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2013年01月03日

【代表日記】永野護監督作品『花の詩女ゴティックメード』を見たよ

クラウドシティ『花の詩女ゴティックメード』のヘッドライナー(ロボット搭乗者)の動きを見たら、はじめて『ファイブスター物語』の騎士たちの「走る表現」が納得できた。彼らが走るときは、地面を蹴る瞬間だけ見えるんだ。つまり「空気抵抗で減速→地面を蹴って加速」という合間しか人の目には捉えられない。だから、永野マンガの「あの描き方」で正しいんだ。

公開直後に鑑賞した岡田斗司夫の感想を、クラウドシティから全文掲載いたします。 


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<<<2012年11月6日 クラウドシティ 岡田斗司夫日記より転載>>>

 昨日、新宿の角川シネマで見てきたよ。
 結論から言うと、「僕には面白かった!予想の6倍、面白かった!」です。

 なにより、永野護のマンガがやっと理解できた、と思えた。
 なぜ彼のマンガは、キャラの動きが「漫画的な自然」でないのか?
 いしかわじゅん的に言うと「マンガとして、絵としてはヘタ」ということになるんだろうけど、その解釈にはいままでずっと納得できてなかった。
 なにか「普通のマンガとは違うこと」を描こうとしてるらしい、というのはわかるんだけど、それがなにか具体的に見えなかった。
 
 でも、『花の詩女ゴティックメード』を見たらやっとわかった。
 永野護にとって世界は、少なくとも彼の作品世界はあのように「見えて」いるんだ。
 くどいほど自然や風土、荒野や草原の風景を描かなければ、彼の描きたい「世界」が伝わらない。
 自然描写と朽ち果てたメカと、浮遊する乗り物を同一フレームに描かないと、「永野の世界」は完成しない。
 それはガンダムでもエヴァでもない、もっとオリジナリティ感のある「世界観」が表現されてないとダメ。
 既存のパーツ(いかにもありそうな戦車や無線機やビルや缶コーヒー)を並べて、そこに異形のロボットを置く、というガンダム・エヴァ的な手法では、永野護の作品にはならない。

 キャラの演技の自然さも、ものすごい。
 詩女を守る王子の横顔で、左目だけがヒクつくカットがある。その描写がすごく自然。永野マンガでもこの描写は見かけるけど、あのように「演技」させたかったのか、とやっとわかった。
 キャラも全身で演技させている。腕だけを動かさずに、腰から動いてる。もうリミテッドアニメじゃないよ、これは(笑)
 坂を登るシーンでは、ちゃんと足の裏に荷重がかかってるし、上を見上げながら歩いてる。これらすべてが「アニメ的な演技」じゃなくて、なんというか「足運び」を見てる感じなんだよね。

 こういう自然な描写がちゃんとしてるからこそ、「見せたい動き」が際立つ。
 『花の詩女ゴティックメード』のヘッドライナー(ロボット搭乗者)の動きを見たら、はじめて『ファイブスター物語』の騎士たちの「走る表現」が納得できた。
 彼らが走るときは、地面を蹴る瞬間だけ見えるんだ。
 つまり「空気抵抗で減速→地面を蹴って加速」という合間しか人の目には捉えられない。だから、永野マンガの「あの描き方」で正しいんだ。

 『花の詩女ゴティックメード』のロボットの動きは、本当にタメと瞬動だけでできている。あれを見ないと『ファイブスター物語』のロボットたちの描写が、なぜ「決めポーズ」だけでできているのか理解できない。
 永野ロボットは、決めとタメ以外の姿勢は瞬間的に動く最中にしか見えないんだ。それは肉食獣の動きであって、殺人機械というのはそういうものなんだ。
 起動する直前に、全身の関節がニュートラル位置に移動する。それはまるで「止まっている剥製の肉食獣」に命が吹き込まれるのを見ているような気がした。
 以後、僕は『ファイブスター物語』を見るときには、このアニメの動きを前提に見るだろう。それが「より面白い解釈」だとわかったからには、そうせずにはいられないからね。

 というのが、僕の初見の感想。
 たぶん僕はDVDも買う。

 あとね、「これ、すごくいいな」と思った理由は「頑張って夫婦で作ったアニメだから」というのもあるよ(笑)
 だって画面に出てくる絵面の大半が、夫・永野護の描いた絵なんだ。
 聞こえてくる音の、歌を含めて大半が、ヨメ・永野繁代(川村万梨阿)の声なんだ。

 これ、すごいと思わない?
 究極の「ハウスムービー」なんだよ!
 頑張ってる夫婦の定食屋を応援したいのと同じように、僕はこの夫婦の作品を応援したい、と強く思いました。

 そういうわけで、みんな劇場アニメ『花の詩女ゴティックメード』を見よう!

 


『花の詩女ゴティックメード』ー上映情報ー
 http://www.kadokawa-pictures.jp/official/gothickmaid/theater.shtml

2月9日より、イオンシネマ全サイトにて上映が決定!(公式サイトより
 




otakingex at 20:00コメント│ この記事をクリップ!
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