「それサンデル教授の講義で聴いた!なんのことかわかんなかったやつだ!モビルアーマーだ、ザクレロだ!」
「・・・やっぱり違います」
週間アスキー4/2・9合併号(3月19日発売)
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「ギリシアから哲学ははじまり、その合理性はフランスでデカルトが極めました。でもドイツのカントで哲学は複雑化します」
「ジオンが次々と繰り出す新兵器モビルスーツに、ついに地球連邦もガンダムで対抗した、みたいなもの?」
「・・・ちょっと違います。カントの『定言命法』やヘーゲルの観念論展開から,急に素人には難しくなる」
「それサンデル教授の講義で聴いた!なんのことかわかんなかったやつだ!モビルアーマーだ、ザクレロだ!」
「・・・やっぱり違います」
講義してくれるのは京都・某大学哲学科の女子大生。僕は哲学や哲学史に関してまったくの素人同然だし、個人授業してくれるのが現役女子大生だから面白さ倍増だ。
彼女との縁は、大阪でのイベントの感想をメールしてくれたのが始まり。「フランス哲学(リクール)と現象学をやってます」という自己紹介に「それ、なんですか?」と聞いたら、いきなり「ヘーゲルの弁証法やハイデガーの現存在のような概念がリクールにはなく(中略)リクールが影響を受けた範囲=フッサールの現象学を勉強しています。サルトル・レヴィナス・デリダなど他のフランス哲学者を(後略)」という超長文が帰ってきた。
これは面白そうだ。専門分野に関しては高名な専門家よりもマニアやオタクに聞くのが一番面白い。
大阪出張のついでに、難波のカフェで待ち合わせて「個人授業」をしてもらった。条件は「彼女が90分教えたら、僕も彼女の質問に30分答える」。
そこで聞いた現代哲学は、やっぱり専門書よりずっと面白かった。
彼女の知識が、というより「僕のどんなツッコミにもなんとか答えようとする彼女の対応」込みの面白さだ。まるで哲学マンザイのよう。
たとえば僕の「現代フランス哲学はあるのに、なぜ現代韓国哲学や現代中国哲学はないの?」という問いには、けっして教授クラスからは聞けない、現役の学生でしか口に出せない「日本哲学界の悩みとホンネ」が聞けた。
気をよくした僕は、今度は東大大学院で「国際関係学における最適意志決定の研究」をしている博士課程の女子大生に吉祥寺のカフェで話を聞いた。
パソコンを開いた彼女はいきなりパワポで特製プレゼンをはじめた。彼女との交換条件はというと、「HUNTER×HUNTERの面白さを岡田斗司夫が説明する」だ。これまた良い取引。
パソコンを開いた彼女はいきなりパワポで特製プレゼンをはじめた。彼女との交換条件はというと、「HUNTER×HUNTERの面白さを岡田斗司夫が説明する」だ。これまた良い取引。
女子大生に家庭教師してもらって、お互いに有益な勉強ができる!これ、すごく面白い。
僕みたいな素人が本職の研究者や教授から話を聞いてもムダだ。専門家は自分が学問する理由に迷いがなさすぎる。
「なぜ哲学に興味を持ったの?」と聞いた時、すこし考えて彼女は答えた。
「生まれ育った島にはなんにもなかった。海と山とスカパーしかなかったら、子どもはオタクになるんです!」
すごいでしょ? というわけで、岡田斗司夫に自分の専門ジャンルを教えてあげる女子大生、募集中です。あなたのキリスト教とか確率論とか高分子化学の知識と、僕の時間を交換しましょう!
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