(10月11日(月)公開) ネットには膨大な情報があふれかえっていますが、あまりにも情報が多すぎるせいで逆に有意義な情報を見つけにくくなってしまいました。最近、オカダトシオはほとんどウェブを見なくなってしまったようです。その代わりに大事になってきたのが「サロン」なのだとか。 情報をこまめに集めようとすると、疲れてしまう ——オカダさんはオタキングexやツイッターなど、ネットで積極的に情報を発信してますよね。逆に、情報を取り入れるのに、ネットをどう活用していますか? iPadはウェブを見るのにけっこう便利ですけど。 最近僕は、ウェブページをほとんど見なくなったねえ。ツイッターで知り合いのツイートをちょっと見て、面白そうだと思ったのを少し覗くくらい。あとは、日刊サイゾーで芸能情報を見て、「えへへ〜」ってするかな。 ——下世話な情報って、時々無性に覗きたくなりますよね(笑)。 そうそう。 ——ブログやニュースサイトを見ていると、気になった記事をついつい「はてなブックマーク」なんかにブックマークしちゃうんですが、そういうことをしていると何だかネットの働きバチになったような気がしてくることがあります。 ブックマークする作業は、ある意味ボランティアだよね。こまめにブックマークする人を見つけたら、自分はその分野の情報をこまめに集めるのはやめちゃっていいんじゃない? 僕は目利きでいようとして疲れるなら、割り切って消費者になるよ。ほんと、ブログも読まなくなったなあ。 多様性のあるサロンは、巨大な集合知である ——でも、読む本にしても何らかのソースから仕入れるわけでしょう? 最近僕にとっての情報ソースは、「バベルの塔」(オタキングexの社内用SNS(※))だけだよ。知的な人間が100人以上いれば、情報ソースとしてはもう十分。はっきり言って、今の時代の人間に必要なのは「サロン」だと思うよ。知性にしても感性にしても、オタキングexくらいの規模があれば、自分の見たいモノ、見ておいた方がよさそうなモノは必ず誰かが見て知らせてくれるから。 ——昔から趣味のサークルはあちこちにありますよね。 この前、僕はmixi内にある読書サークルのイベントに参加してきたんだ。その読書サークル内では、課題図書をみんなが出し合うことで、メンバーは十分な知的情報を得られている。そのサークルには数千人のメンバーがいるのだけど、メンバーの趣味や感性、知性は共通でなくてもまったくかまわない。うちのオタキングexも同じで、20歳から50歳以上、男性女性、さまざまなバックグラウンドを持った社員がいる。それがオタキングexとしてグルーピングされていることで、「他人が興味を持っていることは無視しないようにしよう」程度の関心をお互いに持つわけだ。それによって、十分に巨大な知性、集合知になっている。 ——趣味のサークルに比べて多様性に富んでいると。 近い感性、似た趣味の集まりの方が、集合知としては貧弱になりやすいんじゃないかな。そうではなく、できるだけランダムにメンバーを集めた方が、集合知としてよく機能するんじゃないだろうか? メンバーのことをあまりにも知らないと申し訳ないから、とりあえず他のメンバーの日報にも目を通すようになるでしょ。 僕はオタキングexの社長として、全員の日報に目を通している。毎日ものすごい量の日報が書かれていて驚くよ。日報は面白いのもあれば面白くないのもあるし、興味がある本の紹介もあればまったく興味を持てない本もある。でも、それに全部目を通していると、どんどん自分の興味の幅が広がっていくのがわかる。本の買い方も変わったね。 ※:SNSは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略で、人同士のコミュニケーションを活発にするための仕組みを取り入れた会員制のサービス。日本国内ではmixi、世界的にはFacebookが圧倒的な会員を集めている。 書評ブログやグルメサイトは情報の防波堤として使う ——どんな風に変わりました? これまでは、例えば小飼弾の404 Blog Not Foundを覗いて、面白そうな本を見つけていた。だけど、今はオタキングex内で気になった本があればそのままAmazonでポチッとするか、404 Blog Not Foundで「買うかどうか」じゃなくて「買わなくてもいいか」を確かめる。彼はすっごく細かく書いてくれるから、僕にとっては情報のディフェンダーになるんだよ。動機付けはオタキングexで得て、404 Blog Not FoundかAmazonで購入の最終確認をしてる。 ——そういう多様性を持った集団って、どうやって見つければいいんでしょう? mixiやブログを回って、気になった人やグループを探す? 読書や映画サークルを作るのがいいんじゃないかなあ。「みんなで集まって映画を見よう!」というのではなく、面白かった本や映画を報告し合う程度のゆるいサークルがあれば一番いいんだろうね。 ——そういえば、絵の描き方についてオタキングexで質問したら、ゆるデジのイラストを描いてくれた方にある本を紹介されたんです。このメソッドが面白くて。今までお絵描きにまったく興味はなかったんですが、調べたところそのメソッドのワークショップが開催されていることがわかったので今度参加してきます。 ブログで見かけただけでは、実際に参加しようというところまでなかなかいかないわけだよ。何らかのグループに属しているから、緩い拘束力というか、強制力が働くんだ。 ネットが登場したことで、僕らは他人から離れて情報だけを動かせると思い込んでしまった。だけど、逆の作用があっても面白いと、僕は思うようになってきたよ。 サロンで趣味が広がっていく ——それって、本来mixiなどのSNSが目指していたことなのかもしれませんね。最近Facebookという米国発のSNSが話題になっていますが、ここはそのうちGoogleを追い抜くんじゃないかとも言われています。 オタキングexはその文脈でいってもけっこういい線行っていると思うよ。サイト内で情報交換するだけじゃなくて、サイトを作って自分たちで発信するところまでやっているからね。単純そうに見えるけど、やっていることはmixiやFacebook内のコミュニティやサークルより複雑なんだ。 ——人付き合いが苦手な人は、まずサークルを情報ツールと割り切って使ってもいいのかも? そうだね。「自分はこれが好き」と言えば、周りの人もそれを好きになってくれる可能性が高い。そして、「これが好きなら、こっちも面白いんじゃないですか?」と勧めてもらえたりする。そうやって自分の趣味を増やしていけるのがいいよね。言ってみれば、自分の部屋にもう一つドアができるようなもの。ドアを開ければ、その向こうにはいろんな奴らがいて、ワーッとしゃべっている空間がある。だけど、ドアを閉めればちゃんと一人になることができる。そういうサークル、サロンにいつでも入れる通行証は持っておいた方がいいよ。









サークルを作ったり、参加するのがよいのは確かだね。そのサークルは目的別や趣味別である必要はなくて、地域別や年齢別でもかまわない。そういうサークルに複数所属して、人間的な付き合いをしていくと、どんどん自分のアンテナが広がっていく。
これまでは、書評ブログや食べログで、本やレストランの情報を集めていたかもしれない。でも、これからはまず自分の付き合いがある人から情報を得て、それを書評ブログや食べログで確認するという流れになるんじゃないかな。
