2010年3月に行なわれた「週刊ダイヤモンド」誌のインタビューのノーカット版をお届けします。
まだ2年しか経っていないのに、岡田斗司夫をめぐる状況は大きく変わりました。インタビュー本文を読む前に、少し予習しておきましょう。
冒頭にある『FREE』とは、クリス・アンダーセン氏の著書『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』のことを指します。インターネットではさまざまなものが無料で入手できますが、この流れは突然発生したものではありません。『フリー』では、多くの実例をもとに、現在のインターネット時代に至る流れを解説しています。
また、インタビュー中に頻繁に登場する『ぼくたちの洗脳社会』(1998年/朝日文庫)は、岡田斗司夫の文筆家としてのデビュー作です。版元品切れのため、書籍の形で入手するのは難しいのですが、全文が公開されていますので無償で読めます。詳しくはブログ記事「卒業特集『ぼくたちの洗脳社会』立ち読み歓迎!!」をご覧ください。Web形式の他、PDFでも公開されていますので、ご自身で印刷することもできます。
電子書籍の方がお好みの方は、株式会社ロケットから「ぼくたちの洗脳社会」として315円で販売されています。
さらに、2011年には『評価経済社会~ぼくらは世界の変わり目に立ち会っている』が出版されました。これは『ぼくたちの洗脳社会』の骨子をそのままに、古くなった事例やたとえ話を現代風に書き直したものです。こちらは書店でお求めください。
インタビューの後半には、社員は毎月1万円の給料を社長に払うという不思議な「会社」の話が登場します。もちろん「会社」というのは言葉遊びであって、本物の会社ではありません。実体としては「私塾」のようなものです。これが後の「オタキングex」で、現在の「FREEex(フリックス)」です。
FREEexメンバーが年間12万円の給料を支払うおかげで、現在岡田斗司夫の印税や講演料は全て無償です(交通費や宿泊費などの実費は別です)。岡田斗司夫は生活のために不本意な仕事を受ける必要はありません。一方、FREEexメンバーは岡田斗司夫からその思想や考え方などを直接指導してもらえます。そして、読者には「岡田斗司夫」のコンテンツを安価に提供できるようになりました(書籍価格における印税の割合がそれほど大きくないため、紙の書籍はあまり安くできないのが残念です)。
なぜ「無料」にこだわるのでしょう。それは、世の中が「貨幣経済」から「評価経済」へ移行しているからだと岡田斗司夫は考えます。そして、評価を得るにはまず「注目」が必要です。無料であることは、注目を獲得するひとつの方法です。
たとえばYouTubeは多くの注目を集め、多くの人が「ほとんど広告もないのに、どうやって儲けているのだろう」と思っていました。そして2006年、Googleが16.5億ドルで買収したのですが、その時に明らかになったのは、YouTubeの売り上げが1500万ドルしかなかったという衝撃の事実です。利益ではなくて売り上げですから、実際は赤字だったかもしれません。「どうやって儲けているのだろう」という質問の答えは「儲けていなかった」ですから、まるでコントのオチです。
しかし、ここで「Googleの買い物は失敗だ」と思ってしまうのは貨幣経済的です。要するに、GoogleはYouTubeの注目度を買ったわけです。評価経済的には、かなりの利益があったと思って良いではないでしょうか。
FREEexのあり方は現在でも試行錯誤を繰り返しています。短期間の間に方針が変わることもあります。そのため、外部から見ると混乱しているように見えることがありますが、本質的な部分では何も変わっていません。
本インタビューは、FREEexの仕組みを思いついた頃に行なわれました。現在では少し変わってしまった部分もありますが、その本質を理解するには良い参考書になるはずです。
FREEexの考え方は岡田斗司夫のためだけにあるのではありません。あなたのお気に入りの、でもあまり売れていないアーティストや作家にも、あるいは自分自身にも応用できるかもしれません。
それでは本文のスタートです。
岡田斗司夫「FREE」インタビュー(週刊ダイヤモンド)
※なお、ここまでの文章には、私(横山哲也)の私見も含まれており、岡田斗司夫本人の見解とは異なる可能性があることをご承知おきください。