FREEexなう。

2011年10月02日

BRUTUS 10/1号 岡田斗司夫インタビュー全文(後編)


Q 考え方が違うルークをですね、自分の陣営に引き入れようとしたのは、改革者の芽を摘むためなんでしょうか。

A うーんとね、ルークをあくまでも引き入れたいっていうのは、アナキン、ダースベーダーの意志ですよね。で、パルパティーン、皇帝がじゃあルークでいいかなと思ったのは、まずダースベーダーよりルークの方が若い、エネルギーがあるっていうのもあるんですが、同じことをさせたかったからですね。僕のこれはもう考えなんですけど、アナキンの父親というのは、デューク伯爵さんですね。で、何でかというと、『スター・ウォーズ』のⅠ、Ⅱ、ⅢとⅣ、Ⅴ、Ⅵというのは同じ構造になっている。

 で、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで最後に父を殺す息子。それを銀河皇帝の前で自分の父親を自分の息子に殺させて、それを銀河皇帝が見てにやりと笑って、そしてその息子を悪の道に引き込むという、この原罪ですね。父親を自分の手で殺してしまった息子を自分の陣営に引き入れるというのが、彼の成人の儀式というかな。通過儀礼ですね。

 というのはなぜかというと、パルパティーン自体が、自分の師匠を殺すことによって、フォースの暗黒面というのを得たわけで、父親殺しっていうのは『スター・ウォーズ』全体に流れるテーマなんですね。その父親殺しの輪廻を誰が断つのかというのが、ⅠからⅥの大きいストーリーなんです。

 だから、『スター・ウォーズ』のⅥで、俺は父さんを殺さないと言ったルークというのは、Ⅰから延々とやられている父親殺しの連鎖がようやっと断たれた瞬間だから大クライマックスなんですけど、あの頃になると、Ⅵを作った頃のジョージ・ルーカスの演出力というかな。構成力がちょっとズタボロだったので、なぜかよく分からないという。その後、皇帝が手から怪光線を出して変なシーンになっちゃったので。やろうとしているのは、本当にその輪廻を断とうとしていることなんですね。同じことの繰り返しというのを。

Q なるほど。じゃあルークを船内に呼んで戦わせて、アナキンを殺させようとしたと。

A そうです。あれは『スター・ウォーズ』のⅢでやっている、アナキンとデュークがやって、殺さなくてもいいんですけれども、パルパティーンが殺せと命じて殺させたっていうのは、本当に対応しているシーンなんです。自分の父親を殺すという。それもアナキンの方は、自分の父親と知らなくて殺してしまうんですが、ルークの方は自分の父親と知って殺す。何でかというと、今回妹がいるから、人質がいるからなということで、何かパルパティーンとしては、もうOKのはずなんです。

 つまり、人間というのは最終的に欲望で動くはずだからOKのはずなんですけど、ルークは何の間違いか、正義で動くというですね、かわいそうなやつなんですね。結果、ルークは友達がいないっていうですね。全部終わってしまったら、ルーク・スカイウォーカーは、知っている人間は全部結婚していたり、一人で何か友達が幽霊とかっていう。

 あの後、ジェダイによる銀河の復興というのはないから、結局何だろうな。パルパティーンが作ってくれた銀河帝国システムというのを、もう一回分化して共和国に分けていくしかないんですね。だからちょっとまずい状態に戻っちゃう。銀河は何だろうな。戦国時代に戻るのだと思います、あの後は。強力な中央集権がなくなっていったので、群雄割拠の時代に戻ると。だから、多分あの後一〇〇〇年ぐらい銀河は大混乱。

Q スピンオフで描かれている小説のストーリーもそんな感じですよね。

A 多分もっと人口が減ります。その意味では、パルパティーンが良かったっていう話になっちゃいます。

Q ハン・ソロとレイヤーの子どもたちもお互いに争ったりして。そういうところがなかなか、あれで混乱は終結していないという。

Q 今、目的設定から管理粛正まで伺ったんですが、本では最後、銀河征服その後ということで、支配とは何かというところで答えが出ていましたが、改めて『スター・ウォーズ』作品から見る支配とは何かというのを。

A そうですね。銀河を支配した後の銀河皇帝のしんどさたるやすごいですよね。だってデススターの建築が遅れているだけで、現場に行って怒らなきゃいけないんですよ。それも自分の信頼出来る部下がダースベーダーだけで、ダースベーダーがまず行って怒って、俺より銀河皇帝はもっと怖いぞっていう、何かヤクザの若親分みたいな。で、銀河皇帝が行くということをやっているんですけど。結局それで前戦まで行ったおかげで死んじゃったわけです。それってあれですよね。現場に行って販売している孫正義みたいなもので、営業が上がらないって、ソフトバンクの先頭に立ってiPhoneを売っている孫正義ですよ。おまけに社長が一番能力が強いものだから。

 だから、何でしょうね。パルパティーンがやったことは、銀河を征服するにはいいのですが、運営するには向いていないんですね。征服するにはこういう戦略を立てて、まずジェダイの力を使って、クローンの兵隊を山ほど作って、そのクローンの兵隊が自分の命令を聞くというコードをあらかじめ埋め込んでいてという、こういう完全なクーデターとしてはうまくいっているんですね。でもそれをやった後どういうふうにやって銀河を運営していくのかに関しては、やっぱり彼にはビジョンがなかったので、結局過労死のような形で、次から次へといろんな前戦を回って。多分デススターだけじゃないんですよ。

 だって、銀河皇帝がこんなにぜいたくで楽しい暮らしをしているという描写は、一秒もないんですから。やったことは、宇宙中のいろいろなところに自分の銅像を建てたわけで、それも自分が死んでから間髪を入れず倒されているぐらい憎まれていますから。人気はないわ、楽しみはないわで。

Q 何が足りなかったんでしょう。

A そうですね。何が足りなかったんだろうな。ばかになれなかったんでしょうね。いっそばかになって、自分が子どもを作って、山ほど高級ハーレムみたいなところを作って、子ども産ませて、生ませた子どもを銀河のいろんなところにやって、そいつらが地方の領主としてやるっていうですね、本当に何だろうな。徳川の大奥システムですよね。

 子どもをいっぱい産ませて、その子どもたちが各藩に養子として入り、もしくは婿として入り、嫁として入ることによって、徳川家の血というので日本中を統一したのと同じようにですね、そういう余裕でもあれば、徳川幕府のように少なくとも三〇〇年ぐらいはもったと思うんですけど、何が悲しいかって、銀河帝国って三〇年ですから。史上最短のあれ、明智光秀の三日天下ですよね。銀河の三日天下。一〇〇〇年掛けてシスは準備して、三〇年で終わりという、短命だったですね。足りなかったのは余裕。いつまでも前戦を回って、自分が叱咤激励をして、誰かに任せることも出来ず。

 『スター・ウォーズ』のⅣ、Ⅴ、Ⅵを見たら、結局帝国軍でも、上級管理職に行くと、船長クラスに行くと有能な人は結構いるんですね。いるんですけれども、それをほんのちょっとのミスで、おまえは駄目だと言ってダースベーダーは殺してしまう。それは何かというと、自分が成り上がっていた時のやり方をまだやっていた。だから、経営者っていうのは、会社を立ち上げる時と会社を運営する時とで、人格が変わらなければいけないんですね。立ち上げる時というのは、あくまでも冷酷非情にでスピード優先、で、能力の優れた者をどんどん抜擢すると。

 ところが、会社がいざ安定期に入ると、年功序列システムをやって、たくさん新入社員を入れて、中で無能なやつですら有能にするシステムを考えてという運営に入らなければいけないんだけど、運営に入ることが出来なかったので衰えていったシステムですね。
 だから、どうすれば良かったのかというと、よその銀河を侵略すれば良かったんです。これはもう明らかですね。つまり、織田信長型の有能な人間を採り入れて、次々と部下に競争させるというシステムを採ってしまったら、それを受け継いだ秀吉は朝鮮出兵しかやることがなかったんですね。

 あのシステムというのは、日本の国内ですべて統治が済んでしまったらもう無理なんです。だから徳川家康は、完全に静的、スタティックな世界を選んだ。で、秀吉はそれを、織田信長から直接やり方を聞いていたので、じゃあこの部下に次々と報賞を与えるやり方というのは、領土が増えない限りは無理だと。もうこれは明へ上っていくしかないということで、朝鮮から始めて中国へ派兵して勢力を伸ばすというのを考えていたのですが、パルパティーンがやったのは、銀河帝国をやったらよその銀河へ侵略していけば良かったんですけど、そこまでの技術力はなかったんですね。ローマ世界の限界というやつですね。

Q 今、どうすれば良かったで、静と動の二つの回答がありましたが。

A どっちも失敗しましたね。あらゆる進歩とか発展を辞めて、競争をやめてというのは、自分がかつて否定したジェダイのやり方だから出来ない。動のやり方は、これから更に侵略を広げて、一つになった銀河帝国というのを使って、よその銀河へ攻め込むというのがあるんですが、多分それは遠すぎて技術的に出来ない。

Q どこの組織でも、立ち上げて大きくしていく時に、強力なリーダーがいて。

A カリスマ型の社長が必要なんですが、二代目だとそういうのは邪魔なんです。

Q もしくは、その社長も二代目に行く前にある程度功成り名を遂げて大きくなってしまった時に、その後組織の運営とか。

A パルパティーンが引退していて、もっといいやつが銀河皇帝になっていれば。だから、何だろう。カエサルの後はアウグスティヌスっていうですね、そんなに戦争は強くないんだけど、そこそこいいやつが出てきたのと同じで、初代は英雄で二代目は管理者なんですけれども。で、いや、ローマ帝国は何百年か続いたからうまくいったんですが、パルパティーンは管理者になれなかったので、相変わらず前戦に行って恐怖をばらまくしか出来ないんですね。

Q 一番弟子のベイダーも。

A 同じなんです。ベイダーも部下を褒めて育てればいいのに、相変わらず絞めることしかやっていないから。船長にまで上り詰めても、一回失敗したら殺されちゃうわけです。あれはいかんですね。売上が一回でも下がったら編集長クビになるって言われたら、誰もやらないですよ。

Q 中間管理職を育てるのに失敗した新興企業みたいな。

Q 銀河帝国軍って、人間たちの軍隊に女性がなぜいないんだろうっていう。

A あれはローマでしょう。基本的に戦闘員は。あとコルサントの建築様式って、完全にローマですよね。取りあえず石柱があってという。そのルーカスがやりたいのは、多分アイザック・アシモフという人が書いたファウンデーション、『銀河帝国興亡史』っていう小説があるんですが、これの映像リメイクみたいなものをすごくイメージしているんですね。アイザック・アシモフ自体がやっていたのが、第二次大戦後すぐぐらいに書かれたSF小説なんですが、はるか未来の銀河帝国を書いているんですけど、それがもう完全にローマ帝国の末期になっているんですね。で、それがどう滅びていくのかというのは、ギボンの『ローマ帝国興亡史』というのをベースにして、『銀河帝国興亡史』を書いたんです。
 これに特徴があってですね、一切宇宙人が出てこないんです、アイザック・アシモフが書いたのは。というのは、ローマ帝国をやりたいわけだから、そういう変なスペースオペラみたいな要素を入れたくないということなんです。ルーカスはスペースオペラがやりたかったから、宇宙人はいっぱい入れるんですけれども、逆に言えば女性士官はあまり入れられない。反乱軍にはいるんですね、結構。最後の『スター・ウォーズ』のⅥで、逆襲する時の司令官は女性ですからいるんですけど、銀河帝国軍にはいない。それも白人の金髪っぽいやつらばかりがいるっていう、あれもやっぱりローマ帝国だからです。

Q みんな白人ですね。

A それに対して、ルーク側たちはいろんな民族、いろんな種族がいるというのがうまくなった。だから、本来あれは男性しかいないというのと同時に、異星人がいないっていう。人類だけで出来ている純血主義的な集団なんですね。

Q 今、ローマ帝国と言われてちょっと思い出しましたけど、エピソードⅠあたりの共和国時代に奴隷がいましたよね。あれはちょっと面白い。

A ああ、そうですね。しかし、人類純血主義って面白いですね、銀河帝国が。

Q クローンももっと何かいろいろ細胞を入れてパワーアップとか出来そうなのに。

A それをしちゃうと自分より強いやつらばかりに。遺伝子操作をやると、自分よりもフォースが強い人間が出来てしまうので、それは嫌と。

Q これを何とか講義形式に。教授のレクチャーという体で。まさしく講義で楽しく分かるというところにうまく流れていく非常に面白いお話が。ジェダイ評議会が軍部っていうのは、今までもやもやしていたんですけど、そうやって一言で言っていただけると、非常に腑に落ちる。

A 広東軍の独走ですよね、完全に。『スター・ウォーズ』はⅠ、Ⅱ、Ⅲでサラッと行っていますけど、むちゃくちゃするな、こいつ、っていう。

Q 一種の陸軍の参謀本部みたいなもので。

A だから『スター・ウォーズ』のⅣで、オビワン・ケノピーが帝国をあしざまにって言っているけど、おまえ同じことをやっていたじゃないかって。

Q そこに気づくかどうかで見え方が変わってくるっていう。

A ルーカス自体はそんなにジェダイ側に感情移入していないところが面白いですね。バランスと考えているから、フォースの善と悪って言わずに、ダークサイドって言っているだけであって、正義と悪ではないんですね。イビルとは言っていない。闇と言っています。

Q それは必ずあるものだからと。

A それは映画産業とか、映画っていうもの自体が現実を光としたら、闇の世界だから、ルーカス自体は闇を肯定しているんですね。だから映画の中で戦闘行為を書いて、人々はそこに熱狂するところに、暴力を肯定して熱狂していて、そして現実にはそれを抑圧しましょうということが、まあ彼もともと『地獄の黙示録』の原作をやった人間ですから、そういうことも考えているわけですよね。

 多分だから、パルパティーンのモデルは、フランシス・コッポラじゃないかと。コッポラ学校に行っていて、コッポラ学校を裏切って出ていった自分はオビワンだと。かなりあの時代のいい映画の原作とか脚本って、ルーカスが書いていますよね。

Q デススターは、完成しなかった『地獄の黙示録』。

A 完成しなくて良かったと。俺、ベトナムに行って、頭変になっていたよと。こんな映画を作っていたら。

Q ある程度暴力とかをどちらの側も肯定しないと、映画にならないわけですね。それがジェダイだったらいいのかって、そんなことはないっていう。

A 悪の側の説得力のあること。案外そっちの方があるから、結構ひどいことをしないと中和されないんですよ。見ている人は確かにそうだよなとか。確かにダークサイドの方が強いよなって思うし。何だかんだ、世界中でルークのコスプレしている人、ダースベーダーのコスプレしている人って、やっぱりダースベーダーの方が多いっていう。魅力はどっちにあるのかを語っちゃうわけです。最後は一人になる。亡霊だけ見て。愛と勇気だけが友達っていう、アンパンマン状態になって、他に友達がいないんだっていう。

Q ルークはアンパンマンだった。

A フォースと幽霊だけが友達だ。やっと巡り会えた妹は、もうハルカレに夢中っていう。早い展開で。

Q もしこれから先が描かれるとしたらっていうところが、またファンは。

A もう戦国時代。本当に。これまで抑制されていた技術の進歩が一斉にあるわけだから。

Q 二〇一一年の今この時期に、『スター・ウォーズ』を見る意味は何かと。

Q 自分の作品を常にその時の最新技術で更新していこうとしている監督としない監督がいるっていうのは、確かにおっしゃる通りで。宮崎さんとか一切興味ないけど、押井さんは結構アップデートするとか。

A まんまないですよね。ただ表現がまずいから、『ET』のショットガンを警棒に変えるとか、そういうことだけやりますよね。俺の作品見られなくなったら大変だから、いくらでも変えちゃうよって。あれ、普通の監督だったら絶対抵抗するんですが、全然しないです。

Q そこら辺のスタンスの違いが非常に。

A 今の世界の二大覇権っていうのは、中国とアメリカっていうのは、ほぼ決定しているところが『スター・ウォーズ』っぽくていいですね。中国文明対アメリカ文明というのは。

Q 最初に今日の講義で提示していただいた構図というのが、多分板書にも。それはまさに賢人政治、古代の堯や舜の時代の、善きものは徳を持つものなりと。

A それはヨーダたちが昔話として言っているだけですから。古代中国でも本当にあったのかという、神話時代ですからね。

Q 現実のリアリティのある現場には大統領制があって。

A もう力の支配というか、能力が優れている者が統治するのでいいじゃないかということですよね。

Q 本日はありがとうございました。

(終わり)




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