遠距離恋愛の中ぶらりん
2011/02/5 朝日新聞 朝刊
2011/02/5 朝日新聞 朝刊
●相談者 大学4年生女子
大学４年生の女子です。
大学４年生の女子です。
付き合っている人が半年前から１年間の留学に行き、今いわゆる遠距離恋愛の状態です。
今の状況は私にとってとてもつらいです。ただ、つらいというのは単に寂しいからというわけではないのです。
今は電話やメールなどで簡単にやり取りができますが、いつも結局お互いの近況報告で終わってしまいます。
彼は留学中の出来事を話してくれるのですが、楽しそうだね、いいねと決まった返事しか返せません。
反対に私のことを話しても同じような反応で、何も話す気になれません。まるで自分の心にうそをついているようでむなしい気分になります。
こうした状態が続き、本当に付き合っているのか付き合っていないのか、自分でも最近よくわからなくなってきました。
私が思うに、付き合うということは、お互いに本音で話し、心が通じ合い、楽しい時間を共に過ごし、それによって心が豊かになることだと思います。
でも今はつらいことがあっても、そばにいて慰めてくれるわけでもないし、本音をぶつけ合うこともできません。今の状態からは何も生まれないような気がします。この中ぶらりんの状態から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか？
やはり我慢するしかないのでしょうか？
○回答者 岡田斗司夫
「立場の不安」と「関係の不安」。あなたは二つの不安を抱えています。複数の不安が掛け算されてしんどくなってる状態、これが「悩み」です。
まず「立場の不安」。相談文の「付き合ってる」を「結婚」に変えてみます。
結婚４年目。夫は半年前から１年間の海外単身赴任。
夫は赴任先の事を話してくれるけど「楽しそうだね」とか返すだけ。何のために結婚したのか、自分でも（以下同文）……私が思うに結婚はお互いに（以下同文）……やはり我慢するしかないのでしょうか？
ね？ 単にラブラブ新婚家庭のノロケになっちゃうでしょ？ 悩みの大半は立場が不安定、つまり結婚や婚約していないから生じてるんです。来週末にでも留学先に旅行して、彼氏に婚姻届にハンコ押させましょう。それであなたは「婚約者の帰りを待っている彼女」です。悩みの半分は解消されますよ。
さて、やっかいなのがもう半分。「関係の不安」です。
なぜ私が婚約を決意して自分から海外に行かなきゃいけないのか？ なぜ私はこの悩みを新聞に投書しなくてはいけなかったのか？
理由は簡単。「私の悩みをわかってくれそうな気がしない」からです。
彼氏は自分の楽しい毎日に夢中。私は「彼女」だから嬉（うれ）しそうに聞いてあげる。こんな関係がはたして「付き合ってる」と言えるのか？ なぜ私は自分の不安を彼に言えないのか？ そもそも、なぜ彼は日本に置いてきた彼女が心配じゃないのか？ 彼自身が寂しくはないのか？
ここに気がついてしまったあなたは、いま「関係の不安」まっただなか。対処法は残念ながら存在しません。彼氏は留学するような「自分のやりたいことに夢中になる男」です。彼女の優先順位は低い。あなたが面倒なことを言うと離れてしまうかもしれません。
これが関係の不安です。立場の不安と関係の不安。両方抱えてるから苦しいんですよ。
立場を確立するなら、婚約なり約束を取り付けましょう。関係を確立するなら、破綻（はたん）覚悟で本音で話し合いましょう。
大人になるか、恋愛に生きるか。選択肢は二つです。でも、そんな真剣な恋愛をできるのも、今だけです。もう少し、この状況を楽しんでみるのもアリだと思いますよ。
