ニコニコ生放送で視聴者に「どんなアニメが見たいですか?」と問いかけて、ピクシブという画像投稿サイトに協力してもらってイメージボードを集める。集まったボードを並び替えて、ストーリーを組み立てる。これが「ホリエモン・アニメ」の作り方だ。
週刊アスキー2013年8/13・20・27合併号掲載
ネット時代っぽい「集合知でアニメを作る」という方法で、あっというまにピクシブにはたくさんのイラストやストーリーが集まった。プレゼンは大成功。
でも帰宅する途中から徐々に問題点が気になりだした。
ホリエモンが見たい・作りたいアニメとは「さえない中年男が宇宙開発をする」というストーリー。
ハリウッド映画だったら絶対に面白くなるネタだけど、日本のファンが見るアニメとしては微妙にわかりにくい。
ストーリーは資金集めにも関わってくる。
この作品はクラウドファンディング、つまり「一般の人から少額の出資を募って」アニメを作る。
彼らが「欲しい!」と思うアニメを作らないと出資が集まらない。ところが出資してもらおうと媚びて「いわゆるアニメファン」にウケそうな内容にすると、たぶん外す。
ストーリーは「意外だけど見たい!」という絶妙な領域を狙わないとダメだ。
対象も悩ましい。
深夜のアニメ見ているマニア層でいいのか?
国外の市場はどこまでアテにできるのか?
この十年、世界でヒットしているアニメを見たらわかるけど、やっぱりアニメって子ども向けだ。
日本では「大人も見れるアニメ」は受け入れられるけど、けっして世界的なメジャーにはなれない。
日本で大ヒットしたアニメは、数年後にハリウッドで中身やコンセプトだけパクられて実写化される。この繰り返しだ。
僕がガイナックスの社長をやっていた20年前と、なにも変わっていない。
僕がガイナックスの社長をやっていた20年前と、なにも変わっていない。
いろんなことを考えてると、ワケがわからなくなる。
だいたい、僕はもともとアニメを作っていた。アニメ会社の社長だった。
NHKで『ふしぎの海のナディア』というアニメも作ったし、劇場版で『オネアミスの翼』も作った。
なのにナディアのあと、すっぱりアニメ作りから足を洗った。理由は簡単。「作る理由がないから」だ。
僕がアニメを作ったのは「見たいアニメがない」という単純な理由。
70~80年代前半はロクなSFアニメがなくて、自分で作るしかなかった。だから大学で知り合った仲間を誘ってアニメ会社を作りアニメを作った。
しかし僕たちがアニメを作っている間に、みるみる業界は変化した。
マニアックな意見を取り入れ、映像もすごく進化した。アニメの予算だって天井知らずに上がった。
もう僕は「見たいアニメ」を自分で作る必要がなくなった。僕は自分で作ったアニメスタジオ・ガイナックスをやめた。
後にガイナックスは『新世紀エヴァンゲリオン』でメガヒットを飛ばし、僕は自分の考えが正しかったことを確認した。
もう僕が自分で作らなくとも、面白いSFアニメはいくらでも生まれてくる。
それから20年、なぜ僕はもう一度アニメを作ろうと思ったのか?