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2011年12月24日

日刊SPA!「現代のオトナが捨てるべきこと 『ネット、トレード、自分探し』」インタビュー・ノーカット版

週刊SPA!で取材を受けたんだけど、その内容の一部が日刊SPA!に転載されている。
 で、以下は長いけど元インタビューのノーカット版。
 「まとめ記事」というのが、元のインタビュー文字起こしから、かなりかいつまんで作らないと、あのように短くならないか、というのもポイントかな。

 取材は2011年12月6日(火)に行われた。


――岡田さんは20代でガイナックスを設立して、30代半ばで退社しますが、どういう考えで退社を決意したのでしょうか

岡田「辞めなきゃいけなくなったらパッと辞めるのが僕の考え方なので、今日の話にも繋がってくると思うんですけど、何をすべきかよりは、何をしないかの方が大事であって、することはほっておいてもしたくなるんですよ。おなかが空いたら何か食べたくなるけど、大事なのはおなかが空くことみたいな感じで、変な言い方になるんですけど、何をやらないかをハッキリ決めること。40歳になったら判断力もついてる頃だから、惰性でやっていることとか、やらなきゃいけないと思ってやってることなど、そういう癖はやめる。ダラダラ人生はやめると。向いてない仕事をしてると思うんだったら、その仕事を辞めるのも方法なんだけど、向いてない仕事だなと考えるのをやめる。俺の人生は向いてない仕事をするんだと。だって40歳までしてたんですよ。切り替えつかないですよ。だからダラダラ仕事をすることに悩まない、落ち込まない。そういう無駄なことはやめる。だから40歳はやめる時期ですよね。何をやるのかというのは、しょっちゅう変わるじゃないですか。やりたいことはどんどん出てくるから。いかに、やりたくないことから抜けるか、逃げるか。その逃げるかということをハッキリと意識的にやるのが40歳に入ってから、もう折り返し地点ですよ。残った時間は少ないので、サッサと1分でも早く」

――何かをやめることはリスクも生じますよね

岡田「リスクも生じるけどダラダラ何年も続けたら、それによる被害の総額の方が被るダメージよりも大きい。この女と、この先も付き合うのかとか思って付き合ってますよね。この女と3年付き合った時の目の前の真っ暗さ加減を考えると面倒くさくても別れられるはずなんですよ。3年先までのスパンで考えるというのが、30代後半ぐらいにならないとできないと思うんですよね。あと3年これを続けるつもりだったら、おやんなさいと。あと3年続けると考えて先が真っ暗になるようだったら、さっさとやめなさい」

――20代の頃は、そういう考え方はできなかったんですか

岡田「20代の頃はやんなきゃいけないと。20代の頃は視野のパースペクティブが広くないんですよ。時間的なモノが。だから今日何かをやったことが、来週成果が出てないと気が済まない。それで人生のサクセス本とかを読む訳ですよ。20代、30代前半というのは焦って。今やったことで来週とか来月に実りが欲しい訳ですよ。40代になると今やっとけば3年後ぐらいに結果が出るなとか、逆に言えば、これを続けていて3年後もこのままかと思ったらやめる。いつも飲んでる友達の顔とかを見てて、3年後もこいつらかと目の前が暗くなったらパーンとやめる」

――仕事に限らず人間関係もリセットが必要だと

岡田「そうやって自分のメモリーに余地を作らないと、みんなCディスクを98%使ってるんですよ。あと2%しか残ってないでしょう。で、何か40代になって切り替えたいとか、人生をもう一回考えたいとか、メモリーディスクの容量を半分空けないとダメなんですよ。せめて半分、本当言えば3分の2ぐらい空いてるといいんだけど、せめて半分空けましょう。そのためには98%の今使ってるモノの負担をガッと減らす」

――岡田さんが会社を辞める時は、その先に明確なモノは見えていたんですか

岡田「いやいや。僕は会社を辞めたのって、その時が人生で3回目ぐらいなんですけど、ごく最近でも2〜3年に1回は仕事を辞めているんですよ。その度に仕事のジャンルをガラッと変えてる。2年前に印税とか原稿料を貰うのをやめると決めたのもそうですけど、何かやめる時って、これを続けてる時の、さっきも言った、これは先がないなってことでやめていいんですよ。それでメモリーを軽くしてから考える。転職とは別なんですけどね。転職に関して言えば、次の就職活動をしてから辞めるのがお勧めなんですけど、そうじゃなくて掴みどころのない問題全般を、まずやめてから考えるのが正しいと思います」

――それは、できるだけまっさらな状態の方が次の考えが思い付くってことですか

岡田「そうですね。仕事に関して言えば僕は、次を決めてから辞めるという考え方なんですけど。新しく英語の勉強をしようかなとか、資格を取りに行こうかなって思う時は、まず時間を作るんですね。まず時間を作って、自分に空いてる時間を。金曜日の夜だけ空いてるから英語の勉強に行こうと思っても、それで勉強に行っちゃダメなんですよ。月曜から金曜の夜までを空けるようにするんです。それで1週間空いた状況を作ってみて、まだ英語を勉強しに行きたいんだったらいいんですけどね。たぶん金曜だけ空いてるから行こうというのは本当に行きたいからじゃないんです。小腹が空いたから手近にある食べ物をコンビニで探してるような状態で、本当に自分は何が食べたいのかという贅沢な選択をしてないんです。まず贅沢な選択というのは時間を作る。という訳で40歳になって皆さんにお薦めするのがやめること。えーと、三大やめることは……ネットと金儲けと自分探し(笑)」

――SPA!で特集するモノばかりですね(笑)

岡田「最近、僕はFX取引は中産階級のパチスロって呼んでるんです。パチスロファンであることは全然構わないですよ。FXもパチスロとしてやりなさいと。20万、30万かけた大人のパチスロですよ。いい大人がヨソのオッサンと一緒になって『行くぞ〜!』って女の子のアニメ声に励まされてスロットにお金入れてる場合じゃないでしょう。それなら家でカチカチやってる方がいい。だから中産階級のパチスロがFX取引を含めた短期的な金儲け。これらを21世紀の酒・ギャンブル・女と言ってるんです。たしなむ程度にとどめようと。20世紀までの男性は酒・ギャンブル・女をやる。やらないと人間の深みが出ないんだけど、たしなむ程度で身を持ち崩したらバカだよと。21世紀の酒は何かと言うとネットなんですよ。ズルズルと時間ばっかくって、しょっちゅうやってなきゃ気が済まない。ちょっと空いたら、すぐ酒を飲まなきゃいけないみたいなアル中状態ですよ。『ネットをやってない奴に何が分かるか』とか『ネットじゃない場所でどうやって本音を喋ればいいんだよ』とかいうような、いい感じで酔っ払っている。ギャンブルはFX取引。女は夢とか自分探し。女と言うのはどういうことかと言うと、本気で追っかけたりして、それまでの自分が積み上げたモノをパーにしちゃいけないよと。恋愛を否定しているんじゃないんです。女に入れ上げて自分の軸がブレちゃいけないってことなんです。自分探しをして自分の軸がブレちゃいけない」

――その心理に辿り着いたのは、岡田さんも40代になってからですか

岡田「もちろん30代までは振り回されていましたよ(笑)」

――逆に言うと振り回される時期も必要だと

岡田「ほっておいても振り回されますから。振り回されていい時期なんて絶対ないですけど(笑)。振り回される、振り回されないは頭の中のアドレナリンなどにも関係してくるから、どうやっても20代は振り回されるし、30代もそれが残っているんです。20代は戦争に行ってるんですよ。脳内アドレナリンの戦争に行ってるんです。30代はリハビリなんですよ。40代でようやく生活の再構築をやるんです。あと年齢的なことでやっておいた方がいいのは育児ですね。結婚とか恋愛をしなくていいから育児だけはした方がいい」

――その方が難しいですよね

岡田「いやいや。シングルマザーと付き合えばいいんですよ。育児はやった方がいい。育児をやらないと自分が分からないんですよ。自分という人間って、自分の成長と一緒に自意識があるモノですから、今の自分というモノが当たり前にできていると思うんですけど、子供と一緒にいると、俺もこういう時期があったなとか、子供同士のやり取りを見ていると、これ俺にもあったわとか、この時にどうすれば良かったなとか。あの時に親に言われたこととか人に言われたことが、やっと分かる。ようやく答え合わせができるんです。答え合わせを30代のうちにやっておくと、40代になって人に話す時の説得力にレバレッジがかかるんです。2倍、3倍になるんですよ。これは特に男性に言えるんですけど、子供を育てていない男の40歳を過ぎての説得力には、なかなか厳しいモノがある。結婚しなくても育児だけは、やっといた方がいい」

――たとえ子供がいても、仕事に打ち込みたいとか、育児を面倒がる男性も多いじゃないですか

岡田「仕事の負荷は年齢が上がるに連れて下がるんですよ。20代の頃って仕事が難しいけど、30代40代になるとどんどんやりやすくなってきて楽になるから、仕事に打ち込むのが逃避になっちゃうんです。それはやらない方がいい。40代は手を抜かないと、そいつは働いてないってことです。手を抜けば抜くほど誰かに任せてると。それが人を育てるってことになるんです。40代になって働いてはいけませんよってことじゃないんですけど、仕事の半分は指示で、半分が教えるぐらいがちょうどいいんですよね。自分でやってたら、ずっと自分のやり方しか分からなくなっちゃう」

――話は戻りますが、岡田さんは30代になってから文筆業をメインに活動していきますが、それは20代の頃から考えていたことではなかったんですか

岡田「いやいや。まず辞めてから。大事なのは辞めること。まず、もういいやって辞める。もう嫌だで辞めるのは残務処理なんです。やめる時に、1.まだちょっとやりたいな、2.もう十分だな、3.何か嫌になってきたな、4.もう嫌だ! この1〜4段階があって、1で辞めるのがベスト。4で辞めるのが最悪。でも1で辞める奴なんて、まずいないんですよ。僕らが考えるのは4で辞めないこと。せめて3、できれば2で辞める。まだちょっとやりたいなで辞めるのが本当にベストなんですけど。何でもそうですね」

――新しい仕事などにチャレンジする時、新たな人たちと付き合っていかなければいけないですけど、その際に意識したことは

岡田「下になるんですよ。30代、40代になると、だんだん周りが敬語になってくるでしょう。新しいところに入ると20代の若者でも自然と敬語で話せるんですよ。そうやって、いつでも腰を低くして入っていければ、どんなところでも生きていけるようになるし」

――変なプライドが邪魔をすることもありますよね

岡田「分からないところだったら変なプライドが邪魔できないですよ。ドイツとかに急に連れて行かれて、今日からドイツ語で暮らせって言われたら、変なプライドの出しようがないですよ」

――新しくやりたいことを見つけるコツというのは好奇心が大きいんですか

岡田「それに関しては僕の事例は役に立つとは思えないですね。僕は特殊な業界にいた人間なので、それがサラリーマンや公務員として働いている人に役に立ちそうもないんですけど。さっき言ったように仕事に関しては、辞める前に新しい仕事を見つけるというのが僕の考えなんですけど、自分の自由時間の使い方とか、勉強とか、友達付き合いに関しては、僕は一貫してまずやめること。やめて空き時間を作ってから何をしたいのか考える。じゃあ、どういう風なモノを見つけるかと言うと、見つけるのを今考えるとダメなんですよ。空き時間を作ってから! メモリー98%の状態で考えちゃダメ。まず台所を片付けよう。メシ作るんだったら」

――その空き時間に焦りや不安は生じないんですか

岡田「焦るとしたらやりたいことがないからでしょう。だったら、これまで通りの生活をやればいいじゃないですか。俺やりたいことないんだと、じゃあ、これからは皆の言うとおりに生きて行こうと」

――空き時間を作れば、やりたいことがないことにも気付けると

岡田「本当にやりたいことがないと分かったら、周りの人のために生きて行けばいいんだし。でも時間作った結果、何かやりたいことがポコッと出るんですよ、人間って。出なきゃ出ないで目出たいんですけどね。それをやっておかないと定年で退職した時に皆スゴく辛くなります。あれぐらい生命エネルギーが枯れてくると、本当に何もなくなるんですよ。膨大な時間だけがあって(笑)」

――やりたいことを見つけるために誰かをお手本にするって選択肢はどうですか

岡田「だいたい男がお手本にするような人って寿命が短いじゃないですか。キリストとか織田信長とか30代でポコポコ死んでいくでしょう。あんまりお手本にならないですよ。僕が、さっきから何でやめるのかって言うと、やりたくないことをやってることが、あまりにも多いからなんです。なので何かを手本にしてこうなるのではなく、周りからネガティブな手本を見つける訳です。これはマズいなと。大体そういう人はやりたくないことをやってるんです。そうならないために、すぐやめる。仕事ぶりを見てたら、やりたくないことをやってるなって分かりますよね。あんまり楽しんでないなと。自分も同じような生活をしていて、3年後もこれをやってるんだとしたら目の前は暗くなっていく。これ読んだ人に家族がいて、3年後もこれかって思ったらどうすればいいのかと。そうなると3年後も、この家族と付き合っていくことは分かってるんだから、今すぐ離婚するって方法もあるんですけど、これを味わわないためにはどうすればいいのか考えるんですね。たとえば、そういう風な感情をシャットアウトするのもそうですし、家族サービスというのを割り切って週に何時間作ると。平日は2時間ずつ分配して、休日は5時間とか。そうやって3年スパンで物事を考えて、その時に嫌になりそうなことは絶対にやらない。40歳を超えると気力がなくなるんですよ。なので頑張ればなんとかなるが無理になってくるんです。鬱で死んじゃいたくなるし。本当にやりたくないことはやめた方がいいですよ」

――キッチリ時間を割り振りして、家庭内でも楽しみを見つけていくと

岡田「楽しみを見つけられるならね。本当に真っ暗になるんだったら、さっさと逃げた方がいい。金だけ払って逃げた方がいい。幾らでも払うから一緒に住むのは勘弁してくれと。金で解決できるならと、全財産払っても逃げた方がいい。だって財布が空っぽでも、無料のコンテンツがこんなにあるんだから、現在ではお金がいらないですよ。先が真っ暗な家庭から逃れるためだったら全財産を渡して、毎日の小遣い500円ぐらいで暮らした方がマシです。小遣い500円でグリーで携帯ゲームをやってればいいんですよ」

――岡田さんは大学でも教えていますが、先ほどの育児のように、若者と接して気付く部分ってありますか

岡田「年代が下がっていくに連れて、僕は『背が低くなる』と呼んでるんですけど、時間軸に対する見通しが下手になるんです。たとえば僕らが子供の頃、勉強 した理由っていうのは今勉強しておかないと大学に行けないと1年先のことまで見えてるんです。子供の頃は背が低いから1年先しか見えない。小学生の頃っ て、もっと背が低いから夏休みなんて、いつまでも続くって思うんですよね。もっと子供になると今すぐじゃないと嫌だって言うじゃないですか。つまり子供に なればなるほど今すぐじゃないと嫌。明日なんて無限の遠さは嫌だと。ところが大人になると明日でもいいかと考えてる。僕のいう40代というのは3年先まで は見えるはずなんですけど、さて、これが20代だったらこの辺まで見えるというのが毎年じょじょに縮まっているんです。おそらく皆、背が低くなっている。 直立生物だった人類が、だんだん四つ足歩行に近付いて、目線がじわりじわりと低くなっている。その代り、今この瞬間ということに熱心ですね。今の友達付き 合いって“今”が大事だから、就職活動とかも考えるだけで嫌になるというのは、就職したくないからとか就職活動がしんどいからというのもあるんですけど、 それよりは今の友達付き合いの方が大事だという。背が高かったら、目線が高かったら、もう少し見えるんですよ。足元の友達関係が大事なのも分かるんですけ ど、その向こうも見えるのが、大学4年生だったら、ここまで見えて当たり前のモノが、僕は毎年付き合ってるから分かるんですけど年々じわじわと目線が低く なっている。ということは、これからの部下は年々目線が低くなるんですよ。将来とか、このままだったらとか、お前に部下ができたらという話が、どんどん通 じなくなっていく。1年毎に。この目線が低くなるのは特徴だと思って諦めるしかない。突然変異みたいに高い奴もいますけど、そいつは周囲から浮いているん ですよ(笑)」

――そういう世代の部下にも仕事を任せていくために、どうすればいいんでしょうか

岡田「仕事と自分を含めてのコントロールなんですけど、責任を持たないことですよ。どうなってもいいと思って任せるしかないです。俺は給料を貰ってるけ ど、俺を雇ったのは会社だから、こんな俺を雇ったのも会社の責任。こんな部下を雇ったのも会社の責任。俺はこいつに任せた。だから、なんとかなるだろう と。そうやって、ある程度の無責任性がないと40代って、頼りない20代を見てる訳じゃないですか。それで自分の仕事は分かるじゃないですか。そうすると 全部抱えて苦しい40代、任せて貰えない20代、間で右往左往する30代が残っちゃうんですよ。これをするぐらいだったら任せて、後は野となれ山となれで ドンと渡したら、部下は勝手に悩みますから。そのためにも時間を増やし、まとめると無責任になれですね」

――身を軽くすることだと

岡田「身を軽くしないと筋力が落ちているから、これまでの重装備で山登りができると思ったらえらいことになります。俺たちは軽いリュックとかナップサックとか軽装じゃないと行けないんですよ」

――30代で新たな仕事をするにあたって、新たな上司とどのよう付き合っていけばいいのでしょうか

岡田「好かれるように行動する。キャバクラに行って、自分がいいなって思ったコの真似をする。女になる。好かれるってことは、男にとって女になることですから。自分にとって好きだなってコの真似をしてみる」

――サービスの行き届き方とか

岡田「笑顔がいいなとか思ったら、その笑顔をやってみる。自分が気持ち良いことは、他人も気持ち良いですから女の子になってみて『エヘヘ』と言って可愛がって貰う」

――岡田さん自身、40代になってから、30代にやり残したなって気付いたことはありますか

岡田「海外生活をやってなかったなと。損したなと思いますけど、海外生活と育児とどちらをやっておけばよかったかというと、やっぱり育児の方がいいかなと」

――未知の体験をしておくことが重要だということですか

岡田「海外生活も育児も後で引きが強いんですね。自分の世界観が丸々変わっちゃうから一部屋増えた感じになるんですよ。二部屋に住んでたのが三部屋目がで きたぐらいの。ただ、それは終わってんみないと分からないんです。育児をやっている最中は、何でこんなことを始めちゃったんだろうと思うんですけど、一段 落して終わってみたら自分の中に一部屋増えたみたいな圧倒的な余裕が生まれるんです。誰かと話していても、お前の考えていることも分かるけど、でもこうだ よとか、こういう風に言ったら君は分からないだろうなとか、圧倒的な一部屋の余裕というのが海外生活とか育児とか大変なことで生まれるので、30代はあえ て負荷をかける年齢。まあ20代は戦争ですから。40代はそれまでかけた負荷を回収する時期ですから。40代から新しいことを、あんまりやらない方がい い。だから30代終わりぐらいまでに育児はやっておけってことですよ。一部屋増えたら無責任にもなれるし、時間も作れるし。いっぱいいっぱいの状況だった ら、どうやって時間作れって言うんだよって発想しちゃうんです」

――ただ岡田さんは40歳を過ぎてからも新しいことをどんどん始めてますよね

岡田「それはようやっと、やりたくなったら即やめるって癖がついたからです。やりたくなくなったらサッと。本当にそれによって、生活がかかってようが何しようが、絶対にそれが正しいです」

――どんどん決断力が早くなってると

岡田「1に近付いてるんです。まだ楽しいうちに俺はやめちゃうよと」

――これからやっていきたいことってありますか

岡田「僕は会社を作っているんですけど、自分の会社に行かないってことを先月からやっていて、膨大なムダ時間が生まれていて、ムダ時間で年がら年中ニコ生 で自分の番組を放送してます。大量に放送しています。見ている人が見きれないって悲鳴上げるぐらいに。そりゃそうですよ。僕は一日6時間でも放送できるけ ど、見てる側は6時間も時間作るのは大変ですからね、ザマーミロと思って(笑)」

――それは部下にいろんなことを任せて

岡田「それぐらい時間を作れるかですよ。作った時間で、本当にやりたいことなんてなくていいんですよ。その場でやりたいことをやってたら、その場の中で面 白いリンクが生まれるんです。自分の人生で本当にやりたいってことをできた人なんてなくて、たまたまそれが面白くて、うまくいったことが運ぶじゃないです か。それしかないですよ。人生をうまく運ぶコツというのは。できるだけ多層の小さいやりたいことを、リスクがなくて小さいやりたいことを無数にやって、う まくやったことだけを続ける。戦略を練って、絶対に行けるってことをやるというのはダメ」

――岡田さんは戦略を立てて何かをやっている印象ですけど、けっこう行き当たりばったりな部分も大きいんですか

岡田「行き当たりばったりをシステム化してるだけ。これが大事。行き当たりばったりをシステム化して一番大切なのがやめることなんですよ。やめて大量の空き時間を作ること」

――補足なんですが、先ほどの21世紀の酒・ギャンブル・女で、その一つがネットというお話でしたが、具体的にどんなネットの使い方がダメなんですか。情報集めにネットを上手く活用している人も多いと思うんですが

岡田「情報で成功してる人は本を読んでますよ。ネットはおやつ、主食は本。ダメな奴ほど、それが逆転していくんです。おやつで栄養価が取れると思うんです よ。それでビタミン剤を欲しがるんです。本をうまくまとめたやつが欲しいとか。まとめサイトないのとか、それは栄養剤なんですよ。そういうのに慣れると咀 嚼力が下がっていって、結局同じ情報を見ても分からないんです。これがネット中毒になっている人の特徴で、全く同じ情報を得ていても、読みが恐ろしいほど 浅い」

――取捨選択が下手になっているんですか

岡田「筋力が落ちているんですよ。本という無駄な紙の塊の中から、自分がここだって思うことを抜き出すのって脳の筋力なんです。筋力が落ちてるのに、どん どん歯当たりの良いモノばかりを出されてきて、それを咀嚼すればいいと思ってるんですけど、筋力が落ちてるから栄養価として取り入れられないんです。カロ リーばかり高くて脳が肥満化してるんです。なので主食が本、ネットはおやつ。電車などでも簡単ですよ。行きは本、帰りはネットと使い分けるんです」

――FacebookやTwitterも一緒ですか

岡田「役には立ちますけどおやつですね。というのも中味がないと、FacebookもTwitterも人は見てくれないんです。中味がないというのはどう いうことかというと、これだけ情報がフラット化してきたら、ネットを見て、たまたま見つけたからこうだって呟いても何も意味がない。そうじゃなくて考えて 面白いことを言わないといけないんですけど、考えて面白いことを言うためにはベストは体験なんですよ。体験の次に役に立つのが、ようやく読書。でも、そん なに体験はできないでしょう。なので読書。自分がこんなことをやったが一番、こんな奴が友達にいるが二番、その次がこんな本を読んだ。人に通用するのはこ こまで。それからは、どんどん落ちて行って、こんなテレビを見た、ネットでこんな情報を見つけましたと、落ちて行けば行くほど、どこにでもいる奴になっ ちゃう。それは酒ですから」

――ネットと同列に挙げていただいた自分探しや夢を持つというのは、どれだけ30代にとって毒になるんでしょうか

岡田「夢とか目標には、分かりやすいモノと分かりにくいモノがあって、サッカー選手になるって25歳ぐらいが限界じゃないですか。それだと二十代前半で、 ある程度は見切りをつけますよね。なのでサッカー選手になるという夢を持つ奴は生きていきやすいんですよ。二十代前半ぐらいで挫折するしかない。ところが 映画監督になりたいだったら果てしないですよね。こんな恋をしたいだったら幾らでもできるでしょう。それはマズいんですよ。年齢制限がないんですよ。本当 はとか、自分の夢はとかド真ん中を探すのはやめた方がいいですね。それは時々チラッと考えるのがいいぐらいで」

――育児を強調していたと思いますが、それは対人関係とか部下との接し方に余裕が生まれるというのが大きいんですか

岡田「僕は答え合わせだと思っているので、今の自分は何でできているのかという再確認が育児はデカいです。何で言うことを聞いてくれないんだろうというの は、もちろん部下と接する時にも使えるんですけど、俺はどうだったかなとか考えたり、何で母親があんなことを言ったのかが急にピンときたりする。その答え 合わせの瞬間があるので、ここが後で一部屋増えることになるんです。この経験が」

――今まで漠然と答えの出ていなかったモノが明快になると。客観的に自分を見ることに繋がっていくんですね。

岡田「その客観的に見ることがカウンセリングとかではなくて、完全に自分だけで見つける方法だから、かなり効きがいいんですね」

――育児の疑似行為として、例えばスゴく年下の部下を一人前にするとかはどうですか

岡田「あるとは思うんですけど、効きが違いすぎます。2歳児とか4歳児との経験が10だとしたら、若い奴を育てるというのは僕から見て1か2なんですよ。 そういうのを、よっぽど大量に熱心にやらない限り、子供を育てることには敵わないですね。それは、いくら都内の英語教室に通ってネイティブと話しても、2 年間のアメリカ生活には敵わないと同じなんですね」




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