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2013年06月03日

岡田斗司夫の未来日記 257回「パリのお菓子」

img どのパン屋も熱心に働くオッサンやお姉さんが、汚れてるけど不潔じゃないエプロンで対応してくれる。フランスの店員は無愛想、というのは定説だけどパン屋は違うよ。というか、自分で作った物を売ってると、人は無愛想になんかなれないんだと思う。
週刊アスキー2013年6/11号

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 前回に続いて、フランスに行ってきた話。他人の旅行話って退屈かも知れないけど、まぁ聞いてよね。
 
 パリの目的はエッフェル塔に登ることと、あとは美味しそうなパン屋に行くことだ。

 パリのパン屋は日本のパン屋よりずっとお菓子屋さんに近い。というか、どのパン屋も同じオーブンでケーキやタルトを作っている。それがまた、カラフルで可愛くて美味しそうだ。

 過去の旅行では、あまり時間がなかったのでショーケースから覗くだけだった。でも今回は時間に余裕があるので、オープンカフェで食べたりお弁当代わりに買って歩きながら食べてみた。 

 どのパン屋も熱心に働くオッサンやお姉さんが、汚れてるけど不潔じゃないエプロンで対応してくれる。フランスの店員は無愛想、というのは定説だけどパン屋は違うよ。というか、自分で作った物を売ってると、人は無愛想になんかなれないんだと思う。

 ショーケースにはピザっぽいのとかお総菜パンと並んで、なんだかド派手なお菓子が並んでいる。説明書きがフランス語でおまけに手描きだから、まるで読めない。しかたなく雰囲気で買ってみる。

 結論から言うと、「日本のお菓子のレベルは高い。でも見せ方のレベルはパリの方が上」ということかな。予想はしていたんだけど、やっぱパリのお菓子、というか「パン屋が作るケーキ」は味が単調だ。タルト生地やスポンジの味が大きくて、そこにクリームや砂糖コーティングの味が拡がる。

 ただし、牛乳や卵の品質はいい。だから生クリームもカスタードも素材の味がハンパない。だから悪くはないんだけど、日本の繊細なお菓子を食べ慣れてしまうと、特に昨今のコンビニスイーツを経験してしまうと、やっぱ味が古くさいんだよね。

「パリのスイーツ、たいしたことないじゃん」と思ってしまう。味だけなら。 

 ところが、見せ方になるとパリのお菓子が圧勝。とにかくカラフルかつ「楽しそう」だ。

 日本のお菓子の色は保守的だ。どうしても「美味しそう」な色味になってしまう。お菓子を買う人がそこまでの「見た目」よりもやっぱり味中心で選んでいるからなんだろうね。

 逆にパリのお菓子は「どんな色で攻めるか」という発想。だから紫とかグリーンなど想定外のメレンゲやケーキにでくわす。

 タルトの上に乗っけるフルーツも「とりあえず山盛りカラフルに」だから、味よりも見た目重視になる。

 するとお菓子ごとのアタリハズレが大きくなって、食べ歩くのが楽しくなってしまった。

 繰り返すけど、「味の平均値」としては日本のお菓子の方がずっと上だよ。美味しいものを安く手軽に食べたいなら、日本は理想郷だと思う。

 でもパリのカフェやテイクアウトで、僕は「うわ~、この味ないわ~」とか笑いながら、お菓子をパクパク食べちゃったんだよね。美味しいより「楽しい」が優先されることもある。そういうことだ。

<<前回、「エッフェル塔」はこちら 




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