12月12日発売の『プレジデント』誌に、岡田斗司夫のインタビューが掲載されています。
公式ブログにてそのインタビューの内容全文を3回に分けてご紹介いたします。
特集は「全予測!生き方、働き方」、岡田が担当した内容は「仕事編/企画に行き詰ったらどうするか?」という内容です。
今回は後編をお楽しみ下さい。
プレジデントB 職場のウツをテーマに本ができないかと思っておりますが、そこから先はあまり思いついてないです。
岡田 職場のウツっていうのは、なんでテーマにしたいと思ったんですか。
プ
レジデントB 身近で増えているのと、幾つか事例を取材したのと、あと、ちょっとこれはちゃんとやりたいなと思ったのは、ある精神科医の偉いうつ病学会の
先生に取材に行ったときに怒られまして。職場でうつ病の人がいたらどうしたらいいですかね、みたいな話を聞きに行ったんですけど、そう言われたら病院に行
けとしか言いようがないんだけど、
岡田 それはそうだ。
プレジデントB そもそも君たちはそれでいいのかねと。うつ病が
生れる背景に目を向けないでどうするの、ジャーリストが。みたいなことを延々と説かれたんですよ。たしかにそうだなと思って。そこからうつ病の裁判を起こ
してる人の取材とか、今までの判決文とかを全部揃えたり、というところまでやったんですけど、それを具体的にどんな形に書籍にしようかというところまで
は、頭が全然いってないです。
岡田 その本は、どんな人が買うんでしょうね。
プレジデントB 人と一緒に、職場で働いてる方ですね、ちょっと大雑把ですけど。
岡田 自分がウツ気味な人か、それともパートナーがウツ気味になっちゃった人なのか。
プレジデントA ウツの人ってなかなか本を読む元気がないのかなという気がします。ですから周りにウツの人がいる方が読むようが多いような気がしますが、いかがですかね。
岡田 ウツのメリットはなんでしょうね。ウツになるメリット。
プレジデントB 休める。
岡田 オオー、はい。
プレジデントA 働いてる人にとっては辛いかもしれないんですけど、休むように心がブレーキをかけてるのかなという気はしますよね。
岡田 じゃあ、早めにちゃんとウツになる方がいいんですよね。
プレジデントB ああ、そうですね。こじらすくらいいきなり悪くなるよりは、わりとライトなところでウツにかかってお休みできるという方がいいのかもしれないですね。
岡田 風邪の治し方で、ちゃんと熱を出して治すというのがあるじゃないですか。ちゃんとウツ出して治すというのは、あまり聞かないですよね。
プ
レジデントA 植木理恵さんという心理学者の方がおっしゃっているんですが、日本人は、ポジティブになれなれって言うと、自分の本当の気持ちとポジティブ
にならなきゃいけないという理想とのギャップに対処しきれなくなりがちなんだそうです。ブルーな気分な時はブルーな気分にひたる方がずっと回復が早いと。
そういう意味では、頑張らないで早めにウツにひたると回復が早いというのは、たしかに言えるのかもしれないなと思いました。
岡田 職場のウツに対する本だったら、「ウツでよかった」というタイトルでもいいですよね。
プレジデントB ウツになってよかった。
岡田 なってよかったと。早めに治すというのもそうなんですけど、ウツになったおかげで頑張りすぎずにすんだとか、そういうようなこと。あとウツかなと思っ
たら、早めにウツにちゃんとなっちゃおうというやり方ですよね。そういう考え方でどうですかっていうふうにお医者さんに聞いたり、ウツから立ち直った人
に、どうでしたかというふうに聞いてみたりすると、あんまりこれまでっぽくないウツの本ができることも。でもそれは単行本よりも雑誌向けの切り口ですよ
ね。どうやれば単行本になるんだろうな。単行本になるためには……
プレジデントA そう言えば、『ツレがうつになりまして』と映画があり
ますけど、あの原作本(マンガ)のあとがきで、旦那さんがウツになったことによって、これまで頼りがいのある明るい旦那がいたからこそ、自分は今まで愚
痴っぽく後ろ向きでいれたということに気がついたというふうにおっしゃってるんですね。旦那さんがウツになって頼るものがなくなると、自分で頑張るしかな
くなるので、前向きにならざるを得なくなって、自立することができて、私は変わったみたいな感じのことが書かれていたのが、すごく印象的で。ウツになった
意味みたいなことを自分の中に取り込んで次のステップに進むと、トータルの人生では全然マイナスじゃなくて、むしろプラスの転機にできるという。
岡田 ウツ本の「いい話コラム」として今のをはめこんでいくわけですよね。いい話コラムがないと、やっぱりと。
プレジデントB プラス面に光をあてるというのは、全然頭になかったですね。取材に来て、こんなことまで教えていただいていいのかなという気がしますが。
プ
レジデントA 『脳を鍛えるには運動しかない』という本があって、それちゃんとまだ読んでないんですけど、体を動かすことが、あらゆるウツっぽい状態から
抜け出す基礎訓練というか、体からのアプローチの方がよっぽど効くみたいな、心の持ちようというよりも体の問題であるみたいな、そういう本で。治療法のな
いウツのなかで、このことをやれば元気になれそうだという意味で、すごく希望を持てる本らしいです。
岡田 僕、自分自身が時々ウツになるんですけれども、対処法が、プールの底方式っていうんですけど、
プレジデントA プールの底方式。
岡田 ウツって落ち込むじゃないですか。落ち込んだときに底が見えないのがまずいわけで、僕なんかもそうなんですけど、できるだけ早く底に行きたいんです。
ウツになりかけて、これやばいなと思ったら、早いこと落ち込もうとするんですね。人に会わないようにして、俺はダメ人間だと思って、仕事を一切せずに、こ
れまで読んだ漫画とかを読んだりしてじっとしてると、どんどん落ち込むと。ずっと落ち込んでると、プールの底に手がつく瞬間があるんですね。手がついた
ら、ここが最低点だから、ここから先上がるしかないんです。で、さっきの風邪の話じゃないんですけど、熱が何日も続くとしんどいんですね。ザーと熱を上げ
て下ろしちゃおうという考え方に近いんですけど、僕のウツの対処法は、早いこと底まで行って、早く上がってくるということなんです。それを途中で治そうと
すると、僕もすごく苦しかったことがあるんですけど、ずっとウツが続くんです。そうじゃなくて、最短距離で潜ってドーンとプールで手をついてザーと上がっ
てくる。このイメージを頭の中で持っておく。ウツっていうのは潜るんだと思って、底に手をついたら、後は浮上するだけというふうに考えておいて。下手に精
神的な体力ある人は、肺活量が多いから長いんですよ。
プレジデントB なるほど。
岡田 というですね、ウツというのはどういうことなのかというのを体感的に分かる話とかそういうふうなものを、最初の方で図解ページで入れておいて、潜って手をついて上がるとか。
プ
レジデントB 手をついて上がるというのはすごく分かりやすい例えですね。ある自動車会社に勤めてる友達がいるんですけど、業績悪化と共に精神を病んでし
まって、もともと真面目なエンジニアでそこそこ精神力のある奴だから、落ちないように頑張ろうとしてこじらしてる感じなんですね。いまその話を聞いて、そ
れをすごく思いました。
岡田 いかに早く無責任になるかですね。本当に、さっきの企画のやつも、考え方のポイントはいかにこれを「俺が考
えなきゃいけない」という部分からリリースしてあげることなんです。自分が聞いた相手は、最初からそこから解放されてるから、いいことを言ってくれるわけ
ですよ。無責任極まりないことを。
プレジデントB 立場があることによって語れなくなることってありますよね。そこから離れることが、企画を飛ばすときには重要なんですね。
岡田 僕ら二人は、その本を書くつもりがまったくないから、気楽にポンポン。この気楽なパワー。
プレジデントA 責任ないことに口出しするのって楽しいですよね。
岡田 そう。人の本ほど面白いものはないですよね。自分は一番辛いから。
プレジデントA 責任が生じるから。
プレジデントB 取材したまま全然進んでないので、申し訳ないなということばかりを感じていたので。……こうやってやっていくわけですね。
岡田 そうですね。だから、取材してる相手にもですね、どんどん聞いちゃえばいいんですよね。たぶん取材されるような人って、いわゆる知識人系が多いですよ
ね。で、頭を使う話を嫌がる奴は絶対にいないですよ。みんなこんなのゲームだと思ってるから。それはもう、レストランのオーナーだろうと何だろうと、こん
な話、喜んでポンポン喋りますよ。その方が、後でこんな話があったんだけど……という関係も作りやすいし有利ですし、自分の企画はどんどん人に言うに限
る。
プレジデントB よくアイデア取られたらどうしようなんていう話も聞きますけれども、言うメリットの方がはるかに大きい。
岡田 多いです。あとアイデアはさっきも言った通り、人間と人間の間の関係ですから、それは恋愛みたいなものですから、その場合はもう寝とられたみたいなもので、俺のアイデアがあんなに美人だから寝とられちゃったよと思っておけば、
プレジデントB たぶん、そうやっていっぱい人の間を作っていくことが、長期的なこととしては重要なんですね。
岡田 そうですね。さっきの話を真面目に答えると、たぶん、取られる損より、得られる得の方が常に多い。だからアイデアというのは、人に話してる限り常に黒字なんですよ、。人に話さないと絶対に赤字になっちゃう。そのアイデアにかける脳の使用量の方が、生みだすものよりも絶対に大きくなっちゃうから。
プレジデントA 企画の出し方一つでこれだけやり方があるのは、岡田先生は、そういう手法に関して常に考えている感じなのでしょうか。
岡田 いや、状態を保つですね、さっき言った。
プレジデントA そうか、手法より状態の方ですね。
岡田 状態ですね。だから、格闘家なら「どんな技があるから強いんですか」じゃなくて、「どういう訓練を毎日してますか」なんです。強さというのはそれで決まるわけですね。いつも思いついたら人に話す。で、同じ人間とばかり話さないようにする。考えたことは紙に書いて忘れる。
プレジデントA すごい必殺技を持ってたからといって強いわけじゃないんですね。
岡田 そうです。必殺技は使える場所が限定されてますから。あとは、考え方自体に速度を自分でつけてみる。普通の人間は「中速」で考えてるんですよ。トルクもそこそこ、スピードもそこそこ。そこに「高速」と「低速」という概念を導入する。低速というのは何かというと、まず、人が話したときにすぐ返事をしない。一回同じことを繰り返して、具体例を自分の中から引きずり出す。だから、「その時辛かったんだ」と言われたら、「辛かったんだ」といって、自分の中で辛かったエピソードを無理やり出してくると。これが低速なんですよ。トルクが強い、そのかわり回転数が遅い思考方法ですね。
で、高速モードというのは何かというと、相手が話し始めたら、それに対する答えを常に三つくらい考える、みたいなやり方ですかね。芸人さんが、ひな壇とかの上でやってるのはこれに近いです。素人とかが何かを言いだしたときに、いい突っ込みを返さなきゃダメですよね。その時に何をやるかというと、この話がどこに落ちるのか、もしくは落ちないのかというのをザーと考えるんですよ。これはもう回転数勝負なんですね。戦闘思考力と僕は呼んでるんですけれども。こういう高速ギアと低速ギアと両方を持ってたら、頭がうまく回ります。いつも中速で考えてるとしんどいんですね。すべて一つのトルクとかでやらなきゃいけないから。フランス人がよくやる手で、「それは違う、違う理由は三つある」と言いながら三つ考えるという、あれも彼らの高速思考を鍛える技なんですけどね。これは、思考力を鍛える上ではいいんですけど、それとは別に低速を鍛えると、女の子の話を聞けるようになる。
プレジデントB 低速思考というのは、あんまり今まで聞いたことがないですね。
岡田 その三つを使い分けられるとすごい強いんですよ。この場合どれだろうなと。なんかもう若いお兄さん、お姉さんで偏差値のいい大学の人と話してると、みんな高速ギアしかないと思ってるんですね。僕なんかと話してると、ちょっと偉い人と話すもんだというふうに向こうも身構えるもんだから、自分の頭の良さアピールに必死になって、ギアを高速に入れっぱなしだから薄い、薄い。そんな高速ギアで話したら人間、誰でも薄っぺらくなるから、ちょっと君、もうちょっとリズムをつけようよって。緩急をつけようよって。
プレジデントB そうか。スピードだけでいったら、ペラペラ喋るけれども内容が薄くなっちゃいますよね。
岡田 そうなんですよ。でもそういう会話が必要な時もあるから、緩急なんです。
プレジデントA 紙に書いて忘れることについては先ほどご説明いただいたんですけど、紙に書く行為そのものについては、どういう働きがあるかをもう一度教えていただけますか。
岡田 思考の肉体化ですね。
プレジデントA 思考の肉体化。
岡田 はい。
プレジデントA 定着させるるような感じですか。
岡田 キーボードだったらお祓いができないんですよ。
プレジデントA お祓いができない?
岡田 お祓いができない。何か考えるということは、それにとらわれてるということですから、お祓いしなきゃダメなんですね。で、パソコンの画像で仏壇を開いて手をあわせる奴いないじゃないですか。面倒臭くてもお墓の前に行きますよね。それと同じで、なんか肉体的に何かの儀式をやらないと終わらないんですよ。手で書くというのは、台所に行ってコーヒー入れるみたいなもので、考えてることを収めるというのかな。次のページで白いノートを開くというのは、すごく脳にいいというか、お祓いの儀式としていいんですね。おまじないみたいなものです。効率を考える人は、ついつい全部パソコンでやっちゃうんですけどね、スマートフォンとか。
プレジデントA 区切りになるような感じ?
岡田 そうですね。指先で書くことによってちゃんと、本当に僕お祓いみたいに考えてるんですけど、
プレジデントB お祓いというイメージなんですね。肉体化。
岡田 肉体化。思考が肉体化されていく。
プレジデントA 書くと定着するような、忘れないようなイメージがあるような……
岡田 忘れないではないんです。忘れてもいい。なんか忘れないようにすることのメリットより、忘れないことのストレスのデメリットの方が絶対多いんですよ。
プレジデントA データが軽いとコンピューターの働きがいいというのと同じことなんですね。
岡田 僕もここに来て話をする時には手ぶらが一番いい。なんか準備していっぱい付箋をはった紙を持ってきて話すよりは、手ぶらで来て話せる状態を作ることの方が絶対いいんですよ。
プレジデントB 講義の時は、死ぬほど準備してテンション上げまくって臨むって書かれてましたけど、岡田さんほどの人でもそのくらいやるんですね。
岡田 講義の時はそうですね。一時間半の間に飽きられたりすると、授業って向こうに「聞いたら損だな」と思わせたら終わりなんですよね。これは面白いなという前のめりな姿勢というのを、講演会って自分で金を払って来てるから一生懸命聞いてくれるんですけど、授業って親が金を払い終わってるから、聞けば損なんですよね、学生にしてみたら。その人たちに聞く気にさせるのはかなりしんどいので。これは本当に準備しますね。
プレジデントA あと、途中で合いの手も入らないですよね。普通に対面して話すのに比べると。
岡田 「質問」といっても手は挙がらないし、それをいかに面白く持っていくかですよね。
プレジデントA 一人で全部一時間半保っていかなければいけないというのは、大変なことですよね。
岡田 そんな感じで、だいたいよろしいでしょうか。
プレジデントAB ありがとうございました。