FREEexなう。

2011年12月31日

著作権、って好きですか?

『なんでコンテンツにカネを払うのさ?』(阪急コミュニケーションズ)の前書き全文を掲載します。
 せっかくこの本に注目が集まってるので、できるだけ沢山の人に読んで欲しいなぁ。

前書き

 著作権、って好きですか?
「いや、私は作家でもミュージシャンでもないし」と言わず、ちょっと考えて欲しい。
 映画館の冒頭で流れる、例の「映画が盗まれてる」「違法ダウンロードは~」の予告編もどき映像、うっとおしくないですか?
 私はあれがもう、嫌いで嫌いで(笑)
 監督や俳優やスタッフにはロクに権利配分も与えないクセに、自分たちの利権だけには血眼の業界を知ってるからかな?
 著述家のはしくれである私は、実はそんな「著作権」がどうも好きになれない。

 法律を認めない、というほどアナーキーなわけではない。でも「法律で決まってるから」と言われて100%納得するほどのお人好しでもない。
 たとえば所有権は認めても良いと思うんだ。農産物や家具などの「数日や数世紀で消えてしまう」という歴史上の消え物なら、所有もアリだと思う。
 でもね、土地や山林の所有権などと言われると、「ふざけんな!」と正直思わない?お前が森や川や湖を作ったわけでもあるまい。なのに、なにが「所有権」だ、と思っちゃう。同じく「漁業権」とかも好きじゃない。誰が釣ってもいいじゃんか!
 もちろん、このあたりの嫌悪感は,私自身の無知や不見識に根ざしたものだ。きっと識者にじっくり諭されたら、私も上の発言を恥じて土下座して撤回するかも。
 でもね。
 著作権は違う。私はいちおうもの書きで、それで生計を立てていた時期も長かった。本来、守られる立場だ。でも、その視点から見ても、矛盾が多すぎる。「権利者を守る」ではなく「権力者の利益のため」に使われることが多い。
 もちろん、面白い小説やマンガを書く作家たちが食えなくなるのは困る。が、自由なパロディや評論ができなくなるのは、もっと困る。
 あらゆる作家やクリエイターは、絶対に模倣やパロディから出発する。そこがクリエイティブの土壌であり、源泉なのだ。禁止すれば必ず枯渇する。既得権を守るために、土壌そのものが痩せてしまったら意味がないじゃないか。
 作家の「食いぶち確保」より、作家の卵や、作家未満ファン以上の人たちの「活動権の確保」の方が大切だと確信している。
 だから私は、いつも単純に考えていた。
「著作権なんか無かったらいいのに」と。

 そんな私に、日本で一番、著作権を敵にも味方にもして奮戦してきた「戦う弁護士」福井先生が、「アホか、お前!ガキみたいなダダをこねるな!」と怒鳴・・・らず、面白い具体例と意外な発想法で視野を広げてくれたのが,この対談だ。
 福井先生は、絶対に頭ごなしに否定しない。「そうはおっしゃっても、こういう流れが」とか「理念としては、岡田さんの言うことも共感できるんですけど、いま米国では」という具合に、すごく丁寧に、世界の最先端の知識や最前線の知見を教えてくれた。
 超強力な弁護士であり、著作権に関しては間違いなく日本一の専門家である先生自身は、とにかく著作権が大事とか考えていない。なによりも創作物や創作者こそが大事だと考えていらっしゃる。そのスタンスに、やっと私は理解した。
 先生は、作品の合法的所有者であるべき著作者や作家たちを守ろうとして、戦っている。その防具や武器が「著作権」なのだ。
 しかし、それに対する私のスタンスは、現状では「非合法的な模倣者」と見なされやすいブロガーや同人作家たちの活動を守りたいと考えている。著作権を「相手」に戦っているつもりなのだ。

 ところが、いざこの二人が話し合うと、あんがい対立しない。それどころか時々、「岡田さんのアイディアにも面白いところがある」とお互いに考え込んでしまう場面もあった。
 二人とも、「もっとおもしろい作品がみたい」という想いは共通なのだから、当たり前なのかもしれない。だから「誰もが自由に作品を作れるようにしたい」「ズルいヤツが作り手からすべてを奪わないようにしたい」と考えている。
 やっぱり、目指しているのは同じ方向だった。

 20世紀は核兵器とコンピューターの時代だった。
 そしておそらく、21世紀はネットワークとコンテンツの時代だ。
 この本は、いわゆる普通のコンテンツビジネス本に書いてある事例研究みたいな、大事かも知れないけど退屈なことは何一つ書いていない。
 イメージがふくらんで、ワクワクする話。「へ~!知らなかった!」と感心する話。
 ちょっとこれは、いますぐツイートしよう、と思っちゃう話や、今夜ブログで書きたいな、とか、明日誰かに話したいな、と思うような、面白い発想やアイデア、それに意外なビジネスモデルもいっぱい紹介されている。

 この本の中身は、引用されたがっている。
 早く読んで、人に伝えて欲しい。
 ツイートでも、ブログでも、会話の中でも、どこだっていいんだ。
 ぜひ,読者のあなた自身の意見を交えながら、どんどん広めるために読んでみよう。
 では、今世紀最大の怪物「著作権」と「コンテンツ」をめぐる冒険をはじめよう。


 岡田斗司夫


なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門
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