FREEexなう。

2010年11月04日

ex社員が語る『遺言』:読売ランド前のタダシ

良く知られている事実ですが、昔作家の野坂昭如の子供が小学校で「『火垂るの墓』を読んで、書いたときの作者の心情を書きなさい」と言う宿題を出さされました。自分の父親が書いた本ですから、当然のように本人に聞きます。

その答えは
「締め切りに追われ、ヒィヒィ言いながら書いた」
だそうです。

 

このエピソードは野坂昭如と言う人の自虐的克つ露悪的なところをよくあらわしています。と同時に「作者は作品で語るべきであって作った作品に対してアレコレ語るべきじゃない」という矜持のようなものが感じられます。
と、言ってもこの発言、嘘ではないでしょう。常にギリギリに追い詰められていた作家としての現実でしょうし、そこまで追い詰められたからこそアレだけの話が書けたに違いありません。

さて、今回発売されましたオタキングex社長、岡田斗司夫による最新作『遺言』。他の者も書いてると思いますが、この本はロフトプラスワンで行われたイベント『遺言』を基に執筆されたもので、岡田が関わった様々な作品について書かれています。
未読の皆さんに言っておきますが、この本、かなりお得です。
先の例でいうと、「締め切りに追われてヒイヒイ」言ってる状況で、何を考え、誰と何を話して作品にしていったのかが事細かに書かれ、さらには作品の奥にあるテーマまでも製作者である岡田自身が語ってくれます。
しかもそこに登場するのは庵野秀明、山賀博之、赤井孝美と言った層々たる面々。さらににゲストに富野由悠季や西崎義展まで登場します。
そういう群像劇的な面白さに加えて、各作品のテーマからクリエイター論にまで話は進んでいきます。これが面白くならないわけがありません。

ただ、私としては困ったことが一つあります。この本、岡田自身が作品について当事者としてその分かりやすい言葉で懇切丁寧に全て語ってくれるので、この本を読んでからそれらの作品について、これ以上語れなくなってしまいました。何を語ろうとしてもこの本からの引用になってしまうのですから。

今現在私は『オネアミス~』と『トップ~』を見返す日々が続いています。まだ何か、語るべき点が隠れてるんじゃなかろうか、と思いながら。

遺言
岡田 斗司夫
遺言

  • 定価:¥2,835 (本体 : ¥2,700)
  • ISBN4480864059




testotakingex at 15:15コメント│ この記事をクリップ!
遺言 

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