え〜『遺言』イベント、たしかギリギリ直前になってブログでの告知を見たんだと思います。たぶん前日(2daysの1日目、ダイエット・イベントの当日)にロフトプラスワン(はじめて場所を知った)で直接チケットを購入して。とうぜんロフトプラスワン自体はじめてだった(!)ので、入場するまでかなり緊張していたのを覚えてます。
『遺言』というイベント名にきっとただならぬものを感じてたんですね。観ることができなかった『オタク・イズ・デッド』みたいなテンションの高さを期待していたと思います。いままで憶測するしかなかったGAINAX関連の出来事が明るみにでるのではというゴシップ的下心もあったかと。
とはいえ、基本的に自分はそれほど詳しい知識を共有できていないので、みんなが笑っているところで笑えない(もちろん愛想笑いはしますが)場面がけっきょく6回トータルで100回以上あったのでは。そのへんはかなりのアウェー感でした。じつはこの場にいる資格がないかもな、社長の言う「キミら」には自分は入ってないんじゃないか、などいろいろアタマに浮かんできて正直キツかったけれど、社長の話を聴きたいという興味というか欲求のほうが勝ってたんですね、たぶん。
そんなわけで1回目を観て、最後まで見届ける以外の選択肢は考えられなかったです。自分も(チケットを扱っていた)ローソンの端末のまえに並びました。自宅から徒歩圏内にローソンは2店舗あって。ちょっと時間に余裕を持って出て、1店舗目の端末の前に人影を確認すると、ダッシュでもう一方のお店に。いいかげん大人げないことこのうえないですが。
そこまでしても整理番号はたしかやっとこ20番台くらい。入場前、毎回かならず自分の前に並んでいた人たちのなかに、現在の同僚(?)が少なくともふたりいることを確認&リスペクトしています(笑)。
毎回19:00に始まって、みじかくても3時間半以上、へたすると4時間半を超えてました。終電の関係か、途中で退席する人もいたけれど、その無念さ(!)を思うと、身震いしましたよ。そんなイベントでした。
ところがかんじんの具体的な内容をあまり思いだせなくて(すみません)。ブログやSNSもやってないし、メモも取らなかったし。もったいないような気もするけれど、聴いているその時に心を震わせられればそれでいいと思ってたんですね。あとで忘れてもいいから、そのときの話に集中できなくなる要素はすべてなくしたいと思ってました。トイレに行くタイミングは綿密に計算(?)。オーダー(必須)はミネラルウォーター1本のみで(まぁ、経済的余裕もなかったんですけど)。
とはいっても、印象に残っている断片ももちろんあります。たとえば、じっさいに公開され、今では歴史となり、伝説ともなっている作品の、日の目をみなかったオルタナティヴなエンディングや設定。あったかもしれないもうひとつの『王立』、もうひとつの『ナディア』。そして、世に出ていれば間違いなく伝説的な評価を得たにちがいない(としか思えない)『ウィザード』。そうしたエピソードは、もしかしたら今ある現実をはるかに超える可能性をもっていたのではないかという甘い夢をみせてくれました。
そして、その夢たちは、それまでの社長の著作のなかでも、個人的にはもっとも重要な1冊であり、ある種核心(何の?と訊ねられると、うまく言葉にできないんですが)に近いと思われる『二十世紀の最後の夜に』と、どこか似ていたような気がします。
あと、あれですね、『ナディア』最終回の演出術として社長が語っていた、観るものの〈心の温度管理〉。そう、毎回会場に足を運んで、正しいか間違ってるか、つじつまが合ってるかどうか、役に立つか立たないか、むしろそのことよりも、話を聴いていて、ふだんはいいかげんさめているはずの自分の心の温度が、こんなにも上がってるよという驚きと喜び。それで充分だったんですよ。本当に。
……たとえば21世紀の最後の夜は、まだ90年も先のこと。自分ももちろん、いま生きているほとんどの人はその夜を迎えることはないでしょうか。それでもそのときまで生きながらえる運命をもった作品も、たぶんいまこの瞬間生み出されているもののなかにちゃんと存在してるんですよね。
『トップをねらえ!』のラスト。12,000年後の地球で、灯火管制(?)に、「なんか知らないけど、めんどくさいなぁ」と思いながらいやいや協力した人もいただろうけど、「まぁなんかいいことした人みたいだし、しょうがないか」くらいの気持ちではいてくれたかもしれない。そんなふうに『遺言』(イベントの、そして今回出版されるまさかの単行本)の、ひとかけらでも〈21世紀の最後の夜〉に遺っていてほしい。けっこう本気でそんなことを考えています。
遺言
岡田 斗司夫
- 定価:¥2,835 (本体 : ¥2,700)
- ISBN4480864059