今野 『逆シャア』は、ガンダム史上、最高の傑作ですね。
岡田 なぜかアニメ関係者の間で、『逆シャア』の評価が高いんですよ。
今野敏さんとの対談「クリエイターよ、メッセージはあるか」 の冒頭の会話です。
TV Brossに連載されていたコラム「オタクの迷い道」#50 たかがガンダムの話をするだけで… を読むと、対談では掲載されていない部分で、かなり熱い語りが展開されたらしいことがうかがえます。
どんなすごさだったのか、興味深々。
今だったら対談のノーカット音源をお届けできたのに、と思うと、返す返すも残念です(笑)
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#50 たかがガンダムの話をするだけで…
オタクの話にはついていけない、とよく言われる。岡田 なぜかアニメ関係者の間で、『逆シャア』の評価が高いんですよ。
今野敏さんとの対談「クリエイターよ、メッセージはあるか」 の冒頭の会話です。
TV Brossに連載されていたコラム「オタクの迷い道」#50 たかがガンダムの話をするだけで… を読むと、対談では掲載されていない部分で、かなり熱い語りが展開されたらしいことがうかがえます。
どんなすごさだったのか、興味深々。
今だったら対談のノーカット音源をお届けできたのに、と思うと、返す返すも残念です(笑)
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#50 たかがガンダムの話をするだけで…
それは「テクニカルターム」と「ジャーゴン」だらけの会話だからだ。
「テクニカル・ターム」とは技術的専門熟語だ。
例えば「必要なデータを通信回線からとりよせる」ことを「ダウンロードする」という。これがテクニカル・タームだ。
同じ意味を「通信でデータを落とす」と言ったりもする。
別に大切な書類を、どこかに落としたわけではない。
ダウンロードの「ダウン」という語感から派生 したのが「落とす」という隠語、すなわちジャーゴンなのだ。
もちろん、パソコン通信をしない人間には何のことかわからない。
ジャーゴンとは、こんな専門家 同士が使う隠語・符丁のことだ。
先日、作家の今野敏さんと対談したら、編集者が目を丸くした。
「何の話をしてるのか、さっぱりわからない」と言うのだ。
僕たちはフツーの「ガンダム」の話をしているつもりだった。
しかしそれは「ジャーゴン」だらけの会話だったのである。
ガンダムにも種類がある。
『機動戦士ガンダム』『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士Vガンダム』『機動戦士ガンダムW(ウイング)』・・・。
それぞれの作品はゼータ、ダブルゼータ、逆シャアなど略称で呼ぶ。
こ れもジャーゴン。
『機動戦士ガンダム』という作品は、シリーズ最初の作品なので「ファースト」と呼んだり、ガンダムに何もつかない、という意味で「無印」と呼んだりもする。これまたジャーゴン。
さて複雑なのは、ガンダムという主役ロボットに対する呼び方だ。ファーストに登場する主役ロボットは、作品内でガンダムと呼ばれている。
しかし続編の ゼータガンダムでも、主役メカは作品内で普通、ガンダムと呼ばれている。正確にはガンダム・マーク2。
ではゼータガンダムとは何かというと、作品内で開発 中のロボットで、作品の後半でようやく登場する。
ダブルゼータでも、やはり作品内ではガンダムと呼ばれている。
だからガンダム世界のロボットを正確に特定 したい場合は、形式番号で表現する。
ファーストのガンダムは、RX-78。
敵ロボットのザクはMS-06。
ビデオ版のガンダムはRX-78GP01。
おまけに複雑な世界設定を持つガンダムでは、何十年にもわたる架空の歴史が存在する。
例えば最初の『機動戦士ガンダム』は、ジオン独立戦争、通称「一年 戦争」の後半、半年間の出来事。
ゼータではグリプス戦争、ダブルゼータはアクシズ戦争が舞台だ。
この歴史が完全に頭に入っているオタクたちは、「グリプス 戦争では、まだハンマ・ハンマは実戦投入されていない」なんて話し合う。
まるでお爺ちゃんの太平洋戦争話みたいだ。
これらのジャーゴンが自由自在に使えたとき、君は「一人前のオタク」という烙印を押されるのである。
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TV Bross連載コラム 「オタクの迷い道」より
#50 たかがガンダムの話をするだけで…
オタクの迷い道・完全版 電子書籍版(PDF版or ePub版)
オタクの迷い道単行本(絶版)
ライター のぞき見のミホコ