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2013年06月10日

岡田斗司夫の近未来日記 258回「ノートルダムの鐘」1

img-2京都に来る人の目的は「京都」だ。寺院巡りをしても、別に仏教や神道を信じている観光客などほとんどいない。自分の町のお寺や神社には行かず、「京都だから」という理由で神社仏閣に行くような、ちょっと軽薄な人たちがありがたがる街。それが京都でありパリだ。
 もちろん僕もそんな軽薄な人のひとりだから京都もパリも大好きである。キリストの神は信じてないけど中世の建築技術には畏怖を覚える。

週刊アスキー 2013年6/18号
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 フランスで三箇所、ノートルダム聖堂に行った。「え?ノートルダムってパリじゃなかったっけ?」と思ったら大間違い。実はヨーロッパ中にノートルダムは存在する。 

 「ノートル=我々の」「ダム=貴婦人」という意味で、要するに聖母マリアをあがめる人たちの寺院なんだ。ちなみに世界滅亡大予言でおなじみのノストラダムスはノートルダムのラテン語読みだ。

 パリのノートルダム大聖堂は、とにかく壮大だ。キリスト教の聖堂はどれも天井が呆れるほど高いけど、パリのは本当に首が疲れるほど高い。ローマ時代に神殿があった場所に200年がかりで建築されたゴシック建築の傑作はユネスコの世界遺産。ユーゴーの小説の舞台だし、ディズニーなど何度も映画化されている。

 だから世界中から観光客が集まり、はっきり言って騒々しい。建物は荘厳で超カッコいいけど、入り口には行列が果てしなく伸びている。正面にはイベントや観光撮影用のひな壇が建てっぱなし。なんか「観光地!」という雰囲気で、関西出身の僕はなぜか京都を思い出してしまった。

 京都に来る人の目的は「京都」だ。寺院巡りをしても、別に仏教や神道を信じている観光客などほとんどいない。自分の町のお寺や神社には行かず、「京都だから」という理由で神社仏閣に行くような、ちょっと軽薄な人たちがありがたがる街。それが京都でありパリだ。

 もちろん僕もそんな軽薄な人のひとりだから京都もパリも大好きである。キリストの神は信じてないけど中世の建築技術には畏怖を覚える。パリのノートルダム大聖堂のそこら中で写真を撮って、お上りさん丸出しに楽しんだ。

 さて、次に行ったのがフランス東部。パリからTGVで40分の田舎町ランスだ。日本人にはなじみのないランスのノートルダム聖堂だけど、「歴代のフランス国王が戴冠式を行った場所」としてフランス人なら誰でも知ってる。 聖堂内にはジャンヌ・ダルクも祭られていた。時に13世紀、ジャンヌ・ダルクはイングランド軍と戦いまくり聖地・ランスへシャルル7世を連れて行った。ついにノートルダム聖堂で戴冠式を成功させ、シャルル7世を正式なフランス王としたジャンヌは、フランスの英雄でありキリスト教の聖人でもある。

 そんな曰くある土地と寺院だから、これはもうフランス中からキリスト教徒、それも女性信者が集まる。なんというか「本気度」が高い。パリの観光地化されたノートルダム寺院とは違って、訪れる人たちの大部分がまっとうなカソリック信者・敬虔なキリスト教徒だ。だからもう、近所のお土産屋さんの風景もパリと大違い。全力で「ビバ!キリスト様!」を訴えてくる。

 フランスは農業大国、つまり国土のほとんどが田舎で、国民の大多数が田舎者だ。だからランス大聖堂の近くにあるH&Mを見て大感動して、写真を撮ったりしている。スタバを見つけて喜ぶ島根の高校生とメンタリティは同じだ。

 ノートルダム話、あと一週続くよ。


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