NHK BSでシーズンごとに特番として放送されていた「BSマンガ夜話」。
覚えておいでの方も多いと思います。あの番組で岡田斗司夫を知ったという方も多かったようです。
2008年9月の放送を最後に伝説となったあの番組が、なんとライブとして復活します!!
詳細はこちら。http://blog.freeex.jp/archives/51312423.html
復活を記念し、このブログでご紹介するのは、岡田斗司夫が自ら厳選した「マンガ夜話にまつわる思い出」のコラムです。
「イベントに合わせて、このコラムを公式ログに掲載したらどうだろうか?」と、頼んでもいないのに主張してきたことからも、その思いの強さがわかるというものです。
私のセレクトではないことが明確になったところで、ご紹介しましょう
ご存じない方も、「マンガ夜話、なつかしい!」という方も、「オタクの迷い道、なつかしい!」という方も、是非、お楽しみください!
もちろん、私も笑ってしまったんですけどね。
◆『オタクの迷い道』#115 下品は嫌いですか?(1)
NHK・BSマンガ夜話。
毎回一つのマンガをとことん語るトーク番組だ。もちろんギャグマンガも取り上げるが、ここで問題が生じることもある。
お上品なNHKが、下品なギャグをオンエアできるのか?『がきデカ』の回も、ちょっと問題になった。
ギャグが下ネタに集中している。こまわり君が股間を手ぬぐいで拭くと真っ黒に汚れる。
この「真っ黒な汚れ」、なまじ絵が劇画調でうまいから、インクの香り以外の、素敵なサムシングが漂ってくる。
しかし、この下品さは「少年誌でここまで描く!」という「権威への反抗」「表現への挑戦」のための下品なのだ。単なる下品ではない。
オンエア問題なし!
『ナニワ金融道』だって絵は下品だ。
いや絵だけではない。セリフもお話も、全て下品だ。
しかしそれも「人間の本質は極限であらわれる」という作者の主張のためであり、あえて露悪的に、えげつなく描いているだけだ。いわば「人の世の本質は下品にあり!」という作者の主張を表現するための下品である。虐げられたプロレタリアートの下品。
もちろん放映はOKである。
しかしなぁ、先日オンエアされた『嗚呼、花の応援団』は違うんだよ。
作者はただ単に、本当に下品好きなのだ。
「人間みんな、ウンコチンコマ○コが好きやねん!」という信念のもと、大阪特有のコテコテなサービス精神で、誌面一杯にウンコチンコマ○コがあふれているのだ。
僕だって下品マンガは嫌いではない。目を背ける女子には「見ろよ!」と背徳の喜びを伝授するにやぶさかではないのだ。
しかしここまで「下品大盛りツユだく」では、さすがの僕でさえ「いえ、僕はパリのエスプリが効いたユーモアが好きで」とか口走ってしまう。
それほど下品なのだ。
絵柄自体が、汚い。ヘタというレベルを越えている。
下品エキスをインクにして描いたような絵だ。セリフもキャラクターも背景も、「このシーンが」とTVでアップにするのは不可能な画面が頻繁に登場する。
というより、全てのページになんらかの問題がある。
中でも一番すごいのは、主人公・青田赤道を恋い慕う超ブサイクな少女・みすずちゃんである。
身長3メートル、体重三百キロ超。このマンガ史上最凶のキャラクターは、セリフの語尾に必ず「チ×ポ、キ×タマ、オ×コ」のどれかをつけるのだ。
もちろん、何の説明も意味性もない。ギャグですらない。
シリアスな場面でも「なんでうちのこと、好きになってくれへんのチ○ポ」と嘆く。父親が慰めて、そっと二メートルはある肩を抱くと、「尽くしても尽くしても、なんで振り向いてくれへんのキン○マ~!」とか泣き叫ぶのだ。
こんなものを天下のNHKが放映していいのだろうか?
案の定、生放送本番の直前、突然プロデューサーから発表があった。(続く)
(近況)
おかだとしお (gfg04070@nifty.ne.jp)連載が二つ終了してちょっと虚脱。「あっ、このままでは喰っていけない」などと焦り出す。出版界の皆さん、上品で面白いコラムの御用はありませんでしょうか?
◆『オタクの迷い道』#116 下品は嫌いですか?(2)
NHK・BS2の名物番組『BSマンガ夜話』の生本番30分前、楽屋に緊張が走った。
今夜の作品は『嗚呼、花の応援団』。どのページをめくってもウンコ、チンコ、マ○コがあふれる素晴らしいマンガだ。
こんなマンガをNHKが紹介していいのか?
「NHKではなく、私個人の見解ですが」
担当プロデューサー氏は今夜の注意点、と前置きして話し始めた。
「この作品を取り上げるからにはそれなりの覚悟をしました。作品を紹介する流れ上、不自然でなければ生本番中にチンポ、キンタマは致し方なし、とします」
「お~~!」
思わず、感動の声があがる。
僕と同様、他の出演者達も大丈夫か、と心配していたのだろう。NHKで本番中にチンポ、キンタマと言ってもOK!これほど男心をくすぐるシチュエーションがあっただろうか?
「よかった~。みすずちゃん、OKなんだぁ」夏目房之介が喜ぶ。
そう、問題はマンガに登場する史上最凶のキャラクター・みすずちゃんだ。
彼女はセリフの語尾に必ず「チンポ、キンタマ、オメコ」をつける。しかも主人公・青田赤道に惚れてシリーズ後半ではストーリーそのものを引っ張る重要なキャラなのだ。
彼女を語らずして『嗚呼、花の応援団』は語れない。
大月隆寛は「じゃあ、オメコはどうなんだ?」と訊いた。
「そう、オメコだよ!」と、いしかわじゅん。「オメコがダメなら意味ないよな!」
不自然なほどムキになって主張する。ダンディなふりして決めるところは決めるヤツだぜ、いしかわ!
「みなさんのおっしゃりたいことはわかります。しかし!オメコに関しては、今回は御容赦願いたい」
聞くが早いか全員が立ち上がって叫んだ。
「いくらチンポ、キンタマがOKでもオメコがダメならしょうがないよ!」
「セリフが紹介できない!」
「オメコはこの作品そのものに関わるセリフだよ!」
このままでは日本の放送文化の火が絶えるが如き大激論だ。あぁみんな本当に、本当にマンガを愛しているんだなぁ。
それなら僕も、と尻馬にのってオメコオメコと連発する。こんなにオメコと連呼したのは、中学二年の秋からこっち初めてだ。
しかし、さすがはプロデューサー、全員を一瞬で黙らせた。
「皆さんのお気持ちはわかります。しかし!ここでオメコと言ったばっかりに、シリーズを重ねてきたBSマンガ夜話が放映打ち切りになってもいいんですか?」
みんなもつきものが落ちたように納得してしまった。
たしかに『嗚呼、花の応援団』で、それもオメコが原因で番組打ち切りはイヤだ。イヤすぎる。
「オメコに関しては、お目こぼしください…」
思わずつぶやいた僕を思いっきり無視して、リハーサルは始まるのだった。
(近況)
おかだとしお (gfg04070@nifty.ne.jp)七月六日(木)19時より新宿ロフトプラスワンでこの連載のライブ版トークをやるぞ。「さわやか合コン部・その後」「セバスチャン来日」など濃いネタ満載だ。
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旧オタキングスペースポート「おたくの迷い道」#115~#116 より
http://go.otaking-ex.com/BPHuoB9S
「マンガ夜話」YouTubeアニメのまとめはこちら
http://neoberserk.blog39.fc2.com/blog-entry-163.html
「マンガ夜話」DVD BOX 、中古ならあります。
http://go.otaking-ex.com/zvSTgs1H
ムックは売ってるようです。
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