FREEexを設立する前に誘われたとき、僕はきっぱり断っている。
「だって、俺の見たいようなアニメ、もういくらでもあるんだもん」
2013年9/10増刊号掲載
2013年9/10増刊号掲載

僕がガイナックスを結成した25年前と比べたら、もう充分に「オタクの天国」なのだ。
なのに今回の依頼を引き受けた理由は「面白いアニメを作ろう」という目的じゃないから。作品が目的ではなくて、「みんながアニメを作れるようにする」という環境が目的だ。
つまり「いい成績を取る」が目的じゃなくて、「誰もが勉強できる・勉強が好きになる学校を作る」が目的だ。
となると、アニメの作り方も根本的に変わってくる。従来の作り方は「芸術品の作り方」だ。優秀な人を集めて、誰も見たことがないイメージを具現化させる。
しかし今回やりたいのは「お祭り」に近い。集まった人なら誰でも参加できる。才能がある人やプロだけを優遇しない。
たとえば声優だって、中学生の女の子が「私がヒロインの声をやりたい!」と望んだら可能になる仕組みを考えないといけない。その子を使うことによってクオリティは下がるけど、なにか違う楽しみ方があるはずだ。
そう、これはアニメの「カラオケ」なのだ。
カラオケって上手い人の曲を聴くだけじゃつまらない。自分も歌えるし、上手いヘタ以外の「へぇ、お前ってこんな曲、好きなの?」というお楽しみがあるじゃないか。
カラオケの登場で「歌」は根本的に変わった。聴くモノから歌うモノに変わって、ヒットする曲だって「歌いたくなる曲」がランキングされる。
僕がもう一度アニメを作りたいと思ったのは、「面白いアニメが作りたいから」じゃないんだ。誰でもアニメが楽しめるような、カラオケできるようなアニメ環境を作りたい。
僕はこのコンセプトを「レゴみたいなアニメ」と名付けた。
レゴはパッケージのお手本通りに作れる。でもパーツを使って、他になにを作ろうと自由だ。もちろん本物そっくり、というわけにはいかない。だってレゴだもん。
同じく、僕の作りたい「みんなのアニメ」はレゴみたいに「お手本通り」のアニメが誰でも作れる。そのお手本第一弾が「ホリエモン・アニメ」だ。
レゴだから映像や音声パーツを好きに組み合わせて「自分だけのアニメ」も作れる。
もちろんエヴァやジブリと同じクオリティじゃない。だってレゴだからね。
でもレゴと同じくらい簡単に、小学生は小学生なりの、大人は大人なりのアニメが作れる。
これが「レゴみたいなアニメ」だ。
これ、やりたい!
興奮した僕は、渋谷の喫茶店にホリエモンを呼び出して「ゴメン、ちょっと目標を変えたい!」と頼み込み、仕組みを説明した。最初のコンセプトからかなり大幅な変更だ。
ホリエモンの返事は「全然OKですよ。でも問題があります」だった。
***********************************************************
岡田斗司夫のSNS『クラウドシティ』では、この連載をはじめ、すべての連載やインタビューが連載前から読めます。バックナンバーもそろっています。
価格:月額 882円 / 年額 10,500円
動画・音声・テキスト・電子書籍:岡田斗司夫コンテンツアーカイブ見放題
動画・音声・テキスト・電子書籍:岡田斗司夫コンテンツアーカイブ見放題