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2012年04月04日

「僕らは評価経済の高度成長期に入った」 週刊東洋経済インタビュー ノーカット版掲載!

先日、岡田斗司夫の事務所にて行われたインタビューが掲載されました。

週刊東洋経済 2012年4月7日号(2012年4月2日発売)

P.94からの第2特集、「さらば、GDP」にて、岡田斗司夫/オタキングex代表「日本は“評価経済”の高度成長期に入った」がそれです。

インタビュー社員1あごに手


岡田斗司夫の理論の中核を担う「評価経済社会」という概念を、ガチガチの経済専門誌がどう料理したのか。
書店でみかけたら、ぜひお手にとってご覧下さい。

また、実際に行われたインタビューの文字起こしを、東洋経済さんから頂きましたので、掲載します。

インタビューの音声データはこちら
文字起こしではわからないニュアンス(実際、岡田も記者さんもかなり楽しげに話しています)を耳から感じてください!




岡田斗司夫インタビュー(「週刊東洋経済」4月7日号(2012年4月2日発売)

――若者に貨幣離れが起こっているのか。

起こっている。かつては、やる気もあって、社会にもの申す若い人というのは、カネ儲けをして、成功しようというのが一般的だった。しかし、最近の気の利く若い人は、そこを回避している。

 例えば最近、人事のコンサル会社の人と話す機会があった。
その人は、「最近の若手社員は、おカネを稼いで、いい暮らしをするという発想がない。
アメとムチでは動かない。動機が違う。彼らは平気で土日も会社に来ない」と言っていた。
実際、最近の若い人たちは、ボランティアに走る傾向もある。
つまり、やる気はあって働くのだけど、自分の楽しみのために使わない。それは、若い人たちに言わせれば、会社でおカネ稼いでも、そのおカネで楽しみに使うのだったら意味がない、ということ。おカネを使わないと、自分の楽しみを実現できないというのは、ネット社会ではすでにヘタクソな生き方になっている。

 若い人たちは、コストをかけずに、社会から楽しみを受けることができるというのを既に知っている。
かつては、おカネがあったら、家にシアタールームを作り、いい音響で大画面でDVDを見放題というのが最高の贅沢だった。
でも今やスマホでユーチューブを見たほうが、ソフトとして豊か。
これはもう、おカネを使う価値が「上げ止まり」となっている証拠。

 若い人はそこに気付いたので、叔父さん世代が叱咤激励して、「上を目指せ」「カネ稼げ」といっても、ピンと来ない。
本当に欲しいものは既に手に入れており、後は自分が社会に何ができるかという社会貢献の部分しか残っていない。


――前から、こういう時代が来るというのは見据えていた?

 「評価経済社会」というのは、15年前に書いた「僕たちの洗脳社会」のリライト版。あの時代で、もう経済成長は続かないという上限は見えていた。
人口が50年後に半分とか3分の2になったら、GDPもその分下がって当たり前。
それで、下がって困るといっているのは、東電の発表を聞いているくらい嘘っぽい。
GDPが下がったら、福祉予算が下がるといわれても、若い人は、福祉も国家という巨大システムで再分配したらムダに使われるから、自分たちで福祉システムを小さく作ったほうがうまく動くと答える。
もはや脅しが通用しない。
経済成長が止まったら、あらゆるところで、今の社会を維持しているものができなくなるというのが、嘘だとばれている。
15年前はばれてなかった。気が付く人はいたが、まだネット環境も未整備だった。
でも一気にネット環境が加速しているから、分かり始めた。
あと震災の影響も大きい。
震災の影響で、物質的に豊かな社会がどれほど無駄で脆いかが分かった。

 実際、「評価経済社会」という言葉を投げただけで、貨幣経済と違う経済があっていいんだと分かった。みんなそれで楽になっている。


――改めて「評価経済」とは。

評価が通貨のように流れる社会。
評価経済と評価社会とは違う。古代中国は評価社会。
おカネがあっても、家柄や名声がないと何もできない社会だった。
かつて日本は、身分社会で、武士という身分がないと何もできなかった。
それが終わって、学歴社会とかがあって、貨幣経済社会となった。
貨幣経済社会は有史以前からあるが、ここで話題にしている身分社会から貨幣経済社会という狭い意味での貨幣経済社会は、世界的な金融の流通があってからなので、19世紀後半から。

貨幣経済社会自体、100年後もなくならない。
ただ、今の学歴と同じくらいの意味になる。
身分は今、ほとんど意味がない。100年後にはもっと意味がなくなる。
学歴もかなり意味がなくなっている。20、30年後は今の身分と同じくらいの意味になる。
貨幣は、今の学歴と同じ程度の意味になる。
ただ、評価通貨を使ったほうが、使い勝手がよくなる。カネを使うのは、評価ないやつが、仕方なく、補助的に使うようになる。

もうすでに、貨幣と通貨は逆転している。
おカネ持ちの人は、おカネだけではうまくいかないのが分かっている。
なぜ逆転していると言えるかというと、端的な例は、カネ持ちはダボス会議に行けない。
評価がないと無理。日本でいちばん小遣いが自由に使えるパチンコ屋の社長が嫁にもらえるのは、伊東美咲と神田うの止まり。それ以上のいい女は評価がないとお嫁に来てもらえない。

 貨幣経済社会が広がった背景は、ネットの普及が大きい。
ネットによる個人のネットワークが広がった。
例えば、いい女にはネットワークがあって、友達がたくさんいる。
かつてなら、カネ持ちと結婚したら、それまでの友達とは縁が切れる。
新しい世界のデビューになるから、その人にとっては得なことだった。
でも今は、いい女がいまだに友達とつながりがあるから、カネ持ちと結婚したら、あの人のどこがよかったかの説明責任が生じる。でもカネでしょと分かる。
だから、本当にいい女はカネ持ちと結婚するのはリスクが高くて、得が少ない。
いい女は、自然とおカネだけの男より、評価がある男へ動いていく。

 インタビュー写真 机に手


――政府の役割はどうなるのか。

 政府の役割は神社みたいに小さくなる。僕らはいまだに、葬式出すとき、お寺や神社に相談して、葬式をあげてもらう。僕らの生活と密着している。でも意味はすごく低い。なので、これから数十年後の政府は、たぶん携帯会社より意味が低くなってくる。携帯会社の料金は実質税金。この世界で生きていくために払わなきゃいけない。携帯会社に払う料金と政府に払う税金のバランスがどんどん狂って、そのうち携帯料金のほうが高くなる。
 


――社会保障費はどうするのか

 社会保障とか失業に関して、政府が一手に面倒見るというのが、もう幻想。
それは共産主義と同じようなもの。
困っている人を政府が助けるというのは幻想。そうでなく、目に見える目の前の人たちを、個別の人たちが助けることに、評価経済社会ではなる。
その場合、助けたいと思われるようにならなければいけない。
そのために評価を稼がないといけない
。おカネを持っていても、評価が低い人は定価か割高でしか買えない。
評価が高い人は、定価より安く、あるいはタダで食べていってよという動きになる。

 政治家が世界から貧困をなくすという考え方より、社会起業家になって、手近の社員と社員の家族1万人を幸せにする。
その会社が1万社現れたら1億人が幸せになる。
でも日本を幸せにしようとしている1000人の政治家が、足を引っ張り合っている。
何の役にも立たない。

 でも今は移行期だから、しんどい。
この20年間はすごくしんどいと思う。
ただ、日本は世界に先んじて、貨幣経済の頂点であるバブル経済をやった後、ネットがいきなり普及して、若い人が働かなくなるという、評価経済に移行しつつある。
その意味では、世界の先端を走っている。


――評価経済のモノサシは何か。

作っている最中。
例えば現状であるのは、ツイッターのフォロワー数とか。あとフェイスブック、ツイッターなどの数値などの数値から算出した「クラウトスコア」とか。
これは株価みたいなもの。
1億円を持っているより、ツイッターで100万フォロワーがいるほうが、いろいろできる。これがほしいというだけで、手に入るし、提供する、という人も表れる。


――今後、企業はどう変わるのか。

 企業が社員に給料を払うのは、本来的に矛盾がある。
給料を払って、社員が合理的であるかぎり、社員は働き惜しみをする。
働かないほうが得。
どんなに働いても給料は上がらない。
そうすると、会社の中では最低限しか働かない人ばかりになる。
仕事の内容はどんどん変わるのに、今の人員の固定費で精一杯で、新しく新人を採れない。そうなると、人がなんで働くのか、というと、この人のため、と思わないと働かない。
「キャラクター化」しない企業は、おカネしか目的のない人しか残らない。
そうなると、ますます儲からなくなる。
 一方、「キャラクター化」した企業、つまり「この人がいるから働く」という人がいる小さい企業ばかりになる。
大企業がそういう顔の見える小さな企業に分裂していく。
次の社会は、国民の7割が失業者とも言えるし、評価社会で食べていける社会と言える。

 明治時代の小説読んだら、旦那さんが1人働いて、15~20人が周りで食えていた。
 サザエさんは、波平さんとマスオさん2人が働いて、7~8人が食えていた。
 豊かな社会。クレヨンしんちゃんは、2人が働いて1人が食べている。
 歴史が後ろに行くにつれ、働く人数によって養える人数が激減している。
 経済が成長しているように見えて、貧しくなっている。今後、豊かな社会というのは、5人に1人が労働してくれて、残りがありがたがる社会。
 失業しても、食べていける。毎日の楽しみもほとんど減らない。無料の楽しみが溢れているから。それは有料で楽しむ人が人口の数%いるから、無料で楽しめる。


――今後、モノが不足する?

 物流にコストがかかるから、モノが動かなくなるということ。
 例えば今、おいしいケーキが神戸にあったら、みんな取り寄せる。昔は物流しかなかった時代は、すごく物知りの人が神戸に行って、そのケーキを買って、デパートに教えて、そのデパートの売店が置く。
 これらは、神戸の店でしか買えないという情報の格差と神戸で売っているのを東京で売るという地域の格差が前提。
 でも、今は情報の格差も、地域の格差もなくなっている。物流はまだ必要だが、今後コストを避けるようになる。
 そうすると、一流店のレシピを分析して再現する人が増えている。物流自体を避けるようになる。


――これからの通貨はどうなるのか。

 リアルマネーと地域通貨と評価通貨に分かれる。地域通貨は都道府県や自治体が出すものや、Tポイントみたいなもの。それらは消費税が上がっても、税金がかからない。そういう地域通貨が一斉に出てくる。

 評価通貨は個人通貨でまた別。個人が自分で無限に発行できる通貨。だが、その裏付けが必要。例えば1時間岡田円を1万円で発行したとする。それは僕の信用によって成り立つ。
 そういう個人で通貨を発行するのは、これまでできなかった。
 でもハイパー情報社会では、それら全てをクラウドのコンピューターがやってくれる。
 個人通貨は、昔でいう「ツケ」。ツケが利く人は、評価資本を持っている人。ツケでモノを買うと、僕のツケを誰かが別のところで使える。つまり、ツケが流通する。


――個人は何をすればいいのか。

 単純に好かれればいい。
 5人に1人が働く社会では、4人はぶらさがる。
 その4人は嫌われなければいい。喜んで奢ってもらえる人になればいい。愛されニートになる、ということ。
 でも評価はどんどん変わる。だから悪いことはしてはいけない。楽園ではない。
 でも、かなりの人がおカネや仕事から自由になるという意味では、いい社会。


――経済成長をどう考えればいいか。

 リアルマネーと地域通貨と評価通貨を合算した総経済成長は続く。
 リアルマネーだけを見ていたら、痛い目を見る。
 だから総経済成長という概念をつくらないとしんどい。
 ここから先、人の係わり合い、物々交換などが発生しているのに、今のマネー経済ではこれが把握できない。
 これが0にカウントされるから、まるで経済成長が下がっているように見える。
 でも経済は活性化している。
 例えば、クックパッドのレシピを提供するみたいなことも、評価を上げたら、本を出してデビューできる。
 アマゾンとかでも、評価の高いレビュアーのところには、無料で出版社から本が送られてくる。

 日本は世界で先進国だから見本がないからみんな、びっくりしている。他国もいずれ、低成長で高齢化になる。
 でもギリシャみたいになるのではなく、リアルマネーの動きが静まって、地域通貨と評価通貨がこれからどんどん増えるから、経済成長は続く。

 僕らは評価経済の高度成長期に入った。






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