FREEexなう。

2012年05月21日

ギークハウス新丸子に行ってきました

お久しぶりです。マクガイヤーのリュウタロウです。
現在、岡田と一緒に『いいひと戦略』『国民スナフキン化計画』という書籍を準備しています。
それらの取材……というと大袈裟なのですが、FREEexにもギークハウスに住んでいるメンバーがおり、その縁で先日ギークハウス新丸子にお邪魔してきました。自分は、ギークハウスでの生活が実際にどういったものかとか、ニートの入居者がどうやって入居費を稼いでいるかといったことに興味があったのですが、ギークハウス新丸子の管理人である小出さんによる、ギークハウス運営者の視点からの話が面白かったです。FREEex内部のSNSにてレポートを書いたのですが、こういう面白い話は内部に留めずブログでも公開するべきと促され、こちらにも転載することになりました。

 
小出さんは某電気メーカーの研究員です。皆さんご存知の通り、ここ数年、電気メーカーはどこも業績不振が続いています。小出さんも仕事の量の割には社会の役に立っているという実感がつかめないでいるといいます。
何か面白いことをやりたいと思った小出さんは、ギークハウスの運営を始めることにしました。既に東日本橋でギークハウスを運営していたカリスマニートのphaさんに相談し、昨年、武蔵小杉にギークハウスを開きました。ギークハウス新丸子は武蔵小杉に続く二軒目です。
ギークハウスのコンセプトはそれぞれのギークハウスで異なるそうです。小出さんは、新しいビジネスなり、ベンチャー企業なり、何かを生み出す場所になることを期待してギークハウスを運営しているそうです。入居者も、どこかの企業に就職している人間はほとんどおらず、ニートやフリーターばかりだといいます。

共通しているのは、phaさんも小出さんも儲けようと考えてないことでしょう。
たとえばギークハウス新丸子の家賃は3万5千円、共益費として1万円、敷金礼金は無い代わりに、最初の2ヶ月分だけ家賃を前払いというシステムです。小出さんが物件を所有しているわけではなく、大き目の物件を自分の名義で賃借し、ベッドやテーブルやネットといった設備を整え、ギークたちに貸し出しています。つまり、また貸しです。入居希望者が少なかったり、未払いがあったり、その他トラブルが起こったりして赤字になったら、小出さんが補填することになります。
金銭的リスクを考えたら、もっと家賃を高くしたり、敷金礼金をきちんと徴収したりした方が良いのでしょうが、そんなことはしません。今月は家賃支払いが苦しいという入居者に対して、お金で払ってもらう代わりに、ギークハウスの雑務やIT関係の簡単な仕事を手伝ってもらうことで、当月分の入居費の代わりとすることさえあるそうです。
「お金の代わりに、時間で支払ってもらうという考え方」と小出さんは仰ってました。むしろ、お金以外で払ってもらった方が所得税の節約になり、嬉しいそうです。

実際は、家賃の支払いが滞ることはそれほど無いそうです。ギークたちはITリテラシーが高く、皆若く、頑張れば仕事を探せるといいます。
また、Facebook上でやりとりしているのも一因でしょう。実名が基本のFacebookでは、やりとりがそのまま身元保証になります。家賃を滞納したり、悪い噂のある人間はFacebook上でそれとなく分かり、入居し難くなります。入居しても、現金を捻出できない人は、悪い評価がFacebook上でつくのを避けるために、「時間」や「労働」で支払おうと小出さんと交渉する、そういうことだと思います。

小出さんは、儲からなくてもいいどころか、金銭的に損しても構わないそうです。ギークハウスを作ることで自分の周りに会社以外のコミュニティができ、自分がやりたいことをやれる環境にあることが、一番の幸福なのだと。
今は、会社を辞めることになっても怖くない、とまで言います。これまで、会社の服務規程や慣行に縛られていたのは、いわば機会損失だったと考えているそうです。

それに、損する可能性は低いといいます。入居者は
Twitter上で募集したらすぐに集まりました。新丸子のギークハウスを作るのに200万ほどかかったそうですが、小出さんが財布から出したわけではなく、ネットを介して出資してくれた人がいたそうです。しかも無担保・無利子で。入居者のみならず出資者も、ギークハウスという思想に共鳴してくれたからでしょう。
だから、小出さんはギークハウス運営が嫌になったらいつでも辞められるそうです。

面白かったのは「愛の募金箱」というシステムです。小出さんのギークハウスでは、イベントやパーティを開く際、きっちり参加料を決めるのではなく、募金という形でお金を貰うシステムです。その方がお金が集まるのだといいます。
更に、「愛の募金箱」の中のお金は、「ギークハウスの為に仕事をした!」と感じた入居者なら、自由にとっても良いというルールです。だからといって、募金箱がすぐ空になったりすることもないといいます。
いずれも、「いいひと戦略」を頭に入れておくと納得のいく話です。他人の目から見てフェアでないことばかりする人は「イヤな人」、苦しくても皆のために多めにお金を入れる人は「いいひと」。「イヤな人」にみえる行為ばかりする人はギークハウスに居られない、ということなのでしょう。

ギークハウス新丸子では何人かの方から話を伺ったのですが、入居者の一人で、自分で新しくギークハウスを設立し、管理人になろうとしている方がいました。単に住むのと、自分で運営するのとでは、全く異なるそうです。あえてリスクを引き受ける「いいひと」が、自分のコミュニティを作れるのだろうなぁ、なんて思いました。

小出さんは、今の資本主義社会・貨幣社会に疑問を持っています。数年前は「お金の無い世界が来るかもしれないですよ」と言っても、誰も相手にしてくれなかったそうです。それが、昨年3月11日の東日本大震災以降は変わってきた……という話が一番印象的でした。






otakingex at 23:00コメント│ この記事をクリップ!
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