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2013年08月09日

【レポート】宮崎駿の最高傑作『風立ちぬ』は「ひとでなしの恋」

「宮崎駿監督の最高傑作ですね。
えーまさかここまでやれるとは正直思いませんでした。
何が最高傑作なのかというとですね、音も映像も素晴らしい。主人公たちの愛に涙しました。・・・なんて事はまるっきり思わないんですよ!」
いったい、岡田は何に感動したというのか!生放送以来の、動画初公開!! 

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かつて岡田は公言していた。宮崎駿の最高傑作は「On Your Mark」であると。
「On Your Mark」は短編ながら重層的に意味がこめられており、この作品こそ宮崎駿が天才たるゆえんだ、と喝破していた。

では、「風立ちぬ」は、どうだったのか。
これまでのように子供向けの作品ではないのは確かだ。ネットでは、何が面白いのかわからないという評判もよくみる。

20130808_02
岡田は指摘する。
この映画は、凡百の恋愛物語ではなく、歪んだ恋愛物語であり、貧困と差別のある世界であって、美しくも残酷な物語なのだ、と。

はたして岡田は「風立ちぬ」の何をみて、何を語ったのか。
ネタバレ有りのため非公開であった動画が、ついに公開!
括目せよ!
 
以下はそのハイライトである。 

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  この映画は「ひとでなしの恋」の話なんですね。

 主人公の堀越二郎、二郎君はですね、何度も何度も妹から「兄にいは薄情者です。」って言われる。つまり人間の感情を持ってないんですね。持ってないって言うほど極端じゃないけど、すごく薄い。そのくせ女性に対する自意識だけはすごい強いんです。

20130808_01 冒頭部、堀越二郎君の少年時代に空想の中で飛行機で飛ぶんですよ。で、その空想の中の飛行機で飛ぶシーンで、パーッと街中を駆け抜けるんですけど、その感じがですね、主人公が眼鏡をかけていて、裸眼では外が見えないというコンプレックスがあるんですけど、その自分が空を飛んで、人を上から見下す。見下すって程ひどくないですけど、そういう風な事をやってるんです。

 その映画の中に、空想の中に出てくる男たちは、一切主人公の事、飛行機の存在に気が付かないんです。ところが遊郭にいる女たちとか、空想の町の中にいる女の子たちは、一斉に、ワーっていう風に手を振ったり喜んだりするんですね。そういう可愛い女の子に良い顔をしたいっていう欲求が割と強い、と。

 これって多分、僕の様に見てないと気が付かないんですよ。普通に見てたらあんまり気が付かない。次に映画を見るときに注意してみてください。

 堀越二郎君はこの映画の中で、どんなシチュエーションの中にあっても、画面内、もしくは自分の視界の中に可愛いきれいな女の子が出てきたら、必ずチラッと見て、会釈するんですね。そういう演技をきちっと宮崎駿はポイント、ポイントで入れてるんですよ。

 だから、そのまるでその恋なんてしない朴念仁(ぼくねんじん)が、ついに恋をした。みたいにまわりから言われているんですけど、実はそうじゃなくて、すごくコンプレックスがあって、女の子によく見られたいという自意識は人並み以上にあるんだけど、それが出せない人間なんです。その男の子の恋愛の話なんですよ。
 
(中略)
 
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 で、思い出して欲しいんですけど、あの映画の中の試験飛行のシーンは、必ず墜落するんです。試験飛行っていう、墜落する、墜落する、墜落するんですけど、あの銀色の飛行機だけ墜落しないんです。

 それは何かって言うと、どの飛行機の最後にちょっと負荷をかけて、ギュッと旋回したり、速度を上げたりしたらバラバラになるんですけども、そうなろうとした瞬間に、二郎が山の方を見て風が吹くんですね。

 これはどういう意味かというと、その瞬間に菜穂子は死んでる訳ですね。本当にギリギリまで二郎に綺麗な姿を見せたから、その分菜穂子は寿命が縮んじゃって、多分一人ぼっちで山の中で死んだんだと思います。自分の命を与えたっていうメタファーですね。

 何であの最後の飛行機だけは綺麗に飛べたのかっていうと、歴史的な事実関係はもちろんあるけど別にして、映画の中の文法的に言うと、それは菜穂子が自分の命を与えたから。だから、飛行機はちゃんと最後まで飛べたんですね。

 これが、凡庸な普通な映画監督だったら、菜穂子が「はぁはぁはぁ」って死にそうになる時に、「二郎さん、二郎さん、あの日飛ばした紙飛行機」って言って、紙飛行機の想い出と、そして、その普通の試作機が、同時にダブらしか何かで(画面に)映り込んで、ギリギリで危機を回避して飛んで行って、で、ワーって言ってるその飛行場から、場面変わって寂れた療養所で医者が、「ご臨終です。」みたいな事を絶対やるんですけども、それをしないんですね。
 そんな事をしなくてもわかるやつはわかるし、俺はそんなお涙頂戴の映画作ってるつもりは無い!という風に宮崎駿が思ってる。

 そうやって、菜穂子が命を与えられたからこそ、二郎の飛行機は完成して、その結果、零戦、零式艦上戦闘機が生まれる。零式艦上戦闘機が生まれたからこそ、日本人は坂の上の雲を夢見て、そして無謀な第二次世界大戦に入っていって、そして国家を沈没させる様な、地獄の底へ行ってしまう…。(以下、略)
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ライター:徳島のダイスケ 




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