FREEexなう。

2010年08月09日

DIMEインタビュー前編 あの年、芥川賞は本当は、エヴァに与えるべきだった

(名刺交換)

岡田:ようやっとexの名刺ができたので。僕にはまだ無いので。準備中?はーい。


DIME:じゃあ、もう始めて…

岡田:大丈夫です。はい。

DIME:小学館のDIMEという雑誌で、基本的には30代、40代のビジネスマンが読む雑誌で、普段はこういったiPhone4であるとかデジタルギアを中心にひととおり全般を、押さえてる雑誌ではあるんですけども。


8月9日売りの号でアニメの特集をしようと考えておりまして、DIMEとしても初の試みで、DIMEという雑誌の性質でアニメビジネス的なところの特集を全般に、今アニメビジネスというのがどういうような形で、結構今の世の中、今全部取材が終わってないので、こちら側の編集部としての切り口なんですけれども。

アニメ業界っていうのが、世間の目にすることが多いんですけれども、実際にはそんなに大きくなってはいなくて、逆にアニメ側の方がカルチャーとして認められて世の中に非常にうまく溶け込んでいってるんではないかなみたいな。

そういう感じを多少受けておりまして、その中で岡田さんにはガンダムとエヴァンゲリオンという、かなり長い期間、アニメのファンだけでなく、認知度としては世の中の人達が全て知っている二つのアニメに関して、いろいろお話をお伺いできればと思っております、よろしくお願いいたしします


岡田:はい、よろしくお願いします。


dime1
DIME:岡田さんといえばやっぱりガンダムからお話を伺いたいなと思っているんですけど。ガンダム以降のアニメっていうのが…

ガンダムで大きく変わったんじゃないかなと思うんですけども。


岡田:そうですね。
どういう風に切ればいいのかもよくわからないんですけども。
ガンダム以前のアニメって、どんな話か割りと紹介しやすいんですね。
ガンダムから以降、流行ったアニメって基本的にどんなお話って言われた時にみんな口ごもるような、一言で言いにくいのが大変多いと。


宇宙戦艦ヤマトまでは単純に言えたんですけども、ガンダム以降、何が正義で何が悪なのかとか、主人公の目的がなんなのかというのがものすごく言いにくいアニメですね。だからその意味ではよその国の文化と全然違うんですね。
日本のアニメだけ独特なものなんですけども。

大人向けでもない、子供向けでもない、青春向けっていうのが日本でやってるアニメなんですよね。


DIME:そこからたぶん、大人のファンというのが付いたと思うんですけれども、それがこれだけ長い間っていうのが他の作品と比べてどこがこう・・・


岡田:ガンダムとね、エヴァってね、両方とも違うんですね、戦略が対照的に違う。


ガンダムはいかに新シリーズをどんどん作ることによって新しいファンを増やし続けるか、もしくは維持し続けるか。

その意味ではバンダイっていうですね、サンライズの親会社の、基本的に戦略に乗ってる、と。
で、エヴァンゲリオンていうのはその逆なんですね。いかに同じ事を繰り返すかによってファンを維持したり拡大してるか、全く違う。


その意味ではジブリも違うんですよ。ジブリは常に新作を作ると。後ろを振り返ったりはしない、と。
元々スタジオジブリっていうのは、鈴木敏夫さんていう社長の夢は、「ナウシカ2」だったんですよ。
いつの日か高畑勳がナウシカ2っていうのが夢で始めたはずの会社なのに、もうそんな夢は、どこかよその世界へ行ってしまったんですよ。
それくらい、ジブリにいる作家は同じ事をやるのが嫌なんですね。
で、全然違うんですよ。


エヴァは庵野秀明はなんぼでもエヴァを作るのが全然嫌じゃないんですよ(笑)。
で、サンライズは、ガンダムでさえあれば、作家が、というか監督が誰であってもかまわないんです。これぐらい路線が違う。


面白いのは、3つの会社とも、それがいいとは思ってないわけなんですよ。
ウチ、そうやってんだけども、いいと思ってやってるわけじゃないんだよ、と。

サンライズだって、ガンダム以外いろいろやってるんだけど、最終的にヒットしちゃうのガンダムなんだもん、なんでか俺たちも分かんないよ、ていうのが正直なサンライズの気持ち。


エヴァだって庵野秀明だって、もしくはガイナックスだって「俺たちだって、エヴァ以外いろいろやってるよ」と。
でもなんでエヴァしかダメなのか分かんないよ、と。


スタジオジブリにしてみても、いや、俺たちだっていろいろやってるんだけども、結局当たるのは宮崎駿の新作アニメだけだよ、なんでか分かんないよ、と。
その意味では戦略を研究するって言うのは、僕は無駄だと思います。
現象を研究するしかない。

なんでそうなのかは、作った本人達もどうにもならない。
もしどうにかなるんだったら、サンライズはガンダム以外のこういう安定路線が3つあるはずです。
なのに無い。
てことはサンライズ自身もコントロールできてないんですね。


DIME:結局、すごく長く愛される作品って、やっぱり物語とか、作品性に尽きるのか・・・あの、「ガンダムを語ろう」(注 岡田斗司夫のひとり夜話『ガンダムを語ってみよう!』にて公開中!)をお聞きしたんですけど、やっぱりプロットの強さが。あと、2、3話見逃しても大丈夫なプロットの強さっていうのもないと、メガヒットにはなり得ない・・・


岡田:ガンダムのあの強さは、子供向けって言うルール、フォーマットを守りながら、どこまで逸脱して若者とか現代の日本の悩みを入れられるのか、ていう。

これはもう日本の昔のアニメがやってた、王道パターンみたいなものですね。それがあったからだと思います。


DIME:なるほど。なんか、あのー…


岡田:でも僕は現象としか見ない(笑)。
さあ、これをあんまり戦略として取り入れられないと思うぞ、ていうのは本当に思っていますよ、最初に言ったように。
はい、ごめんなさい。


DIME:ただ、世の中を見ると、ガンダムにしろエヴァにしろ、何か、自由にキャラクターが使えると言うか、作品性が確立しているので、今度ガンダムがジェット機のロゴマークに使われてるとか、それこそ、ローソンが丸ごと一店、エヴァンゲリオンのローソンになったり、ああいう形になってるとか、そういういろんなコラボをしても、その世界観を壊さないというか、逆にファンの人も面白く受け止めてくれる・・・


岡田:日本人て一回定番になっちゃうと本当にそれに関しては強いですからね。じゃあなんで、その、僕も良く分からないのが、じゃあなんでボトムズじゃダメなんだ、じゃあなんで同じ富野監督のイデオンでダメなんだ、と。全く同じ人が同じように当てるつもりで作ってるはずのものがダメ。

で、エヴァにしてもそうですよね。グレンラガンじゃあなんでダメなんだ、と。

もうホントに、ガイナックス、そう叫んでますよ。俺たちだっていつまでもエヴァで売りたいわけじゃないのに、なんでエヴァしかダメなの、と。

それが分かってて分析できてたら彼らだって、もっと、第2第3のエヴァ、第2第3のガンダム作れるはずだけど、分かんない。


DIME:岡田さんの見方っていうのはどんな?解釈というか・・・?


岡田:いや、だから、いっぱい作るしかないでしょう。偶然ヒットするのを待つしかないでしょう!ですよ(全員笑)


DIME:確率性の問題?


岡田:いや、もう本当に雑誌のヒットと同じですよ。
時々経営者とか編集者とかが変わると言いますよね。「絶対当たる企画だけやれ」と。

そんなこといってもしようがないんですよ。
毎回毎回、企画を10も20もやって、たまたま当たったらどんどん上に乗っけてくしかない。

そういう意味では民放のバラエティとかも同じですね。
最初から必殺の構えでやった番組はスベるんですよ。
そうじゃなくて、当たったら足していくしかないっていう……それしかないですね。


だから、後追いでおそらくこうだろうっていうのは、さっき言ったガンダムは、少なくとも子ども向けの企画の上に、無理やり大人向けのものを乗っけちゃった。このバランスの悪さ、ですよね。

で、エヴァンゲリオンにしても、何だろうな、本来多数の人に見られるべきアニメーションに、少女漫画とか純文学を乗っけちゃったってことですね。
僕はホントに……あの、あれは直木賞でしたっけ芥川賞でしたっけ、新人じゃなくて、文芸の方に与える賞って……どっちか忘れちゃった。


DIME:文芸の方は芥川賞、ですね。


岡田:はい。あの年、芥川賞は本当は、エヴァに与えるべきだったっていうのは、僕の考え方です。だって、日本でやってる純文学って、もうエヴァでしょ、あの年は。
っていう……小説に与えることはなかったんですよね。そのあたりが、エヴァのヒットの要因だと思いますね。

その文学性っていうのが、もうみんな小説を読むのじゃなくて映像で見るようになってしまって、映像ではあの年、エヴァがいちばん文学的だったからなんですね。


DIME:ガンダムもそういえるんですかね?


岡田:ガンダムはそういう要素ないですね、ガンダムは、もっと、大衆エンターテインメント。大衆エンターテインメントで、すごくおもしろいものを作ったんですよ。

エヴァは、文芸なのに大衆受けするロボットとか美少女を出したんですよ。その意味では、文学作品なのに萌え系の表紙で売れた、みたいな、もんだと思うんですね、エヴァは。

DIME:ドラッカーの本みたいですね。


岡田:そうですそうです、はい(笑)。
あれですね、もしドラっていわれるやつですよね。


記者:ドラッカーの本ではないですよね。ドラッカーの……。


岡田:マネジメントの本。はい。

DIME:みたいな組み合わせ、ということですね。

岡田:だと思います、はい。


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DIME:ああ、なるほど。両方とも、昔からのファンが当然いるんですけれども、新たなファンを取り入れながら、一時期はある種のアニメファン…当然子ども中心のアニメファンだったはずなのが、そのまま年をとって大人になった人も好きになり、今、世の中ではそういう枠もないというか、普通に、いわゆる大手のナショナルクライアント的なところも、そこのキャラクターを使わざるを得ないような、本当に使いたいと思ってる……
そういう現象というのを、岡田さんはどういうふうに思われてるんでしょう。


岡田:これも、両方の作品で違うんですね。
ガンダムはもう、ガンダムを知らない人でも、キャラとして使ったり、おもしろがったりしてる、と。

今、ガンプラを買っている人とか、もしくはガンダム携帯とか、そういうのを欲しがっている人で、ガンダムを最初から見てる人ってほとんどいないんですね。
いろいろやっている、いろんなガンダムをちょっと見て、おもしろいと思ったデザインとか、おもしろいと思った人がほとんど。
あと、ガンダムは新しいファンが入ってきているので、親子でガンダムが好きという層がもう、ちゃんといるというか、最初から、それがいるんですね。世代が変わるごとに。
エヴァは逆で、いちばん最初にがっちりつかんだ層を、いつかでもつかんでいるという方が強い。
だから、エヴァ・ショックって、エヴァが最初にオンエアされたときに小学生だった人が、今のファンのいちばん底辺になっている。


DIME:ああ……。


岡田:今、僕、大学で教えているんですけれども。大阪芸術大学のキャラクター造形っていうところですから、アニメとかがものすごく好きな人たちなんですね。で、その、18才19才の1年生2年生に話してたら、もうそろそろエヴァはみんな知らなくなってきてる。でも、ガンダムは知ってる。


これが特徴なんですよ。
つまり、エヴァっていうのは、一度つかんだファンと一緒に進化している作品なんですね。

だから、徐々に徐々に、ファンの年齢層が上がっていく。
ガンダムは逆で、ガンダムのコアなファン層っていうのはいつも動いていて、今ハタチとか18ぐらいでも、ちゃんとガンダムを好きな人がいる。

ただ、その人たちはガンダムを見てるわけじゃない。
そういう意味ではエヴァのファンと違います。エヴァのファンっていうのは、一度見たエヴァを絶対忘れないし、新しく入ってきたファンもちゃんとエヴァは見てるんですね、劇場版だけにしろなんにしろ。


DIME:とはいえ、エヴァンゲリオンに関してはロッテリアであるとかローソンであるとか、パチンコもそうですけど、いろんな形のコラボが行われているっていうのは、コラボしたい側のメーカーの人たちが、エヴァンゲリオンのファンっていうことがいちばん大きいんでしょうか。


岡田:はい、はい、そうです。
それはガンダムも同じだと思うんですけれども、ガンダムはたぶん、日本のディズニーっていうか、ファミリー層に向けての大きい流れになると思ってるんですよ。


ただ、両方とも、その……なんだろうな、ちょっと使いにくいのは、ディズニーみたいに安全なものじゃないんですね。
ガンダムはやっぱり戦争ものだし、エヴァもなんだかんだいってもやっぱりグロテスクな表現とか残酷な表現込みのものだから、最終的に、すごくヒットしたからNHKでゴールデンタイムにオンエアできるかっていうと、両方ともちょっと難しいところがある。それは両方とも、戦争ものであったり残酷なものであったりするからですよね。

中編)に続く




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