FREEexなう。

2013年03月17日

【悩みのるつぼ】なぜ死んではいけない? 回答編

るつぼ

「悩みのるつぼ」、今回はどうして人は死んではいけないのかずっと考えてきた18歳の女性から相談です。

「生きたくても生きられない人がいるのに贅沢よ」と言われても、自分の生死は人と比べる問題?と思います。
「死ぬ気になれば何だってできる!」と励まされても、死ぬ気になったら死ぬことしかできないと私は思います。

 なぜ死んではいけないのでしょうか。
 

***************************** 相談 ****************************** 


 18歳の女性です。どうして人は死んではいけないのですか。ずっと考えてきました。

 「自殺はだめだ」といいますが、なぜだめなのかを語る人はあまりいません。
 周りの人が悲しむからですか。それなら、家族も友人もいない孤独な人は死んでもよいのでしょうか。

 私は、机に死ねと書かれたり、教科書を捨てられたり、メガネを折り曲げられたり……といじめを受けたことがあります。
「デブで2倍の面積取るんだから学費2倍払えよ」とも言われました。
 毎日「今日はどんなことをされるんだろう」と考えて胸がナイフでえぐられるように痛み、一日が終わり「今日はイヤなことは2つだけ、まだマシなほうだな」と思い、床につきます。
 そんな日々で、死ぬ恐怖より生きる恐怖が上回り、死ぬことを真剣に考えました。

 ビルから飛び降りようともしましたが、勇気がなく、とぼとぼと家に帰りました。
 今はそれなりに立ち直っていますが、死にたい人の気持ちが分からんわけではないのです。
「生きたくても生きられない人がいるのに贅沢よ」と言われても、自分の生死は人と比べる問題?と思います。
「死ぬ気になれば何だってできる!」と励まされても、死ぬ気になったら死ぬことしかできないと私は思います。

 なぜ死んではいけないのでしょうか。
 答えはない問いなのかもしれませんが、ご意見を伺いたいです。


***************************** 回答****************************** 


 私には「死にたい」と思った経験がありません。
 でも自分が犠牲になれば十~百人程度の人が助かる、という確証があれば「じゃあ仕方ない。死ぬかぁ」とイヤイヤながら決心すると思います。
 その時に「死んじゃダメ!」って止められても「私の命だから、どう使おうと私の勝手」と答えるでしょう。

 この例を「犠牲死」と呼びましょう。犠牲死をダメという人はあんがい少ない。「ひとりの命を犠牲にしても守るべきものがある。それはより多くの、または幼い命だ」という主張であり、死ぬことによって逆に「命の尊さ」を訴えるからです。
 残された人たちも「この世界は生きるに価する,素晴らしい世界だ」と思えるので、死んだ人間やその家族・関係者以外はみんなハッピーになれる、「ベストじゃないけど、ベターな回答」です。

 でも、あなたが本当に聞きたいのは犠牲死ではなく自殺です。
 自殺とは「この世の中に生きる意味や価値がない、ということを、私の命を投げ捨てることで証明してやろう」という主張です。
 なので死ぬことによって「世界の無意味さ」を訴えてしまう。

 こんなことされたら、生き残った側の人はすっごく迷惑です。
「いや、この世は生きる価値があるんだ」と反論したくても、相手はもう死んじゃってるんですから、とんでもなく気まずい気分がいつまでも晴れません。

 自分とは縁もゆかりもない人が自殺した時に感じる不安や不快感の本質は、この「究極のノーサイン」です。
 自殺とは、残された人全員にとっては「呪い」なんです。

 だから社会は自殺を許してはいけない。自殺したいほど辛い人には本当に申し訳ないけど、それを許すと社会の基盤が狂ってしまう。日常までが呪われてしまうから。

 これが私の答えです。
「死にたい」と真剣に悩んだことのない私には、以上のような「論理的な回答」が限度です。

 でも、あなたは自殺したいと毎日思うような日々を生き抜きました。私よりも、ずっと突き詰めた言葉が出せるはず。
 あなたにはその問いに答える権利がある。きっとあなたの言葉なら、私より多くの命を救える。

 ここから先はあなたの担当です。「それでも生きてるのが辛い。死んでもいいでしょ?」という問いに答えられるのは、あなたです。
 私からのバトン、受け取ってください。
 これから生涯考え、答えてあげてください。 


2013年3月16日 朝日新聞掲載「悩みのるつぼより」


<<前回の相談「恋の思いを断ち切るには」 はこちら 


オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)
オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書) [新書]




コメント一覧(新規コメント投稿は、上のFacebookソーシャルプラグインをお使いください)