15才の女子高生から、“自分の中の自分と、表向きの自分がいて、心から楽しめない”という相談です。
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相談278 「自分を眺める自分にとまどいます 」15歳女子高生です。
こんなことを相談されても困ってしまうとは思いますが、最近、ひどくなって自分で悩んでいるので、答えていただけたら幸いです。
私は物事を冷静に捉え、分析する性格です。
それが影響しているからだと思いますが、日常生活を送っているときに、他の人が見ている「表向きの自分」と、自分の中で考え事をしている「自分の中の自分」(ややこしい説明になりますが)とが一致していないのです。
普通は自分自身が楽しいと感じたら、表向きの自分も、自分の中の自分も、同様に楽しいと感じるのでしょうが、私の場合、その二人の自分が別の事を考えているのです。
表向きの自分はいつも勝手に行動しています。これに対してる、自分の中の自分は自分自身や他人、世の中のことまでもを冷静沈着に、斜めに“眺めている”ようなのです。
こういう状態になっている結果、好きなことをしていても二人の自分が不一致になっていることになって、楽しいことを純粋に楽しいとは思えなくなってしまいました。前までは、そんなことなかったのに……。
心の底から楽しいことを、楽しいと思えるようになりたいです。
そうなるには、どうしたらいいですか?
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○回答 岡田斗司夫より 6歳の頃の実話です。
今日のオヤツはプリン、と言われたら嬉しさのあまり15分も踊り狂ったあげく、手首をネンザしました。
姉と「せっせっせ」遊びに熱中したら、姉の顔にあたり、気付くと泣きながらなぐりあいの大げんかをしていました。
我ながらバカでイヤになります。でも、これがあなたの憧れる「心の底から楽しい状態」です。
心の底から楽しいから、自分を止めることができない。だから怪我やケンカするまで熱中してしまう。
さて、私の子ども時代のバカ話はともかく、あなたの現状です。
あなた、ちゃんと自分の楽しいことに熱中してますよ。この相談、書くときに楽しかったでしょ?15歳とは思えない言葉の選び方、論旨の組み立て。どれもあなたの頭の良さと、日常的な論理訓練の成果です。
こういうこと考えるのがあなたは大好きだし、実はものすごく熱中してるんですよ。
でも、あなたのイメージの中で「時間を忘れて熱中する」というのは,子ども時代の遊びのままなんです。
だから以前のように友達と話してて会話の内容に熱中できなかったら、落ち込んじゃうんですよ。「もう自分は何にも熱中できないのか」って。
違います、あなたは「冷静に観察すること」に熱中してるんです。
だから観察眼や思考力がとんでもなく訓練されてしまった。その結果、より「普通のこと」が面白くなくなってしまった。友達と心からおもしろがることができなくなってしまったのです。
もう「普通のことを面白がるフリ」はやめましょう。あなたの大好きな「観察と分析」の面白さを人に語ったほうがいい。その方が自己の矛盾が少なく楽になります。
あなたは「ちょっと変わった子」と言われるかもしれません。変わってるのは事実なんだから、そこは我慢です。
私も同じ心の仕組みだから、わかります。私たちは二度と「プリンひとつで踊りまくって怪我する」6歳の頃には戻れません。
それでも、いいじゃないですか?
私は純粋さを失う代償として「悩みのるつぼ」に答える、という天職を得ました。冷静に見える化学者だって、顕微鏡をのぞく時、ゾクゾクする瞬間があります。
観察と分析も熱中すれば楽しいし、研ぎ澄ませば、いつかきっと誰かが必要としてくれます。あなたの冷静さと観察力を人の役に立つ段階まで高め、鍛えてください。
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