2012年5月26日発売の、CIRCUS別冊「語れ!機動戦士ガンダム 」: GUNDAM SPECIAL INTERVIEW のノーカット版を音声と共にお届けします。
雑誌の文面からでは、なかなか伝わってこない生の部分が存分に楽しめます。
他所では聴けない、笑いあり、涙(?)ありのネタ満載! 必聴ですぞ!
―――今回ちょっと、ガンダムとオタクというところで、というテーマが一つありまして。岡田さんの本を読ませて頂きまして。
第一世代、第二世代、第三世代、最近第四世代もいるという中で、第二世代を産んだ契機になったのが、ガンダムかな、と思うんですね。
その中で一つ、この「オタクはすでに死んでいる」を読みまして、思った事が、オタク文化が大人になっても子供時代の趣味をやめないことと、それからお小遣いの話がありましたけど、その大人になっても子供の趣味をやめないというところが、なにかその、ずっと子ども時代みんなガンダムを見てたんですけど、それまでアニメが子供のものだったのが、引き続き、ガンダムを通じてずっと大人になってもガンダムが好きと、いうところで、大人のガンダムという文化がもう今現前とあって、まあ、それがひとつやっぱりガンダムがオタク文化を産んだ一つだったなと思います。
それと、お小遣いという話が、趣味の自己決定権というところで、小学生ながら、まー僕も小学生ながら、お金持ってガンプラ買いにいってというのがあって、そういう点においても、ガンダムはその契機だったかなという風に思ってまして、その辺を少しちょっと解説して頂けると。はい。
ガンダムがその、他の、それまでのアニメと何が違って、ガンダム以後を、オタク文化がどのように違ってしまったのかというと、ガンダム以前のものは不完全だったんですよ。
不完全というのかな。
例えば、宇宙戦艦ヤマトという作品がある。科学忍者隊ガッチャマンという作品がある。
いろいろな作品があってですね、それなりに大人っぽい部分もあるんですよ。
でも、宇宙戦艦ヤマトで戦争を語るのは無理なんですね。
それはなんでかっていうと、なんだろ、作り手側の目線が、やっぱ子供に対して。
で、大人としてはここまでのニュアンスを込めて作るんだけども、あくまで子供向けっていうのは崩してないんですね。
で、ガンダムはですね、初めて、制作者自身が、これのターゲットはハイティーンだと、いわゆる十代中半から後半くらいの若者だというふうにやったので、ガンダムで戦争を語ってしまうことって、できないことはないんですよ。
すれすれなんですけども。
それが大きい違い。
宇宙戦艦ヤマトで戦争を語ることは、無理なんです。
戦争の一側面を語る事はできるんだけども、戦争を語ることはすごく難しい。
だから、卒業することができた。逆に言えば。
宇宙戦艦ヤマトがどんなに好きでも、マジンガーZやウルトラマンや仮面ライダーというオタク文化ですね、それがどんなに好きでも、いずれは子供っぽい限界が見えるんですね。
だから卒業できると。
しかし、ガンダム以降のオタク作品というのは、下手に完成度が高いから、卒業できなくなってしまった。魔力を持ってしまった。
これが後に富野由悠季監督自体が、俺の責任なのかというふうに仰ってるところですね。
で、オタク学入門の、新潮社版のですね文庫で、僕、富野さんと後で対談したんですけども、富野さん自身はガンダムで戦争なんか語られるの嫌だって言ってましたね。
あれは別に俺としては、アニメと、ロボットアニメとして作ったんだと。
で、そんなもんで戦争を語るな、と。
そんなオタクがいるから日本はダメになったんだ、っていうふうに富野さん仰ってた。
僕はそれに対しても、堂々と反論した。
どういうふうに反論したのかっていうと、じゃ、ガンダム見ない若者はどうなっていますか?
彼ら戦争を語っていますか?
語ってないですよね? と。
富野さんの仰るように、ガンダムを見ずに、ちゃんと本を読んで歴史を勉強している正しい青年が100点の青年としよう。
ガンダムを見て戦争を語る青年、80点じゃないですか。
ガンダムを見てない奴は60点以下ですよ、と。
富野さんは80点を批判する余りに、100点じゃないと批判する余りに、60点と80点の比較を忘れている、と。
ガンダム見た奴を褒めましょうよ。
という風に言ったんですよ。
そしたら富野さん、なんかこう憤懣やるかたないと。(笑)
というようなことがあったんです。
あ、ガンダムの功罪というのは、罪の部分では、ガンダムは完成度が高いので、そこから卒業できない。
つまり富野さんのいう所の、全てガンダムの中でみんな語ってしまう。
なんでも戦争っていうのをガンダムのアナロジーでしか理解できないような、ダメなオタクが増えた。
というのも言えるんですけども、罪の部分では。
功の部分では、それでもそれは、現代の若者にしちゃあ、十分戦争を語っている奴らだよ。
ガンダムを見てないダメな人に比べれば、どんなにましなことか、っていうのが僕の考え方です。
なんか今、若手の知識人とかと話したら、全員ガンダムとかエヴァ見てますね。
それがもう共通の、なんていうのかな、教養になっちゃってるんですよ。
それはある時代の文化人の人にしてみれば、司馬遼太郎とかですね、日本の歴史そのものが彼らにとっての文化的バックグラウンドであり、それを使って話すと。
アメリカ文化の中でもヨーロッパ文化にコンプレックスがある人はやっぱりシェイクスピアであるとか、イタリア歌劇とかオペラとかを語らないと自分たちの文化の仲間入りができないっていうのがあるじゃない?
同じように日本では、ガンダムとかエヴァということに関して、ある程度大人っぽい、評論ぽい語りができるというのが、少なくともたぶん40歳以下の言論人全員の共通フォーマットになっちゃってるんで。
だから、大人のガンダムというよりは、もう今たぶん富野さん聞いたら「情けない」って言うと思うんですけども、ガンダムは大人の教養の一部であって、若い人はもうガンダムっていうのを、逆に言えばケロロ軍曹とかプラモでしか知らない。そうじゃなくて、お前達本物のガンダムを知れよっていうふうに大人たちは言わなきゃいけないようになっちゃってるんですね。
だからたぶん、今度またお台場ですか?ガンダムできるんですよね。
そこに見に行く時に、たぶんいろいろな階層差が表れるんですね。
例えば。ディズニーランド行く時に、ウォルトディズニーの映画を一本も見ずにミッキー素敵!って言って行く人と、ディズニーの映画結構見てるよって言う人と、ミッキーはモノクロ時代から見てると、ディズニーの歴史的遺産ていうのはなんなのかと語れる人とやっぱ三層とか四層、層があるんですね。
で、たぶんそのお台場のガンダムも、もう何層もの人が行くことになると思うんですよ。
―――なりますね。それで今回ちょうどその「語れ!機動戦士ガンダム」っていうタイトルにしようと思ってて、最初の序文のところで、ガンダムは男たちの共通言語であるっていうふうに出してるんですね。僕のキャッチなんですけど。
で、今日昼前にあった前田建設っていう所でファンタジー事業部っていうのがあって、そこでジャブロー作ってたんです。
はいはい、見た事あります。かなり初期の作品ですよね。
―――ジャブローは三度目ですね。最初は光子力研究所(注:マジンガーZ)で次は(銀河鉄道)999の橋のやつで、まあ、これやってて、話聞きに行ったんですけど、その赤いドームを破壊するためにどういうパワーが加わって、どうちゃらっていうのを真面目にやっている人たちが、やっぱり40前後の人たちで、やっぱり共通言語として、発注するのにただで発注してるらしいんですよ。
前田建設も前田建設で分析するのに。だけどガンダムだったらやるよっていって、皆、乗っかってきちゃうっていうところがあって、別にオタクっていう感じでもないのに、でも知ってるから乗っかっちゃうっていうのは面白いなって思ったんですよね。
僕よく言ってるのは、女の子で、男の子にモテたかったら、ガンダム語れるようじゃないとダメだよって言ってるんですね。
女子は、とりあえずモテたければガンダム語れるようにしろと。それでないと、君たちが狙ってるような頭が良くてそこそこ金回りのいい男は全員ガンダム語れると。
ガンダム語れないヤツがGTOとかそんなの見てるから。
―――わかります、わかります。EXILE聞いてるとそうですね。(笑)
EXILEとか聞いてる低収入層に君達は持ってかれてそうだけど。(笑)
ちゃんとガンダム見てるやつと結婚しろと。
―――これまぁ、ガンダムじゃなくてエヴァでも、いい?
うーん、そうなんですけどね。あのね、ガンダムのその全世代的な膨らみ方に比べて、エヴァがちょっと微妙は微妙なんですよね。ガンダムとエヴァとか合わせ技でホントに完璧は完璧なんです。
―――エヴァ世代のやつが、エヴァだけで完結してる人と、エヴァを見ることによって遡ってガンダムを見たがるやつっているじゃないですか。僕もガンダム世代なんですけど、昔の僕たちって元々情報が少なかったんで、たとえば音楽を聴いても、このミュージシャンは前にこのバンドにいたからこれを聞いてみようみたいに、遡って聞こうとしてたじゃないですか。で、若い子はそれをなかなかやりたがらないのがあるなと。
そうなんですよ。それもあるんですけども、エヴァとガンダムのさっき言った、ちょっとこれは違うんだなっていうのは、エヴァ語る人って、自分語りに最終的にいっちゃうんですね。
で、ガンダム語るヤツって周りとの関係語りにいくんですよ。
結局、俺はシャアだとしたら、アムロは誰だ?とかですね、俺が好きなのはやっぱりドムだ。それは他に何々があるけどっていう、自分と周辺との関係の話しにいくんですけども、エヴァの場合は、自分と、あと自分の好きな女の子とか、そこの関係にいっちゃうので、自分語りになってしまう。だからエヴァのほうは文学なんですよ。で、ガンダムは大衆作品なんですね。その意味では。
何でしょうね、日本の文化に大きい影響を与えたもので、70年代に、そのアンデパンダント展っていう銀座の大展示館があったんですね、そういう、何だろうな、大きい芸術的なムーブメントっていうのが、エヴァなんですよ。
それに比べて、ガンダムって万博なんですね。万博とか、あとオリンピックとかっていう。完全にその、ある一時代を象徴するような大きい出来事、で、エヴァはある一時代の、美とは何かとか、
その時代の心理とは何かっていうのをやった。さっきの例わからなかったかな、浅間山荘と万博の差ですね。
どっちもはずせないんですよ。20世紀末の日本語る時に。
僕はその自分のですね、トークイベントの中で話したのが、あのでっかいガンダムってありますよね。
あれもう完全に大仏ですよと。結局あれ、皆拝みに来てるんだ。大仏を拝みに来る人の中には誰も仏教なんか信じてる人、誰もいないっていうか、ほとんどいないんですね。
仏教なんかいなくても、では、皆見物に来て、へぇって終わるんじゃなくて。
ところが、でっかい大仏を見たら自然と頭が下がって、自然に手が合わさってありがたい気持ちになると。
それは僕らがガンダムを見て思うのとまったく同じ気持ちなんですよね。
で、日本人はこの宗教を離れたとか、なくしたっていうふうについ思いがちなんですけど、
僕ら、ああいう、ある概念みたいなものが形になって巨大な像になってるのをみたら、やっぱありがたいなと思って、何度も行っちゃう。新しい宗教、日本人は手に入れてよかったなと思いますけども。21世紀型の仏像ですね。
僕もあの、お台場にあるときにやっぱりガンダム見に行って、夕方から夜になって見に行った時に、
やっぱこれすごいなと思って、なんでかわかんないけど何回も見ました。
―――それは海沿いのところにできてたものですよね。あれはホントに独立してたんで、余計そんな感じに見えましたね。
今度違うんですか?
―――今、ちょっとダイバーシティっていう総合施設の前にいるんで、後ろにでかい建物があるからちょっと巨大さが伝わらない部分が若干あるんですよね。
あんなのいくつも作ればいいんだよね。日本国中に。いろんなガンダム作ればいいんですよね。
あのマーキングも、今の、なんだろうな、モデルグラフィックスが完成したカトキハジメ風の塗装ガンダムですよね、今。
つまり、ガンダムって一番最初に出てきた時にすぐにマニアたちが飛びついて、このロボットというのは飛行機なのか、戦車なのか、っていう解釈論争になった。
これあの、昔、村上隆さんがオタク文化に入りかけた時に僕が、村上さんに講義したんですけども、ロボットは戦車なのか飛行機なのかっていう、それなに?って聞かれて、だいたい派閥は3つあると。
ロボットって言うのは戦車だっていう人は、武装を分厚くして汚しを入れて、途中にハンドルとか入れて、電話機とか入れて、あくまで現用兵器の手触りにこだわると。
で、ロボットは飛行機だっていう人は、そうじゃなくて、薄い色で塗って、できるだけ鉄板とか薄く表現してで、壊れやすさっていうのを出そうとすると。
そうじゃなくて、ロボットは女性だと女の子だという人はもっとキャラクター性に注目して、きれいに見える色の塗り方とかをやると。だからロボットをフィギュア化する時に、戦車なのか飛行機なのか女の子なのか。
で、今のそのガンダムのその巨大もの作る時っていうのは、全部飛行機であるっていう流れなんですね。だったら別に北海道だったら戦車のガンダム作ったらいいし、大阪の心斎橋だったら女の子としてのガンダム、つまり、なんでしょうね、あの、塗りがきれいな、ひたすら、見た目でいいガンダムっていうのを作っちゃってもいいはずです。
別のところにはバトルダメージ受けたガンダムも作れるはずだし、日本国中88箇所にガンダム作りゃいいんですよ。
88箇所巡りできるし。全部ガンダムじゃなくて、いろんなモビルスーツ置いてったら、やっぱりそれで観光客ってね、動くと思うんですよね。でそれは、何で動くのかっていうと、たぶんガンダム好きだからじゃなくて、ありがたいからって。一番宗教の基本に返って動ける。
だって僕あの、鳥取の水木ロード行ったんですけども、あそこもやっぱり面白いことに、水木シゲルのファンでない人も行くんですよ。
やっぱその鬼太郎とかの像見たらありがたい気持ちになっちゃうんですね。
だから皆あの、キャラクターっていうのを誤解してると思うんですよ。
それを好きな人が行くんじゃなくて、なんとなくありがたいような気がして、行ったらありがたいと。
それは僕らが、伊勢神宮とか、奈良の大仏行く心理とまったく同じなんですよね。
てなのが大人っぽいガンダムの語り方。
―――こないだあの、荒俣先生のインタビューした時に、それはコミュニケーションの取材だったんですね。
人たらしの話をしてて、秀吉がなんで@@だったかというと、あいつでかいもん作って、そういうことしたから戦の社会は万博みたいなもんだと、似たようなことおっしゃってたんですよね。
そういう人をひきつけるものとして、作るっていう点では、ガンダムは理にかなっているというか。
それはなんかね、戦争兵器だっていうあたりを、僕ら意識しないですよね。
あんな、やたらでかいものやってても、その兵器だから恐ろしいっていう女の子の意見聞いたことないですね。
あんな銃なんか持ってるのに。そうじゃなくて、なんでしょうね、僕らはそこから、その、
逆境に立ち向かう姿とかですね、かっこよさみたいなものを受け取ると。
だからたぶんもう僕らは、あそこに巨大な人物がいたら誰であっても尊敬できないと思うんですよね。
あの、お台場に巨大な石原都知事の身長18mの像を建てても、ありがたくないんです。
でも、ガンダムだったらありがたく見れると。
それは外国人が、なんで日本人、あんなにロボット好きなの?っていうので、僕らは多分、異形のものか、抽象化したものしか尊敬できない人種なんですよ。異形のものってのはガンダムみたいなものとか、妖怪みたいなものを国民挙げて好きだっていうことですね。
あとお相撲さん。あれくらい形が異形だったら僕ら尊敬できる。マツコデラックスもそうですね。あれくらい形が異形だったら、ぼくらはすなおに受け止めて、彼女が道徳的なことを言っても、スッと心の中に入って来るのです。
―――自分と違うものの説得力ということですね。
そうですね。
もう一つは、象徴的なものなんです。日本人は。
それがガンダムでもあるし、あとボーカロイドとか、そういう二次元の女の子。
あ、でも、女子が好きだと言うことじゃなくて、ポイントは二次元で存在しないということなんですね。
シンボルだからOKだという。
大変文化的な行為だと思います。
―――未だに、でも、そのう、結局、まぁ岡田さんはファーストおっしゃらないかもしれないですけど、ファーストのRX78に、まぁこういう像にしても、そこにこう、集中していくっていう理由は、どうしょうかね。
もちろん、ガンダムフロントの中に入れば、初代でないヤツも色々あるんです。
それはフリーダムもある。
やっぱりファーストがあれだけインパクトっていう。
今の世代、まぁ今の世代にどれだけ響いているのかは疑問ですけど・・・
それは、岡本太郎さんと言っても、みんな、太陽の塔しか見ないのと同じですよね。
つまりガンダムはもう、あれ一つあればもういいんですよ。で、たぶんあとザクがあればカンペキですよ。東京にガンダム作って、大阪にザク作ったらもう、いいんですよ。
他のガンダムがあってもいいけど、それは岡本太郎の作品が色々あってもいいけども、シンボルは太陽の塔で充分なんですよ。
なんでしょうね。僕らが感じている「人間の不自由さ」みたいのものも、あの関節のカンジとか、自由自在に曲がりそうにできてないですよね、そこらへんも、甲冑みているみたいなカッコ良さがある。あと、束縛感ですか。なんか、いいカンジでSMを刺激する感じ。
強いからSにようでいて、体の動きを制限するMの要素もある。
なんであの、一番最初のガンダムじゃなきゃダメなんでしょうね。
ぼくは、自分自身が好きだから、とっていうのをおいといて、結局テレビとかでもCMに使用されるのは、絶対に最初のガンダムですよね
番組とかでもそうですし、結局、商品になるときでも、シャアだ、と。
そのあといかに、SEEDとかいろんな作品が人気出ようとも、それが延びたり、ずっと続いたりはしないんですね。
で、ウルトラマンは違うじゃないですか。仮面ライダーにしても何にしても、最新のものがいつも人気が合って、昔のものは単にふりかえる対象になるんだけども。
ガンダムだけは、どんなに最新のものを作っても、一番最初のものがずっとイメージをひっぱってる。たぶんもう、ブランドになっちゃったからでしょうね。
他のものは、まだ、ブランドになるには、浅いっていうのかなぁ、ツメが甘いっていうのかなぁ。うん。
―――まぁ、ウルトラマンは「観音様」という話をねぇ、する人もいますけどね。
はい、はいはい。
でもウルトラマンもさっき言った子供文化ってやつであって、やっぱり大人が見るには、見るに堪えない部分もあるんですね。マジンガーとかヤマトと同じで。ガンダムはそこが初めてなかった作品なので。
―――当時、本放送の時岡田さん、ぱっと初めて見たは、やっぱり衝撃的だったんですか?
そうですね。やっぱり1話から4話までの流れは ほんとにびっくりしましたので、いまだにガンダムは続けて見れますし、じゃあ僕の受け持ちの大学生とかに、「お前ら、全話見ろ」っていうふうに言いたくなります。
で、劇場(だけ)を見てる人を見たら、「君たちはコンビニのパスタを食って、お湯入れて作るパスタを食って、イタリアンを語ってるんだよ」と
「劇場で見たから大丈夫です」
「うん。それは大丈夫かもしれないよ。そこにもカルボナーラあるよね。ペペロンチーノあるよね。で、ちゃんとペペロンチーノの味してるよね。知ってるよ。でも違うんだよ。その違いがわからんって言うヤツは、もうお前はイタリアンを語るな」と。
それと同じで「劇場版見たからいい」っていうヤツは、わかったよ。君はロボットアニメは語ってもいいかもわかんないけども、ガンダムは語んないでくれる?」ていう。
―――それは、どうなんでしょうかね?劇場版を縮小して描いてるから・・・
いや、もう、劇場版作った時の富野さんはガンダムを作れる状態じゃないからです。
だからあれは、スタッフも富野由悠季という監督も、あの時が頂点だったからガンダムが作れたんであって、あのあとも富野さんが自分で作っても、Zガンダム、ZZというふうに、徐々にガンダムでなくなっていくんです。ガンダムは、あの時に作れた奇跡みたいなもんなんですよ。
―――今のお話って、富野さんは、岡田さんがそう言ってるっていうのは、富野さん知ってるんですか?
ああ、知って、怒ってます。(笑)
俺はいつも最新作の男だからって言って。(笑)
はい。
あんまり言うと泣いちゃうからな。(笑)
―――今の若い人っていうのは、その、あんまりどうなんですか、最近のガンダムは見ているけど、ファーストの方は見ていないっていう人も、結構いるもんですか?
そうですね。見てないんじゃないんですか。昔のガンダムは。
あの、やっぱね、その時代、というかね、自分が10歳から15歳の時に見たガンダムが、その人にとってのガンダムなんですよ。
だからどれが正しいガンダムかじゃなくて、その、自分が思春期の時に見たガンダムこそが、ガンダムなんですよね。
でもその世代ですら、やっぱり一番最初のガンダムを見に行くわけじゃないですか。
で、自分の好きな、例えばSEEDじゃないとかいって怒ったりはあんまりしないんですね。
やっぱこう、御本尊という感じがするからだと思うんですよね。はい。
―――岡田さんの講義を聞く学生であれば、ある意味もう通過儀礼じゃないですけど、ガンダムはみておくもんだと思って見てるもんではないですか?
いや、そんなことはないです。
あの、いまのその若い、アニメを好きな人とかオタクというのは、その勉強しようっていう姿勢ではないんですね。
自分の好きなものをいかに長くずっと見ていられるか、という形であり、あとはいかに最新のものを見ていられるか。
だから、わざわざその調べて見るんではなくて、どれが今日youtubeに落ちているのか、どれが今日ニコ動に落ちているのかで、無料のものを漁る形になっているのですね。
だから、そのなんかこう僕はイワシ化って呼んでるんですけども、こうサメみたいに、血の匂いを嗅いで食いついていくというような肉食系のオタクではなく、イワシ系のオタク?
どこに中心があるのかわからないけど、とりあえず群れていると楽しいと。
だからみんなが好きと言ってるものは安心。
自分は好きでも、みんなが好きじゃなかったら急に、イワシが1匹だけだったら、あ、ここがいいってなったら、不安になってシュッて群れに戻ります。
だからと言ってこの群れの中心にコンセプトがあるわけでもなんでもないんです。
群れの中心は空虚な空間があるだけなんです。
高速で回転している。
群れの、その、イワシ化している人たち、オタクに限らず若い人の中心に行くと、その中心は高速で動いている人が、ツイッターで凄い勢いでつぶやいている人たちがいるだけであって、何も別にないんですけど。
それが今の、文化の消費のされ方ですね。
―――昔はそういものがなかったら。まあ、似たようなことはやってた人がいるのかもしれないのですけど、ちっちゃかったわけですよね。範囲が。それがもう今は、もうネットがあるから、余計に拡大しちゃって。でもそれは良い悪いの話ではなくて、文化がそういう・・
ネットがあるので、みんなが5秒前に何が好きだったのかが一瞬で伝わってきて、10秒後にはそこに何万人も寄って来る世界になっているんですね。
なので、どうしてもイワシ化は避けられない。
そうするとイワシ化の特徴として、昨日自分が好きだったものが、もう今日はどうでもよくなってるんですね。
だからその同じような、何となくアニメ傾向は好きなんだけども、今流行っているものこそが神であって、かつて流行っていたものには自分には何の価値もないって考え方になってくる。
その中でもガンダムっていうのはずっと、何でしょうね、マスターピースっていうんでしょうかね、スタンダードモデルになれたっていうのは、ほんとに奇跡みたいなもんですよね。
多分、お台場にウルトラマン作っても駄目だし、神戸のでっかい鉄人28号あるじゃないですか、あそこもやっぱそんな人いないんですね。うん。
やっぱ全然違う。
―――確かに。あれ、別に見に行こう!って気には、そんなならない・・・
僕、行きましたけどね。
行ったけど、やっぱ違うんですよ。
―――あの、現代は、その、葛藤する、富野さんの描いた良い富野アニメとしての少年が青年になるプロセスを描くという葛藤があると、いうのを富野さんが描いていたのだけれども、現代は、そういうその葛藤や青年になることを否定する時代だという話は・・・
青年になったら損ですから。
少年でい続けることが正しくて得だっていう世界感だから、ガンダムのストーリーは受け入れられないんですよ。w
それはエヴァもそうですよね。
エヴァも、なんだろ、何かを喪失して青年になって、責任を引き受けようという話ではなくて、全てを否定して少年の純粋さを保ち続けようって話。
エヴァにしてもまどかマギカにしても、今流行っているオタク系の文化全て、あと、実はオタク系の文化に限らずアイドルのオタクにしてもなんにしても、全て成長の否定、なんですよね。
それは成長を老化と捉えているから。
だから、ガンダムは益々シンボル化するんですよ。
ガンダムの内面に入ろうと思ったら、自分たちがわりと好きじゃないものを見なきゃいけない。
それは富野さん作品の、もう、本当に共通、海のトリトンの頃から延々と少年というのは大事なものを失うことによって青年になるっていう、なんか、イヤなテーマが、こう、あるんですよね。
―――大人になる、まあその、青年、「悩む、葛藤する」を否定してこのままでいたいという現代の、そのう・・・
いや、「悩む、葛藤する」を否定するんじゃないんです。「悩む、葛藤する」をいつまでも続けたいんです。
青年というのは「悩む、葛藤する」というのを、もう、引き受けて(笑)、
旅に出ちゃうんです。だから、富野さんの主人公って、いつも最後、旅に出ちゃったりするんですけど。
―――そうですね。ゲイナーもエクソダスも続けましたからね。
なんか青年にならずに、ずっと少年でいる主人公っていうのは、いつまでたっても傷つきやすいんです。 粘膜丸出し。 被ってる状態。
―――それがズル剥けになったときに、おとなに・・・
いや、富野さんのやつはね、まだズル剥けではなくて、仮性で、なんですよ。(爆笑)
―――そこがいいんでしょうけどね。
そこがいいんでしょうけどね。富野さんは、大衆芸能とか大衆芸術ってえのはこれだろっていうふうに言ってるつもりなのが、たぶんその、アニメって表現が子供向けだけども、表現形態が絵ですから。でも、内容は大人向けにできるんじゃないかと思ってアニメを選んだのに、なんと、表現形態は子供向けで、内容も子供向けってところに落ちていってる。たぶんダークサイドなんでしょうね。
―――ガイナックスにガンダムの話が来たっていう話があるじゃないですか。アレ、やってたらどうなってたんですかね。
アレ、いや、3分か4分ぐらいのフィルムなんですよ。やってたとしても。
一番最初に僕らが話したのは3分か4分かのフィルムやってて、で、そのうちにシリーズでやったらどういう風になるって聞かれて、こんな、そのう、あのう、なんだろ、メーカーの人が出てくるガンダムっていう風に言ってたんですけども、本格的にやろうかって、ちょっと打ち合わせしたのは、ほんの3、4分のフィルムですね。完全に、そのう、宇宙空間とか戦争っていうのをリアルに描いたらどうなるだろうかっていうので、パイロットがコックピットに座って宇宙空間に出るまでのスクランブルかかって3、4分の出来事だけを、徹底的に描くていうのをやろうかなあって思ったんですけども、それはその、バンダイが、それだったら金出すよって、結局、それをプラモとかに、中に入れるDVDにしちゃえば回収の方法あるから。て言ったんで。
―――で、それから、しばらくたって「ポケットの中の戦争」
えーっとねぇ・・ いや、あのね、「ポケットの中の戦争」て言うかね、
そのう、僕らが聞いてる話も、その、バンダイの中でいくつもガンダムをやろうとしてた訳ですね。だから「遺言」の中で書いたとおり、ガンダムしか出てこないガンダムをやろうとしてたり、オリジナルビデオで「ポケットの中の戦争」みたいなものをやろうとしてたり、僕たちに発注したようにリアルな戦記物としてのガンダムをやろうとしたり、いくつもの版が動く。それは、静岡、っていう模型の事業部がやろうとしたり、渋谷にあるネットワーク事業部ていう映像をつくる部署がやろうとしたり、いろんなところがガンダムやろうとしてたので、僕らも知らないプロジェクトがいっぱい動いてるんですね。
―――そのあとガンダムもファーストが終わってZ、ZZとあって、OVAもいろいろ出ましたよね。ま、一応、宇宙世紀がVガンダムで終わり、それからそのGガンダムや何やら、いろんな世界があったじゃないですか。一応、全部、みんな見てらっしゃるんですか、岡田さんは。
たぶん全部観てますね。はい。
えっとね、EVOLVEが観てないぐらいかな。EVOLVE全部観てないなぁ。
あれは多分、全部観てないと思いますけど、それ以外は大体観てるはずですよ・・ただ、観ても憶えてないガンダムもいっぱいありますから。
あっ、SEEDとか観てないな。あの、1話しか観てないですね。あと、UCも1話しか観てないですね。この、どうでもいい感。(笑)
というのはね、僕にしてみれば、その辺のガンダムは「ガンダム商品」なんですよ。ん、もう、観なくていいやと。はい。
ガンダムを利用して作ったと。これもねぇ、いろんなところで言ってるんですけども、まともなクリエイターが真面目な作品作ったらガンダム作るはずないんですよ。そいつぁ自分のオリジナル作りたくなりますよ。
ガンダムとタイトル付いてる時点で、いいかげんに作ってますよ。宣言なんですよ。
富野さんだって、いいかげんに作ってないからガンダムの次はイデオン作ったりザブングル作ったりダンバイン作るわけですよね。
で、Zガンダム作ったのは「わかったよ。俺の負けだよ」と、「俺ガンダムしか作っちゃダメなんだろ」って言って作ったわけですよ。
ということは、"ガンダム"って付いてる最初のガンダム以外は、すべて負け作品なんです。中途半端で当たり前。はい。
―――その中でも、でも何かちょっと、これは面白いなっていうものありました?
ない。(大爆笑) あるはずないじゃない。
―――言い切りましたねー
あるはずないじゃないじゃないですか。そんなもん観るんだったら他のもん観ますよ。ガンバの冒険のほうがましですよ。
―――あれは最高ですよ
そうそうそう。
だから、ガンダムの中でって言ったら、もう、もうっ・・・なんでしょうねぇ・・。はい。
富士山のてっぺんと、高層ビルの高さ比べてるようなもんで。まあ、そりゃあ高層ビルも高い低いあるけど、富士山と比べるもんじゃねえよって。
―――もう、基本的には、もうファースト・ガンダム
はいはい。
―――ていうことなんですね。
はい、そうですね。
―――ま、同じ一年戦争の時間軸でやってるポケ戦もそうですしー、あのう
あれも、まともなものがあればガンダムと名前が付いてない。
もう、ちょっと違うことやろうとしているはずです。
―――あー、なるほど、そういうことですね。
そりゃあもう、僕自身がアニメ作ってたクリエーターなので、クリエーターの気持ちはよくわかるんです。
まともな奴だったら、ガンダム、ガンダムって名乗る時点で、「まあ、今回はガンダムの名前を借りてやらせてもらいます」っていう腕ならしなんです。
―――看板借りましたっていうものなんですね。
看板借りましたっていう・・はい。
―――「ポケットの中の戦争」は岡田さんも関わりは..
いえいえ。あのう、山賀くんがガイナックスにいたときに脚本手伝ったぐらいで、それぐらいで、何にも僕はやってないです。
あの辺は、僕はガンダムをこじらせた作品って。風邪をこじらせるみたいにガンダムをこじらせることもあるんですよ。
過剰にミリタリーにいくとか、過剰に心理にいくとか、はい、過剰にベトナム戦争になるとか。何でしたっけ、0080でしたっけ?88?
え、何小隊
―――08小隊です。
08小隊。08小隊は、あのう、ガンダムをこじらせてベトナム戦争へ行っちゃったやつですよね。
そ、そんなっ。
何であんな21世紀の後半の時世になって、こんなことやってるんだ。
―――逆に、その、何か今後、CIRCUSのほうから岡田さんに、ちょっと次のガンダムにシリーズでブレーンに入ってくださいよ。みたいな話ぃ
ゆとりガンダムですよ。(笑)
ゆとり世代がモビルスーツを。乗ってたんですよ。(爆笑)
就活の話ですねぇ。みんな連邦軍の士官になりたいんだけども。
―――みんな入りたいために
みんな願書出して、ダメだっていう。はい。
モビルスーツの専門学校みたいなとこに行くんだけども、専門学校に入ったからっていって連邦軍に入れると思うなよって先生に言われて「話違いますよ~」って、ゆとりガンダムって。
―――おもしろい
就活ガンダム。
―――おもしろいです。
―――じゃ、前半は「トップ」の頭のところみたいな感じでこう、学園
いや、多分ね、もう延々ねぇ、あのう、ハリウッドの学園ドラマみたいなグリーとか、あんな感じで。
―――じゃ、もうほとんどモビルスーツ出てこないみたいな
あのう、グリーはミュージカルシーンがあるのと同じで、カッコイイ何台かあるんですよ。
で、イメージシーンでみんな乗るんですよ。グリーのミュージカルシーンのように。もう、それでいいよ。
―――妄想としてはどうなんですか
でも、それは僕は、いいかげんな仕事としてやります。
心からやらないです。真面目にやるんだったらガンダム以外やりますよ。
なんだろうな。真面目にやったガンダムの続編って、僕はパトレイバーだと思うし、マクロスだと思うし、エヴァンゲリオンだと思うんですね。それはそれぞれのクリエイターが、じゃ、俺にとってガンダムって何だったのかって言って、1回消化して、アウトプットしたら、ガンダム以外の作品に絶対になるんです。
―――それらの作品は残ってますもんね
だから、ガンダムの続編はZガンダムではなく! パトレイバーだし、エヴァなんですよ。
完全に富野さんに影響を受けて、富野さんの弟子と言ってもいいような人たちがやってますから。
観たいのはねぇ、富野..さん..ではなくてねぇ、宮崎ガンダムとか高畑ガンダムはすごい観たい。だって、ジブリがガンダムやるっていうんだったら俺もう本当に観ますよ。
―――それスゴイですねー。観たいですねー
僕ら観たいの、もうそれくらいなんですよ。あと押井守がガンダムやるとか。そのクラスの気が狂った企画じゃないと、もう僕らは動かないんですよ。
―――ジブリガンダム、すごいですねー
ジブリガンダム、観たいすねー。それも高畑さんで。東京大学紛争あたりを舞台にした、はい。戦争がもう既に終わった世界で、第二次大戦で敗れた日本で学生運動が盛り上がるみたいなもんで、たぶん戦後のジオンなんですよ。
で、ジオンは徹底的に誇りを砕かれて、で、一方的に、安保同盟ですか?連邦との。
安全保障条約を押しつけられて、それに対抗する学生運動というのをジオンの大学で(笑)。そういうのをやってくれたら俺、見に行くな。
―――なるほどね。やっぱりあくまでファーストなんですね。最初のガンダム。
そうですね。ファーストを取り入れて、いろんな作家が
「俺にとってガンダムはこうだったんだな」
と言って、ガンダムでないものを出してくる。そういうのはすごく見たいですけれど。
―――でも、その、ガンダムの流れの中で作るものに関しては、違う。
それは「ショー」。キャラクターショー。
―――確かに、ガンダムが終わって夢中になってみていたのはザブングル、エルガイムとかあのへんでしたね。
永野くんのファイブスターもちゃんとガンダム、やってますよね。正しく。ガンダムの遺伝子が。
―――はい。早く行き過ぎかもしれませんけれど。
(笑)。その意味では、ソバ屋とかパン屋とか、いわゆる「名人がいた店」の跡継ぎはロクなのがいなくて、そこからのれん分けしたらどんどんおいしいのが出てくる。ガンダムはそうだと思うんですよ。ガンダムを売っているというのは名店、老舗の今のやつ食べたら中村屋? キムラヤのあんぱんって大したことないじゃないですか。でもキムラヤがあんぱんというものを作ってくれたから日本中のいろんなパン屋が惣菜パンという新しい展開をやってるわけですよね。それを見た方が僕らはいいんですよ。
―――ガンダムからのれん分けって難しいな(笑)。
―――そういう意味でも、やっぱりその、アニメっていうか、文化の中で、優秀なクリエイターが生まれてくる大元の、太い幹のところにファーストガンダムがいたという。
そうです。
富野さんにとっては、それはたぶんアトムなんでしょうけどね。虫プロに入って一番最初にアトムを作った時に「こういうのがやりたいんだ」というのは多分、富野さんにとってのガンダムなんですよね。アトムのときに「こんなことがやれなかった」という復讐戦がガンダムでダーッと出てきた感じ。だから富野さんは富野さんで、昔、手塚治虫に影響を受けたものを返そうとしている。
「手塚治虫」→「ガンダム」→「今のロボットアニメ」という大きい流れが見えると、ガンダム鑑賞がすごく楽しくなりますよね。
―――ここ最近のロボットもので、「そういう香り」を感じるものはありますか?
トランスフォーマー。
―――あー。
劇場版の。あれはバカでダメですけれども、あの方向には何かあるような気がチラッとしてますね。トランスフォーマーとかX-MENとか。あのあたりのハリウッドの特撮バリバリ物は、何か、ここが新しい大きな流れになるんじゃないかな? スタートレックの新シリーズがあるんですけれども、やっぱりスタートレックもずーっと何回も続編やってきて、ダメになる一方だったんですが、3年ぐらい前のスタートレックで生まれ変わったんです。そういう創造があるんじゃないかな。
―――それを見て、何かこう、また新しいものを作る人が出てくると面白いかと思いますねー。
はい。
―――トランスフォーマーって俺、アニメ版の、昔の・・
コンボイ司令官が、頭が悪いやつですね。
―――あのイメージがすごくあって。だからCGで映画になった時はビックリしましたからね。
長すぎるのだけは欠点ですが。(笑)
―――日本の作品では何かないですか?
日本の作品では「ALWAYS」が良かったな。この路線でガンダムが作れないものかと思ったら山崎監督が「宇宙戦艦ヤマト」を作りましたね。それでヤマト見たらわかった。「お前やっぱりヤマトじゃない。ガンダムだ」と。人情もので、泣けるガンダムっていいと思いません? ヤマトをやろうとしたから無理があったんですね。そうじゃなくて、ガンダムでいいんですよ。次にガンダムやってほしいのは山崎監督かな? 日本だったら。
―――それはアニメじゃなくて実写の?
そう。
―――アニメではもういいんですね?
アニメではもういいです。(笑)
もう見るものは見尽くしましたから。
日本が作れるアニメで、こっから先で、美少女はまだいくらでもやりようがありますけれども、ロボット表現はもうないと思いますね。巨大ロボットの表現は。ここから先入れるものは空気感とか巨大感とか、すべて3DCGの方が面白くなるものばかり。ですからねぇ。で、このぅ、そうですねー、エヴァがたぶん最後なんだろうなぁ。巨大ロボットとして面白いのは。
―――個人的にはグレンラガン好きでしたけどね。ドリルが好きだっただけですけど。(笑)
グレンラガンとかガオガイガーにしても、昔あった自分たちのものをもう1回というやつなんですよ。だから島本和彦の臭いがするんですよ。
(大爆笑)
ヒドイ。島本君ゴメン!(爆笑)
―――島本さんは今、全然おもしろいじゃないですか。
おもしろいです。いや、でもこないだ、西原理恵子の画力対決で、あのう散々に言われてた。お前はしょせんビッグマイナー。1回ぐらい賞を取ったら?とか おや、この中に賞を取っていない漫画家がいたんですかって。(笑)
―――言われていましたね。
スゴイ面白かったな。
―――島本さんってもういいお歳ですよね?
そうですね。僕より1コか2コ下ですから、もう50いくつですよね。
はい。
なのに。なのにあんな大人気ない漫画描いて。(笑)
―――散々出てるじゃないですか岡田さんも。
出てる出てる。島本君が描いたガンダム、すっごい面白いですよね。
―――Gガンダム、今やってますよね。
いやあのね、「あしたのガンダム」って見たことある?
―――「あしたのガンダム」?
バカですよ、明日のジョーなんですよ、簡単に言うと。(笑)アムロ君が補導されて、ホワイトベースという名前の少年院に放り込まれるんです。そしたらみんなが「ふっふっふ、来たぞ来たぞ。たっぷりいたぶってやる」って。バカー(笑い)。あれ? 島本君じゃなかった。あれは…、トニーたけざきか。
―――トニーさんですね。
あれ? でも島本君もガンダムネタで同じようなひどいのを描いてなかったっけ? それと混乱してます。(注:島本和彦先生であってます。短編のようですね)
―――でも、最近ああいう感じでパロっている人たちいっぱいいますよね。
それもやっぱり、パロる時は初代になっちゃうんですよね。
―――そうですよね。
僕らにとっても最初のガンダムは、忠臣蔵とか新選組と同じで、血液の中にあのストーリーが入っているんでしょうね。坂本竜馬と同じように。歴史と一緒にするなと怒る人がいるかもわからないですけれども、坂本竜馬にしたって歴史じゃないですからね。司馬遼太郎が造った人物であって。
―――正直、DNAレベルと言ったらナンですけど、完全に刷り込まれちゃってますよね、ガンダムに関しては。
なのに富野さんはプール付きの豪邸に住んでいないという。かわいそうさが。昔から本人が言っている通り。「僕がプール付きの豪邸に住まないとダメなんです」。そうだろうなあ。(笑)
―――「夢が、見られないです!」
「夢が、見られないです!」
―――それは富野さんが単純にお金を使っちゃったってことなんですか?
いや、権利があんまり行かないんですね。
日本のアニメ関係ではやっぱり、大当たりした人はいないですよ。宮崎さんでも高畑さんでもそんなにでかい家には住んでいるわけでもないですし。そういう意味では、夢はないですよね。
―――今も、アニメ制作の現場ってきついものなんですか?
んー。あのね、面白いことにアニメ制作って、手を抜けば抜くほど儲かるんですよ。結局、1話につきいくらで予算が出るじゃないですか。そしたら、手の抜き方がわかってたら、ちゃんと利益って出るんですね。で、そうじゃなくて、面白くしたいって思えば思うほど手間が掛かるじゃないですか。でも手間が増えたからって予算が増えるわけじゃないんで、面白いアニメに限って、みんな貧乏な思いをするんです。
一時期シンエイ動画、ドラえもんとかやっているところはそこそこお金になると言われたんです。それはどんな複雑なことをやろうとも、線が単純だから。やっぱ、ちゃんとギャラが、生活費が出るわけですよね。でもそうじゃなくて、ガンダムとかエヴァとかマクロスにしても、線が複雑なアニメで自分たちがやりたいものを作ったら、やっぱり食えないですね。
―――まあオネアミスもそうですよね。(笑)
そりゃもう、予算が一定なのに、手間掛けちゃいけないのはわかってても、それやりたくてアニメの現場に入っているんだから。
―――オネアミスは素晴らしかったですけれども、そうやって回んねぇぞコレっていう話になって、トップに続いていくわけじゃないですか。トップは、でも結構回収されてたんですよね?
いや。トップもだめ。だから、オネアミスで作った赤字を、トップでさらに拡大させて。結局回収したのはパソコンゲーム作った時ですね。
ナディアでも更に赤字拡大したんですよね。
―――ナディアもそうなんですか。
はい。もちろん!(笑)
もちろん!アニメで黒字なんか出したこと、たぶん未だにないと思いますよ。宮崎さんですら、アニメで黒字を出したのは魔女の宅急便からですね。
それぐらい、やっぱ儲かんないですよ。
―――全然違いますけど。僕が行っている英会話の学校で、フランス人の子がいて、フランスで「ふしぎの海のナディア」が超メジャーだと言ってて、他にもいろいろなアニメをやってはいるんですけれど、海外に持っていって、またうけて、そして入ってくるというのは?
そういうのは・・・
ないです。だってあれ、NHKの作品ですからね。
NHKがNHKエンタープライズに外注して、NHKエンタープライズが総合ビジョンに外注して、総合ビジョンが東宝に外注して、東宝がグループタッグに外注して、グループタッグがガイナックスに外注してるんですから。僕たちは曾々孫受けですから。権利なんて見たこともないですよ。あれ、幻なんじゃないですか。著作権ていう幻の生物ですよ。ツチノコみたいに。見たことがあるっていう人もいるんですけども。グループタッグでも誰も見たことが無いって言いますから。
―――見てるほうからしてみると、ナディアはガイナックス、イコール、みたいな感じなんですけど。その辺がいっぱいあって。
それはAKB48はテレビにいっぱい出てるから儲けてるんでしょ、と言われるのと同じです。秋元さんが全部持っていきます。という感じで、NHKさんが全部持っていきます。はい。そんな甘いもんやおまへんで。ハイ。
―――今アニメ作りたいって言う人ってどうなんですか。若者って結構増えてるとか減ってるとか。
自分で一人でとか二人で作るのが一番確実ですよね。アニメ作りたいって言って、テレビシリーズで今自分が見てて好きなものっていうのを同じようにやろうとしても無茶ですね。
それはなんだろうな。自分が気持ちいい部屋っていうのを作れって言ったら、じゃあ、六本木とか渋谷とかにあるカフェみたいなものを自分で作ろうと思ったら、もう何億もかかっちゃいます。そうじゃなくて、今の自分の部屋を住み良くするっていうのが成功だと、正解だと思うんですね。それと同じようにアニメ、自分が好きで今テレビシリーズでやってるから、あんなの30分アニメやろうと思ったら絶対できないですからね。それよりは5分とか15分でもいいから一人で作れるものとか、2、3人で作れるものっていうのを小さく作って発表して、評判になったら徐々に予算をあげて、というのがいいはずです。
―――じゃあできますもんね、パソコンがあるから。
多分僕らは、もしあれが自分が子供のころにあったら、やってたんですよ。
―――ですよね。
あんな手っ取り早いツールがあってニコ生もあるのに。なんでやらない。
―――パソコンで作って、あげれば、世界中の人が見てくれて、評価されれば確実に。
そうですね。
―――じゃあアニメ作りたいやつはとにかく自分で作ってみろよと。
アニメじゃなくて紙芝居でもいいはずなんですよ。昼間のうちに絵を20枚くらい描いて、それを出して、友達の女の子とかに交互にストーリー読んで見せてもらうだけでも、それが面白かったらだんだん絵が増えるはずですから。
―――そういう中からまたガンダム的なものが出てきますもんね。
うーん、そういうのが毎晩毎晩、何千何万と溢れるようになったら、そこから化学反応が生まれると思うんですけども。まだ、その、何でしょうねぇ。化学反応を生むには要素が少なすぎますよね。そのテレビっていうか、アニメが映画館の小屋でしか見れなかったのがテレビっていうものを与えられて、毎週毎週何十本もやるようになってからテレビアニメって言うのが加速したのと同じように、僕らはようやっとネットでアニメ見るようになって、ネットに住んでる人たちが自分でアニメ作るようになってから、まだ何年かしか経ってないんですね。それらがまだ溢れてないので、もうちょっと待たないと駄目だと思います。
―――もうちょっと待って成熟してきて、そこから何かが出てくる。
毎晩毎晩くだらないものを山ほど見るようになったら、そこから何かでてくると思います。だってガンダムも出てくるようになるまで僕らはどれだけつまらないアニメを見なきゃいけなかったか。そんな「空爆ロボ グロイザーX」とかって。「氷河戦士ガイスラッガー」とかって、あんなくだらないアニメ山ほど見た後で、やっとガンダムが出てきたんですから。
―――あのころひらがなで「てれびまんが」でしたからね。
そうそうそう。てれびまんがでしたね。
―――てれびまんが時代を過ぎたからこそ、そこがこう、熟成されてカオスになってアニメになって。
まだまだ鷹の爪団しかないような状態では駄目ですね。
―――もしかしたらなんか日本のオタク文化が好きな海外の人たち、若い人たちがファーストガンダム見て、そこにこう受けて、新しいものアニメ作ってくるとか。
いや、あの人らがやるならアニメじゃなくてやっぱり実写のほうだと思うんですけどね。僕はファーストガンダム見て感動したアメリカ人が、08小隊みたいなベトナム戦争ものを実写で作ってくれたらすごい嬉しいですけどね。やっぱあのう、何だろう、アメリカの映画の、ハリウッドの映画の作り方見てたら、巨大怪獣を見せずに怪獣ものを作れるんですよ。でも僕ら下手に怪獣ものとか、ロボットアニメというフォーマットを知ってるから、それを描かないとかけないですけども。アメリカ人てその巨大怪獣を見せなくても怪獣ものを作るということができるんで。だからガンダムもほとんど、ガンダムがちょっとしか登場しないガンダムって作れるはずなんですね。リアルなガンダムを。そこらへんはなんかこう、出てくればいいなと思いますけども。
だいたい、こんな感じで。はい。
ぼちぼちしんどくなってきたね。
―――記念の写真を撮りましょうか。どこで撮りましょうか?
―――ガンダムグッズとか・・・
ないですよ。(笑)
そんなヌルいものは。(笑)
―――今回「語れ!機動戦士ガンダム」なんで、こう、語りかけているように、こう、カメラを指さして頂いて。
(写真撮影)
―――はい、じゃ撮りまーす。カチャ はい、いきまーす。カチャ。
語ってくれたまえよ。(笑)
―――あー、そのまま、そんな感じで。はい。
―――それでこう、岡田さんの発言を聞いてまたこう語る奴が出てくるわけだから。(笑)
(写真撮影)
どうも、あれですね。なんだっけ、ミスター・ガバロンとかI want you.
ガンダムを新しく語れる若者求む!
@@以外の言論、出てこい!ってやつです。
20代で言論言ってる人、いないんですよね。
あと女性言論がいないって、昨日、一昨日か、ニコ生のプロデューサーと話してたんですけども、女子で言論がいないから、いわゆるその一時代いた香山リカ、勝間和代みたいな人が、20代、30代の女性で皆無なんですよ。
だからあそこ、誰か語れる人いたらもう総取りになって、大儲けです。
(写真撮影)
―――ちょっと前髪を…… そうですね、そんな感じですね。
―――岡田さん、撮りながらでいいんですけど、ファーストガンダムで好きなシーンってどっかあります?
え?好きなシーン?
―――印象に残っていて、このシーンが好きだなぁって。
あのね、「太平洋を血に染めて」っていうので、ミハルが死ぬとこ。
で、あれで、アムロがですね、最後に事情がわからずに、ベルファストで乗って来た女の人がいなくなったらしいんだっていうふうに言うだけのシーンがあるんですよ。
普通、昔風のドラマの作り方だったら、主人公ってなにもかも知ってるんですよ。
なんかドラマが起った時に、可哀想なことがあってやってて、俺が受け止めてやるよみたいな。
アムロはまったく、なんだろ、カイのことがわかってなくて、どんな関係かもわかってなくて、主人公として、だったらしいんですけど、ってブライトさんに言って、ブライトさんも状況がわかんなくて、そうか、それはなんか可哀想だったかもしれないな、って言って。
カイの孤独感が、周りの人の優しさと無理解に。
優しさと無理解によって、カイの孤独感が照らされるというのが、もう名シーン!
あんなの俺、見たことないです。
だから、これが庵野君だったら、エヴァとかだったら、クドくやっちゃうんですよ。
敵わなねー、と思って。はい。
―――すみません、じゃ、このポーズで。こちら向きですね。
(写真撮影)
―――はい、おつかれさまでしたー。
―――岡田さん、ガンプラ作られた経験って?
それは、大学くらいの時に、駄目なガンプラをいっぱい作りました。
で、良くなってから、マスターグレード




ただ、今のそのムーバルフレームが中に入っているガンダムっていうのは、あんまり興味ないんです。
はい。
だったら、あんな所に間接ついてるはずないじゃん。