岡田:つまり、70年代80年代の頃にまだあった就職するから髪の毛を切るというのがあるじゃないですか。
あれが子供から大人になることのはずなんですけど。
今、就職するために髪の毛染めてたのを元に戻すってあんまりみんなしないんですよね。
そういう風に大人になるっていうハードルがどんどん無くなってきて、職業によってはあるんですよ、銀行に就職するから茶髪のままじゃマズイっていうのはあるんですけど。でも、大人の社会側の方が、そういうことで大人とか子供とか言っても無意味だよね、って言ってどんどん境界をルーズにしてますから、今の日本社会であんまり大人になるっていう目的もなければ意志もない。
で、その結果、本来だったら子供向けってことで観ることを止めるようなものをあえて大人になっても見続ける。それどころか自分の子供にも見せてそれで親子が仲良くなったからイイっていう風に言う、と。
まぁ、宮崎駿的に言うとすごい気持ちの悪い、たぶん富野由悠季も口を極めて気持ちが悪い!と罵るような状況がいま日本で出来てるわけですね。
だってお前らが作ったんじゃないか! と思うんですけど(笑)
DIME:(笑)でもそういうような現状が今後続くとなると、現象的にはこういうようなアニメのキャラクターがどんどん浸透していくってことはしばらく続くというか、技術的にはもっと逆に言うとパイが広くなる可能性というか……。
岡田:だから子供っぽくないものはまだもっと子供っぽくなりますよね。今、キャラクター化とかグッズ化されてないとか、あと可愛くないものはまだまだこれから可愛くなる可能性がある。
冷蔵庫はまだ可愛くないし、キャラクター化されてないからそこに市場はあるでしょうし。
携帯電話も一時期のように機能とか、デザイン的にスタイリッシュっていうようなものから、可愛いとかキャラクター的っていう風にどんどんどんどんディズニー携帯とかガンダム携帯とかエヴァンゲリオン携帯という風になります。
じゃ、そうじゃない高価な物はまだどんどん変わることが出来る。
自動車メーカーが車売れないって言ってるんですけども、買った人が何するのかというと自分でお金かけて痛車って言われる、いわゆるキャラクター的な車に改造してるわけでしょ?
じゃ、最初からアニメとコラボした車を作った方が絶対手っ取り早いんですね。
そんなことして売れるのか、と、そんなことしたら俺たちの車が嫌がられるんじゃないかという彼らの思いがおそらくもう古いんですよ。それをやらないから車売れないんだよ。
だってお前らの車って車自体に魅力があると思い込んでるけど違うよ、お前らの車にある一番の魅力はその上に痛いペイントするっていう土台でしかないんだ、っていう(笑)
岡田:そうです。上に何を乗っけるかの土台でしかないんですけど、車メーカーにはプライドがあって、俺たちの車は性能とか思想で売れてるって思い込んでるんですね。そうじゃないんですよ。俺たちの車は土台だ、と。
なんでもペイントしやすい、なんかすごい塗り替えしやすい車ですよってやったら売れるんですけど、それが出来ない。
だから仰ったことにもう一回乗っかるんですけども、もっと可愛く出来るものとかキャラクター化出来るものはまだまだ売れる可能性ありますね。
ただそれはずっと長期的に売れるのかというとそうじゃなくて、その時にヒットした作品が売れるわけですから。
まあ、ディズニーもガンダム系の作品なんですよね。
ディズニーのストラップとか付けてる人はディズニー作品観てませんから。
ディズニーランド行く人も大部分はディズニーの映画を観てないというか、ちゃんと観てない。
そこもエヴァと逆ですね。エヴァは作品的だから、ハマる人っていうのはだいたい世界観でトラウマを受けた人。逆なんですね。
DIME:うーん
岡田:水木しげるも「ゲゲゲの鬼太郎」を描かなくなってから人気出ましたから。だから今の水木しげるのキャラを持ってる人は「ゲゲゲの鬼太郎」を読んだことがない人っていう。これもやっぱりガンダム方向ディズニー方向のすごい儲かる路線ですよね。
エヴァ方法は今儲かってるんですけども、その意味では将来に渡ってずっと儲かるかというと微妙なんですよ、ホントに。
DIME:じゃあ、エヴァのこういう形のブレイクっていうのはちょっと特異というのか日本独自というか……。
岡田:いや、トラウマを与えてのヒットですから……うんうん、ホントに、真似出来ないんですね。
だから、ひとつヒットした作品をガンダム化することは出来るんですよ。
同じように続編どんどん作っていって、ファンの盛り上がり許して、外側に向けてシェアワールドにしてっていう風なことで、戦略としてガンダム化することは出来るけど、何かヒットした時にエヴァみたいなヒットさせようと思ってもホントに出来ないんですね……
うーん、あれが近いかなぁ?「踊る大捜査線」ぐらいなのかなぁ? エヴァっぽい作品っていうのは。
つまり、いかに一番最初の頃の「踊る大捜査線」に似てるかどうかがもうポイントになっちゃう。
新しい「踊る大捜査線」が認められないんですよ。
そこからスピンアウトした作品を一杯作ったんだけどダメだと。
やっぱり、これは青島が出ないとダメだとか、室井さん出ないとだめだというところが、もうほんとうに一番最初のでないとダメですっていうことで、エヴァっぽいんですよね。
DIME:特殊な時代だったんですかね?なんかあの閉塞感みたいなのが、すごいやっぱ、ものすごいあったんですよね
岡田:時代…トラウマ与える作品ていうのは、ある時代に何作品かずつ現れて、それは「太陽の季節」だったり、文学として出てくるんですけども、あの時代はエヴァが出てきたんですね。
で、何だろう。
ただ、エヴァ以降は、アニメの世界からはあんまりまだ出てきてないのかなぁ。うん、出てきてないですね。
出てきてないと言うとアニメファンの人は怒るでしょうけど。
この作品はどうだ?とか。この作品はエヴァを超えた!とか言う人が色々いるんですけども、現象として普通の日本人がみんな、名前が言えるような作品って出てきてないですからね。
DIME:夜中にやってる作品で、けっこう文学性が強いような作品て一杯あるんですけど、まぁでも、エヴァのようにはならないですよね。
岡田:はい。まぁ、30年後は、どんなおじいちゃん、おばあちゃんもガンダムを知っているようにはなるんですよ。
でもエヴァは30年後、おじいちゃん、おばあちゃんは知ってて、ものすごい心にショックを受けたものとして、まるで美空ひばりとか、猪木とか、あと山口百恵のように、伝説として語り継ぐんですね。
で、後の世代から見たらポカーンなんですよ。すごかったらしいっていうふうに。
エヴァもなんかそういう手の作品だと思います。
ただ、それはその、国民の中の、ある時代をほんとに代表して動かした価値観そのものになるんですよ。
ガンダムはそうはなれないんですよ。そのかわり、大衆的にいつまでも定番として残ることができる。
DIME:なんか富野さんの、100年200年後は、こう残していくような大きいコンセプトをちょっとこれから考えてもらいたいな
岡田:富野さんもそんなこと考えずに、普通にロボットアニメ作ってくれた方が、またガンダムみたいなもできると思うから。
DIME:私は、なんか(笑)
岡田:思わす富野さんをとめるつもりで、おれは富野さん好きだから、富野さんまたそれ、不幸をこじらせるかなって。
DIME:いや~、あの人類のために考えすぎ
岡田:言うなぁ(笑)
DIME:思うんですよ。すごい一生懸命考えてくれているみたいな。
富野さんがしたのはやっぱり、自分の手から離れてしまったガンダムのいじられ方が全然ダメだと。
もっといいように、ガンダムって、もっともっといろんなやりようがあんのに!みたいなことはよく言ってましたね。
岡田:そうですね。僕なんか最近見たいなと思ってるのは、F1とかですね、サッカーの番組の、試合を終わった後のダイジェスト中継ってありますね。
DIME:はぁはぁはぁ
岡田:あんなガンダム見たいですね。もうガンダムの戦争が終わってしばらく経ってるから、もうNHKみたいなとこで、あの戦争もう一回振り返ってみましょう、って言って、ガンダムの初戦闘とかやってるところを、多面的にいろんな位置から撮ったカメラの映像がありますと。それまでわからなかった新事実っていうような形で(笑)
DIME:それはいい(笑)
岡田:30分とか1時間の教養番組で。
そん時に、ガンダムとザクが戦っている時に近くで見てた人の証言とかがいっぱいでてきて、で、あのときにこうだとか、資料映像とか、そのガンダムの映画とかの映像ありますよね。
それを再現フィルムの定番としてこういうふうに語られるけど、実際の戦場ではそうではなかったとか。
この時に風、こっちから吹いてた。で、ザクは実はこの腰だめに…これしようとしてたんだけど、それはジオンの国力ってのがやっぱそこがあがってなかったから、色々多機能、機能性盛り込んじゃった機体に無理がかかってたんだよね!っていうようなやつを見れると面白いなぁ。ていう。
DIME:(笑)
岡田:もう、教養番組ですよ。みたいなガンダムを観たいですよ。
DIME:(笑)いや、ファンにはもうたまらないですよね、ほんとに
岡田:そうですよ ガンダムってそういうもう、遊びの場ですよね(笑)
DIME:あーー。
岡田:それは楽しいなって思うんですけど。エヴァはね、そういうことが楽しめないんですよ。
DIME:あーー。
岡田:エヴァはいろんな人がいろんなことを言って、庵野君が悩みに悩んで、じゃ、もう一回最初からやりますって言って、またエヴァを一からやるのを待つのが、一番楽しい、楽しみ方だと思うな
DIME:たしかに(笑)
岡田:だから今度の劇場版も最後まで行ったら、多分庵野くんが5年間ぐらい休んで、また最初からエヴァやってくれると思いますから、出来れば次はTVシリーズでやってくれるのがいいなあ。
DIME:なんかあの、お台場ガンダム、あと静岡のガンダムは、ガンダムはもう宗教としていいんじゃないかというのも仰ってましたよね。
岡田:宗教っていうか、なんでしょうね、
もう名物にしちゃえばいいと思ってるんですけどね。
地方名物として静岡が取ったから静岡のものになっちゃうのかな?
水木しげるも鳥取が、米子が取ったり、いろんなところに水木ロードとか水木の里があるから、別にどこであってもいいと思いますけどね。
石原慎太郎の記念館も、たしかどこにでもあるわけだから。
DIME:でも結構聖地巡礼とかすごいみんな行ったり通ってるって…。
岡田:ガンダムをこうやって宗教にすればというあれは長い話なのでまとめてこの中には入れられないから。
記者:あ、はい。
岡田:すみません。
記者:最後に写真の撮影をさせていただきたいんですけれども。
岡田:あ、はい。
(撮影開始)
DIME:少年サンデー、相当古くからありますね。
岡田:そうですね。はい。
DIME:小学館で少年サンデーの第1号がなくて…結局古本屋で買ったんですよ。
岡田:今創刊号で50万円ぐらいですかね。
(撮影終了)
DIME:全然関係ない話ですけど、経済評論家の森永卓郎さんを取材したときに、森永さんもすごいこういうフィギュアとかブリキのおもちゃとか大好きで、基本的にはそれの美術館を作るために自分は仕事をされていると…。
岡田:と、仰ってますよね。
DIME:岡田さんはこういう貴重なものをなんか公開するような…。
岡田:公開っていうか、僕はあんまり、あのその、集めてどうだっていうよりは、それでどれぐらい自分が語れるかなんですよ。
だからこれは見せてお話の…
写真の下にエッセイ入れるとしたらその写真の部分がこれですから、語れないものはいらないんですよ。
DIME:なるほど。exのかたは、いつも取材の現場にいらっしゃるんですか?
岡田:そうですね。取材のときには誰かに来てもらって、記録を取って……っていうやり方ですね。
岡田:はい、はい。それで、DIMEさんが発売されたら、そのときに、これに関して裏話はこのページへっていうふうにやっていただいて、うちに来るとこのときの、僕らの方で撮った写真とか、そのときの岡田斗司夫の裏話とか、取材の前にこんなことを考えてたよ、みたいなものが載って、うまくそちらの誌面とリンクするという……。
DIME:あ、なるほど。
岡田:両者、ウィンウィンの関係というやりかたですね。
僕らはそれで、サイトに来てくれる人が増えればいいですから。
DIME:本当に楽しませてもらっております。
「ツイッター読書会」(注 ツイッター公開読書 毎週月曜に実施中!)もおもしろいですねぇ。
岡田:あ、ありがとうございます。
DIME:評価経済になっていくときに、アニメ産業も今後、何か変わってところがあるんですかね。
岡田:んーとね、今みたいにアニメをパカパカ、簡単に作れなくなりますね。
それは、売れるから作れるとか儲かるから作れるとか思う人たちがどんどん仕事しにくくなって、評価経済っていうのはどういうことかっていうと、「こんなアニメを作りたい」っていう監督のところで、「安くてもいいから」っていう人が集まって作るようになるんですね。
だから、押井さんとか庵野くんとか、作家性がある人はどんどん有利になって、今までメジャーな作品、おもしろい作品を手掛けていないアニメーターとか作家が、どんどん不利になっていく時代なので、アニメーションっておんなじ1億円かけたのに、えらい出来の差があるなっていうのが、どんどんはっきりしちゃう。
DIME:本作りもそうでしょうね。
岡田:はい。どうでしょうね。
DIME:じゃ、アニメーターの人も厳しいですよね。
岡田:本業にするには無理がある仕事ですね、あれは。
そんなにね、スポンサーも今はないから、映像作品で30分のアニメを毎週作るっていうのが、限界は限界なんですよね。
DIME:exみたいな形で。
岡田:ほんと、そうだと思いますよ。
だから、京都アニメーションにしてもガイナックスにしても、ex化して、1万人ぐらいのファンが支えて、その代わりアニメ作れってやった方が、たぶんまともに機能するはすると思うんですけれども、まだ作り手側の方には、たとえば著作権を全部自分で持ちたいとか、大ヒットするんじゃないかというスケベ心があるかぎり、なかなか動かないですよね、そこまでは。
DIME:ありがとうございました。個人的にひとつだけ聞きたいのですけど、良質なコンテンツからどんどんフリーになっていくとおっしゃっていて、原価に近くなる……と、土地ってどうなるんですかね。家賃とか。
岡田:国民の人口自体が減るんだから、家賃はこれから下がりますよ。
みんな、そんなにね、広い面積が要らなくなる。日用品が少なくなってきて……だって、ネットにログインできたら何でもいいわけでしょ? つまり、僕らはマンガ喫茶プラスのスペースしか要らないんですよ。
で、結婚しなくなって、家族の形態が崩れたら、僕ら家を欲しくなくなるから。
ほら、今は車が売れない。なんでかっていうと、若いやつらが車を欲しがらないっていってるじゃないですか。
だから日本の危機だっていってますよね。次は何かっていうと、みんな、家を欲しがらないんですよ。
生涯賃貸でいいっていいだして、次に、生涯賃貸でも、自分の部屋でなくてもいい、誰の部屋でもいいっていうふうに(笑)、そうなんですよ。
DIME:(爆笑)
岡田:だってそうでしょう?
僕ら、自分のものっていうのは、もうちょっと通信がやってきて本とか買わなくなって、データとかが全部iPadとかで読めるようになったら、たぶん、カバンひとつでどこでも行けるんですよ。
僕はこれを「国民のスナフキン化」っていってるんですけども(笑)、みんな「ムーミン」のように…自分の家を作って、ム―ミンママのように家のまわりをこういうふうにやるっていう、そういう富裕層が国民の5%~10%ぐらいいて、残りはスナフキンのようにうろうろして、そういう人らの近くに住むとかっていう……。
小飼弾が、こないだ対談したときに、国民全員はもっと「たかること」を覚えなきゃダメだって。
DIME:たしかに。そうかもしれない。私のまわりの結婚してない――私もしてないんですけど――友だちとかは、もう、将来どうやって一緒に住むかの計画を立てていて(笑)
岡田:そうでしょう?
DIME:すごい美人の子が、「すごい金持ちを捕まえて結婚するから、みんな呼んでくからおいで」みたいな……(笑)
岡田:本当にそうだと思いますよ。
友だちと一緒に住むとか、あと、全然年齢層が違う者が疑似家族みたいなものを形成して一緒に住むっていうのが、僕は未来像だと思ってるんで。
DIME:そうですね。「それでも、ひとりの人と」みたいなのって薄くなっていく……
岡田:ひとりの人との関係っていうのは、何年とかいう時限的にはあるでしょうけども、20年30年って、現にないじゃんっていうふうに、みんな、はっきり気がついてきましたから。
だから、そういうことをする人が3割とか4割ぐらいは、たぶん残ると思うんですよ。
結婚して子どもを作ってっていう人が残ると思うんだけど、ほとんどの人は、それによるメリットよりは、そこに行きつかないことによるコンプレックスとかのデメリットの方が多くなってきて、成立しなくなってくる。
じゃあそんな、フリーのおねえさんたちを、いっぱい紹介してくれたら、わが社は合コンもやっておりますので。
なんせ男子率高いですから(笑)
DIME:どうもありがとうございました。
岡田:はい、お疲れさまでした。
【コンテンツ制作スタッフクレジット】
監督:オタク研のナオト
プロデューサー:メルマガのヒデユキ、代々木のアニキ
書き起こし:セレッソのナオヤ、トキメキのミワコ、洋楽のケイスケ、ニセ調理師のタカユキ、ぐうたらのケンジ、のぞき見のミホコ、清水のテルユキ
録音・写真撮影:書籍担当のミツノリ

