「twitterで悪口」 平成23年9月3日(土)朝日新聞掲載
○相談者 30代 男性
39歳の管理職男性で、ツイッターについての相談です。
私の職場は40名で、10の小グループに分かれています。
先日、偶然、職場の若手男性(私とは違うグループ)のTwitterを発見しました。
見てみると、職場の話題が満載されており、その中には、Aとわかる上司への悪口めいたものもありました。
さらには、同じ職場の若手女性ともTwitter上でやり取りをしており、その女性もこれまた、違う上司Bのこともあからさまに書き連ねています。
同じ職場であるとはいえ、ふたりとも違うグループなので、私は特に何もいうことはないと思い、その上司A、Bも含め、職場の誰にも伝えることはありませんでした。
ところが、今回、その若手男性が異動で私の部下になることになりました。さっそく、「異動になった。予想外だ」みたいなことが書かれています。
自分で言うのもなんですが、私は気は長いほうです。
しかし、仮に頻繁に自分に対するネガティブなことを書かれたりすれば、職場で平常心で接することができるかどうか、若干不安です。
その若手に、私がTwitterのことを知っていることを言うべきでしょうか。
○回答者 岡田斗司夫
もちろん、言うべき①。
でも言えないし、言いたくない。言えば損だし②,
言うのは野暮な気がする③。
この矛盾を展開します。
①言うべき理由:
いずれバレるから。ツイッターやってる人は日本で一千万人いる。部下は「ネットは広大だから見つかるはずはない」と思っているけど、検索や関連づけは強力。今日バレなかったとしても,来週にはバレるかもしれない。
②言えば損な理由:
部下は「ネットは広大だから悪口書いてもバレない」と思っている。こういうバカは泳がせるに限る。多少、自分の悪口を言われようとも、放置&監視できるメリットの方が管理者として大きい。わざわざ言うのは損だし、それで反感を持たれたら余計に損。
③言うのは野暮な理由:
自分だって社長への愚痴は言うし、若手の頃は上司の悪口ばっかり言ってた。それを止めるのはなんかカッコ悪い。もっと「若い奴の味方・理解者」でありた
い。わざわざ言わなくても,実害がないんだから放置してもいいはず。自分の悪口を言われたらヘコみそうだけどヘコむ自分もカッコわるいので言いだしにく
い。
以上、①~③の矛盾した気持ちや計算で、いま「悩みのるつぼ」真っ最中ですよね。
でもあなたは言うべきです。
理由は「上司だから」ではありません。「同じネットユーザーだから」です。
②と③は会社員・管理職としての悩みです。これは「給湯室の会話を盗み聞きしてしまった」と同じレベル。これだけなら、言わないでも大丈夫でしょう。
でも①は違います。
若手男性は生まれた時からネットがあり、子供の頃から携帯電話やメールを使いこなしていた、いわゆるデジタルネイティブ世代です。だから現実社会とネットの関係が変化してるのにかえって気づかない。
ネットは今や表社会。場末の居酒屋のように、公言できない本音をいう場所ではありません。たとえるなら「視聴率は不明だけど全国放送されている居酒屋」なのです。
同じネット市民として、「バレちゃうよ。危ないよ」と注意してあげましょう。その上で「いままでは直接の上司じゃなかったから言いにくかった。でも君も俺の部下になったんだから、危なっかしくて見ていられなくなったんだ。いままで言わなくてゴメンな」とフォローする。
言う覚悟はできましたか?じゃあ彼に思い切ってメールしましょう。
頑張れ!
追記:
後日談があるので、9月10日(土)の夜にブログ書きます。
「いままでは直接の上司じゃなかったから言いにくかった。でも君も俺の部下になったんだから、危なっかしくて見ていられなくなったんだ。いままで言わなくてゴメンな」とフォローする。
というのは見事です。
「こんなにネットに詳しい上司がいるなら、書いてはいけない」と部下は思うでしょう。
この質問者さんの悩みの中には「今まで注意しなくて卑怯だった」という思いもあるでしょう。
きっと、この回答で楽になれたと思いますよ。
お言葉ですが、その部下にそれを言ったところで、あたかも相談者が盗聴でもしたかのごとく
言うか、「会社は社員を監視している」といったアンチユートピア小説もどきの妄想に走るのが
オチでしょう。「借金を繰り返す人」に対してあれこれ言われていますが、借金は「概念」であって
「実在」しません。未来も「未だ」存在しません。「借金を繰り返す人」は
「今現在実在しないもの」について考えられない、「今現在自分が使えるお金」しか
考えられない人です。この部下は「世界を自己の視点からしか眺められない、自己を相対化
(相手の立場に立つ、または俯瞰的に眺める等)できない」人間ではないかと思うわけです。
そういう人に何かを言ったところで、「それはあんたの考え、俺には俺の考え」で
終わるでしょうから、相談者はその部下に何か言うよりも、将来その部下が「会社の機密情報を
漏らす、または他人のプライバシーを侵害する」事も想定して、その時に上司である相談者が
火の粉を被らずに済むように手を打って置くべきではないでしょうか。「上司と部下」は所詮
「会社の中の、仕事の上での役割分担」であって、「家族や友人」といったものとは別ですから