ナルナル詐欺は青春の若者や青春をこじらせた元若者がかかる病気。困ったことに本人たちも詐欺だとは思わず、本気で「○○になる」と思い込んでいるのが特徴です。
朝日新聞連載の人気人生相談「悩みのるつぼ」が、新書として幻冬社から発売されます。
タイトルは『オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より』。
発売は9月28日(金)。amazonや書店で絶賛予約受付中です。
これを記念して公式ブログでは、「悩みのるつぼ」特集を開催します。
誰しも経験がある青春時代の勘違い。
的確にネーミングされてしまうと「確かに!」と気づかされてしまいますね。。
>保護者なら夢なんか応援しちゃいけません。応援すべきは「目標」です。
納得しながらも、ちょっとビターな気分になる回答でもあります。
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漫画家になりたい孫 2011/05/07 朝日新聞 朝刊
○相談者 60代 既婚
60代の女性です。
県立の進学校に通う高校1年の男子の孫は将来漫画家になりたいと、この1年、授業もうわの空らしいのです。入学時は350人中20番台の成績がどんどん下がりました。
教師の両親は高校時代は勉強させ、大学に入れて社会に送り出すのが親の勤めといい、孫は卒業したら大学へ行かずにアシスタントになり、漫画家の道に進みたい、帰宅後は描かせてほしいといいます。
スポーツ部から帰り、夜に漫画を書けば勉強はおろそかになりますが、大学に行かないからテストで良い点を取る必要がないといい、両親が自分の漫画家の夢を認めてくれないと、バトルをくり返しています。
祖母としては、孫の夢をかなえてあげたいが漫画家で食べていけるなどとうてい無理だと思います。貧乏でもいいから自分の思う道を進みたいという孫は何を言っても聞く耳を持たず、自分の描く漫画に自信を持っているようです。
担任の先生が、進学校に通っているのだから大学に行きながら描いたらどうだとアドバイスしても、「そんな回り道をしたらチャンスを逃す」。両親は大学で視野を広げたり、良い友をつくり、自分の人生の幅を広げて欲しいといいます。漫画科もある大学も考えているようです。
祖母としては、孫の気持ちも両親の思いも良くわかり、悩んでおります。
どう孫にアドバイスをしたらいいのでしょう。
○回答者 岡田斗司夫
おばあちゃん、「ナルナル詐欺」に騙されてますね。
ナルナル詐欺は青春の若者や青春をこじらせた元若者がかかる病気。困ったことに本人たちも詐欺だとは思わず、本気で「○○になる」と思い込んでいるのが特徴です。
なぜ詐欺だと言い切れるのか?孫は「やりたいことを我慢」して努力してないでしょう?「夢」を勉強しないことの言い訳に使っているだけ。
なにも我慢せず、単に夢想・逃避するのが「夢」です。保護者なら夢なんか応援しちゃいけません。応援すべきは「目標」です。やりたいことを我慢して日々積み上げて到達を目指すことです。
不幸にも孫は「ナルナル詐欺」病にかかってしまいました。正攻法で説得してもムダです。とりあえずこの一年は捨てるつもりで,以下のマニュアルを実行してください。
1.孫に「マンガ家になるという目標を応援する」「そのために一年間、鬼のスパルタ家族になる」と宣言する。
マンガ家になるには、マンガを描くしかありません。
ノートの端に絵を描いても、それはマンガではありません。ちゃんとコマを割ってセリフを描いてるか、毎日どれぐらい描いてるのか進行具合をチェックしてください。
2.運動部を辞めさせて、自由時間はすべてマンガを描かせる。毎月16ページの短編を完成させて、東京の出版社に持ち込みに行かせる。
マンガ家になるには、編集部に持ち込むしかありません。部屋で描いてるのは落書きです。持ち込んだ原稿のみがマンガです。
3.期間は一年。ダメなら普通の大学に行く。
いま孫は高校二年ですよね?これから一年間を以上の努力で棒に振ってもまだ間に合います。一年やっても編集さんから注文が来なければ、孫には「10代でデビューする才能」がありません。長期戦略に切り替えるべき。
すなわち「マトモに就職して、仕事しながらマンガ描いて持ち込み続ける」という戦略です。
中途半端にマンガ学科のある大学や学校に行かせてもムダ。「10代でデビューする才能」はないんですから。
以上、1~3を孫や家族に宣言してみてください。今よりも問題点が明確になり話し合いも進むと思います。
僕自身も、お孫さんと同じく10代を「SF作家にナルナル詐欺」で過ごしました。あの頃を思い出すと死にたくなるほど恥ずかしい。
孫を早くその渦中から救ってあげてください。