FREEexなう。

2010年11月29日

○第11回:教えて、福井弁護士!(4)「クリエイターはどうやって食べていけばいいんですか?」

(11月29日(月)公開)

もし、著作物が自由に複製できるようになったら、それを作った著作者はどうなるのか? 著作権の根幹に関わる、この問題。解決のカギは「ライブ」にありそうです。

本の値段が1通りなのは問題だ!

「自炊」に関する具体的な課題の確認なんですが、一番安全なのは、自分で裁断機とスキャナーを買って、手持ちの本をどんどん裁断して、取り込んでいくやり方ですね。

福井:最近、裁断機の売上げが急激に伸びているらしいですね(笑)。

次に安全なのは、裁断機を貸してくれるホームセンターのようなところに行き、時間貸しの機材を使う。


福井:それも大丈夫です。

裁断を行うバイトを雇って、そのホームセンターに置いてくる……。


福井:オカダさん、裁断そのものは外注しても大丈夫ですよ。

あ、そうなんですか?


福井:裁断行為自体は、著作権とほぼ関係ないから。

そうだ! 出版社は、普通に製本されている本と、裁断済みというか製本していない本の値段を変えて売ればいいんですよ。


福井:え、どっちが高くなるんです?

ちゃんと製本されている本は一番高くていいんですよ。僕の『遺言』なら、製本されていれば2,700円。ページが綴じてなくてバラバラになったままなら1,500円。データだけの電子書籍は500円で売ればいい。そうすると、それぞれの値段にちゃんと意味が生じるじゃないですか。

福井:そうすれば、うまく行きますか。

書籍を巡る状況がどうしてこんなにグチャグチャになっているのかというと、値段に意味がないからです。2,700円という1種類の値段しか用意されていなくて、これが古本屋ではいきなり100円や200円で売られている。そうではなくて、出版社はもっと売り方のバリエーションを増やすべきなんですよ。

福井:「自炊」問題は、出版社がいかにデジタルコンテンツと向き合うべきか、という問いを投げかけました。販売の多様化や、どうやって読者のニーズをすくい取るかなど、確かに考えるべきことはまだまだありそうですね。

ライブイベントの売上は増えている!

読者としても、もっと本は多様化してほしいですね。デジタルだけでかまわない本、ちゃんとマテリアルとして手元に置いておきたい本。そうすれば、「読みたい本」と「愛したい本」の差を、ちゃんと値段で差別化できる。

福井:わかります!
この10年間、ほとんどの文化産業の売上は、基本的に落ち続けてきました。一番ひどいのはCDの売上で、1998年に6000億円近くあったのが、今やその4割程度と言われます。10年前に2兆5千億と言われていた出版業界の売上は、昨年21年ぶりに2兆円を割り込みました。原因は色々いわれますが、ネット上の無料コンテンツの影響が大きいのは確かだし、ビジネスモデルも組み替えていかないといけないでしょう。
だけど、売上を落としていない分野が1つあって、それはライブイベントです。ライブイベントはまったく売上が落ちていないどころか、微増しているんですよ。

やはり、そうなんですね!


福井:ぴあ総研のデータで国内約1兆円。これにはテーマパークも入っていますが、逆に手売りなどアマチュア系のイベントは一部しか入っていません。イベントやお祭りの経済波及効果も考慮していないから、実際の産業規模はもっと大きいと推測できます。
ライブの売上がまったく落ちなかったのは、デジタルで代替できていないからでしょう。地デジでサッカーの試合を見ることができても、みんなスタジアムに足を運ぶ。スタジアムに入れなかったら、外のライブビューイングで試合の様子を見たりもする。テレビ放送と同じ内容なのに。我われが欲しいのは、ライブの体験なんです。
音楽産業は今、コンサートでの物販の売上にかなり依存しています。同じTシャツでも、コンサート会場で買うことに意味がある。
だから、コンテンツがデジタル化するならば、この臨在感、付加価値をどう付けるか、関わっている人たちが工夫しないといけません。「あ〜、君500円でデジタル版を買った人なの?(プッ) 僕は2,700円の限定版を買ったけどね」。そういうファン意識というか、好きな作品に2,700円を払った自分が好きというか。

それは絶対にあると思います。これから作家が生きて行くには、サイン会や講演会を増やしていくしかないでしょう。だから、書店がサイン会をタダでやるのは絶対に間違っているんです!

福井:なるほど!

サイン会こそが、僕らのライブ。どうして紙の本を出しているのか? 「本はサインをするための紙です」って言い切らないとダメだし、それ以外にこれが紙である理由はまったくない!

福井:電子書籍におまけでサインを付けちゃダメなんだ。

ダメですよ! それはやるべきじゃない。電子書籍は、安く本を読むための「千朶万朶」(せんだばんだ:たくさんある花)にすぎません。所有したいのは、紙の方でしょうと。

福井:愛読書はそうなりますね。私は小山ゆうの『お〜い!竜馬』が好きで、紙の本で持っています。大河ドラマの『龍馬伝』も家族と見て楽しみますが、見た後でときどき、自分にとっての竜馬や以蔵に会いに漫画に戻ったりする(笑)。電子書籍版の『お〜い!竜馬』も出ているけど、私は買う気がしないんですよ。これは電子書籍がダメということではなくて、もっと気軽に読みたい人が買うものだと思っています。

Amazonで本を売るにしても、著者のサイン入りの本にはプレミアム付ければいい。そうした方が、本の多様性が増します。

「タニマチ」がクリエイターを救う

福井:ライブイベントについていえば、不況だからブロードウェイも入場者数はやや減っています。ところが、売上は減っていない。それはなぜか? プレミアムシートです。
それまでブロードウェイで一番いい席は100ドル強でした。ところが、250ドルのプレミアムシートを出したら、これが売れるんですね。
この席を買うのは富裕層だけというわけではなくて、安いランチを食べて節約してでもプレミアムシートで見たい熱烈なファンがいるんです。こういう消費スタイルは、「粋」でしょう。
ブロードウェイはプレミアムシートで不況を乗り切った。だから、ライブ体験の付加価値は大きいと思います。

僕は、オタキングexという仕組みを立ち上げたのですが、これをいろんなところに移植しようとしています。

例えば、寄席に応用できないか? 今、寄席の料金は2,000円くらいなんですが、これを1人5,000円から7,000円くらいに値上げする。その代わり、知り合いを1人か2人連れてこられるようにする。

福井:それはかっこいいね。

5,000円から7,000円という料金は、席代だけじゃなくて、打ち上げの参加費込みなんですよ。つまり、落語家との打ち上げに参加できると。寄席では打ち上げを毎回やるけど、そこには何となくふらりと入ってきた人もけっこういる。こんな無意味なことはやめて、その落語家のことを一番好きな人が入れるようにすればいいでしょう。

福井:「旦那」で「タニマチ」ですね。芸術家のパトロンが大衆的に復活する。

こういう風にすれば、すごく美しく物事を進められるんじゃないでしょうか。ブロードウェイも、たんに値段を上げてプレミアムシートにするのではなく、熱烈に見たいけど料金を払えない学生は半額にするといったことができればもっといい。

福井:映画や舞台の業界には、昔からの知恵として個人の投資を募る仕組みがあります。作品を作るために「エンジェル」などと呼ばれる出資者を集めるのだけど、作品によってはそれが100人くらいになることも。たとえば1人当たり数十万円から出資しますが、出資といっても水ものですから十分なリターンはないケースが多い。では、どうして彼らはお金を出すのか?
「自分がサポートした作品をみんなに見てもらいたい」。活動に参加する喜びと、配当というちょっぴりの「夢」のためにお金を出すんです。そして、作品のクレジット(”Billing”)のところに名前が表示される名誉。日本国内でも一部そういう取り組みが始まっていますね。
音楽ファンドなんかもそうですよね。「あなたの好きな音楽をみんなに聞いてもらうために協力してください」というだけだと、たんに寄付を募っているだけ。そこに投資という色を付けるのがうまい。たぶん金銭的なリターンはないんだけど、「もしかしたら……」という夢を見させてくれる。ただし、名誉と満足感というリターンは確実に得られる。

それこそ、評価経済ですね。


福井:ミュージカルの『コーラスライン』は、その成功例です。何十倍ものリターンがついて、伝説になりました。

(次号に続く)




testotakingex at 14:42コメント│ この記事をクリップ!
ゆるデジ 

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