だから不幸な病気に耐えた人の手記とか読んで感動するのはそんな風になっても私はけなげに生きられない。その罪悪感で感動するんです。
『風立ちぬ』を見た僕らの感動は何かというと罪悪感。自分の中にも同じような自分勝手な二郎がいるから。だから感動するんです。自分勝手な奈緒子もいるんです。
そういう「恐ろしい映画」であるなあと思って2回目見に行って欲しいですね。1回目感動して、感動が何か分からなかった人はある種残酷で恐ろしくて美しい映画。美しいということは残酷なんです。
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以下は、これまでの、岡田斗司夫の『風立ちぬ』論です。*******************************************************************
時系列で読み直すと、その変遷がよくわかって興味深いです。
【レポート】『風立ちぬ』公開直前に岡田暴言「宮崎映画は大ハズレ!」
【レポート】『風立ちぬ』を観た岡田斗司夫が声優問題についてまさかの謝罪
【レポート】『風立ちぬ』は100点満点で98点!と岡田斗司夫
【レポート】宮崎駿の最高傑作『風立ちぬ』は「ひとでなしの恋」
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クラウドシティでは、こういった新聞や雑誌のインタビュー記事も、公開前からお楽しみ頂けます。
興味がある方はこちらをご覧ください。
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