「評価経済講座」最終回。今回は「異論反論」の「評価経済社会の誕生」 を教科書としてお届けします。
マスメディアが衰退し、政治が疲弊し、税収は減る一方。
貨幣経済社会の弱体化は、年々、誰の目にも明らかになっています。
テレビではなくネットをザッピングする私たち。
政治家ではなくfacebookで有名文化人の発言を追う私たち。
稼いで税金を払うより、フリーなソフトで楽しむ私たち。
そんな私たちのよりどころは、何でしょうか?
モノはどんどん売れなくなり、売れても利幅はどんどん少なくなる。ようやく売れたモノやサービスも、所有や体験した人が、みんなに体験談やそれ自身をシェアすることで「評価」を得る。得られた「評価」がいまや一番の財産なのだ。
評価はネットのおかげで累計され、可視化が進みつつあります。
Facebookのイイネ!の数、twitterのフォロワー数、ブログのPV数、食べログの☆、ヤフオクの評価・・・・
今はバラバラに見える評価も、やがては統合され、いくつかのメジャーな評価軸が生まれてくるのでしょう。
これまで「評価」は比較対象の方法がなく、評価軸もひと次第、つまり「人の評判などアテにならない」だった。しかしハイパー情報時代のいま、集合知というフィルターで「評価」は貨幣以上の通貨になりつつある。
ネット通販だと、多少価格が高くても、評価の高い方を選ぶことは、当たり前になりつつあります。
安いだけでは、誰も買ってくれません。
それどころか、無料のものが山ほどある中で、なんとか目立とう、人気を得ようと、プロと、セミプロと、アマチュアが、シームレスな世界で、三つ巴の戦いを繰り広げています。
カネが無意味になる、というユートピアを語っているのではない。あらゆる「評価」が数値化され、まるでカネのように社会にあふれ、すべてが「評価」で決まってしまう。「評価」さえあれば、カネなど勝手に集まるけど、カネがあっても「評価」がなければ損をし続ける社会。
この記事から1年あまり。
掲載時よりグッと、評価経済が進行している実感がありますね。
それでもまだまだ、貨幣のために評価を積み上げるという意識は強いです。
20年後には、評価を得るために貨幣を積み上げるような時代になっているのだろうと思います。
毎日新聞「異論反論」 2011年2月掲載 評価経済社会の誕生 より。
ライター:のぞき見のミホコ