05.すべてはFREEに向かう(離陸編)
お金のことを書こう。
お金のことを書くのは、あんまり上品な行為だとは言われない。
でもやっぱり、この部分にも本音は隠れている。
ここを隠したりアイマイにしたら、ちゃんとした説明にはならないんだよね。
だからあえて、お金のことをちゃんと書こう。
本が売れない時代だ、と言われている。
知り合いのライターや編集者が次々と仕事をやめて、副業をはじめたり業界から消えていったりする。
とりあえずどっかの大学か専門学校の講師になれれば喰える、とそっちにシフトする人も多い。
無理もないよ。だって単行本の初版が5000部とか、ひどい時には3500部と言われてるんだから。
評論系の本は書くのに時間がかかる。取材もするし、資料も買いそろえなきゃいけない。関係者に地道なインタビューだって必要だろう。
書くのに1年はかかってあたりまえ。ヘタしたら2〜3年という話も珍しくない。
で、出版社からは「評論系は売れないんですよ」とイヤミを言われながらなんとか出版したとする。
定価は1300円ぐらいだろう。それ以上だと売れないから。
印税は10%で一冊130円。初版が運良く5000部で、合計手取りが65万円。初版が3500部だったら、45万5千円だ。
一年かけて必死で書いて、50万円前後。
売れればいい?
いやいや、売れてもノンフィクションは3万部行けば大ヒットと言われてるんだよ。
3万部でも390万。毎年一冊、大ヒットを出し続けても年収は390万円なんだ。
年収390万は安くない?
いや、読み返してくれたまえ。
「毎年大ヒットを出し続けたら、年収390万円」なんだよ。
毎年大ヒットを出し続けることができたら、その人はかなりの天才だと思わない?
そんな人ですら、この程度しか稼げない。
それが出版界の現状なんだ。
そんな時代でも、僕はずいぶんと恵まれているほうだと思う。
この15年ずっと、書き下ろしの依頼も途切れずにあるし、連載の単行本化も進んでいる。
新聞の連載だって4月から一つ増える予定だ。
でもね〜、これがいつまでも続くとは思えないんだ。
だから、以前からずっと、僕は「本を書く」以外の収入源を模索していた。
事情通に言わせると「本は名刺代わり。講演会やセミナーで稼ぐ」ということになる。
たしかに講演会は割がいい。
60〜90分喋るだけでウン十万円だ。
ところがね、ここだけの話、セミナーはもっと儲かるらしいよ。
100分程度のセミナーで2万円ぐらいは当たり前。それを4回で1セットにして合計8万円。セミナーに50人来れば、あっというまに400万の売り上げ が立ってしまう。
マジメに毎年ベストセラーを出すのと同額が、セミナー1セットで稼げちゃう。
売れているもの書きなら、参加者は100人を越えるかも知れない。
セミナー1セットで800万。年間で10回シリーズを転がせば、それで8000万の売り上げだ。
すげえ!とんでもなく儲かる!!
いや、まだまだ上には上があるんだよ。
直接、参加者を呼ぶタイプのセミナーではなく、CDやビデオ素材を定期購読させる「通販型セミナー」だったら、利益は天井知らずだ。
CDやDVDプラスちょっとした冊子の教材を毎月送付して、年会費が10万〜20万。その他、特別セミナーや特訓ゼミなどという名の4〜10万円する コースをどんどん受講させる。
ネットでちょっと調べただけで、こういうビジネススクールやセミナーがすごく増えているのがわかるだろう。
不景気だからこそ、ビジネスマンは自分磨きに熱心だ。いま経済的に余裕のある人には、そういういわゆる「セミナージプシー」になっちゃってる人もあんが い多い。
こういう商売に鞍替えすれば、年収は軽く億を超える。
「岡田さんぐらいテレビに出ている人なら、セミナーをやればすぐに儲かりますよ」
そう言われたこともある。
正直、その時は心が動いたよ。
だって「年収は億」だよ。
僕は子供の頃、貧乏だった。晩ご飯のオカズが漬け物だけだったり、きな粉と砂糖だけだったことも毎週のようにあった。
だから貧乏がどんなものか、人よりは知ってるつもりだ。
「いつまでもデブと思うなよ」が53万部売れたとはいえ、半分は税金に持っていかれるんだ。いや、それ以前の借入金の返済で、とっくの昔になくなってい るよ。
「なにをバカ正直にいつまでも文章書いたり、入場料2000円のイベントで3時間も話してるんですか?もっと効率よく儲けなきゃバカじゃないですか?」
そう言われた時、正直な話、僕は「そうか、儲けなきゃバカなのか」と思った。
でもね、そういう仕事は楽しくない。
ダイエットの講演もセミナーも、やろうと思えばできるだろう。
たしかに儲かるかも知れない。
でも、楽しくない。
きれい事は言いたくないよ。
お金は嫌いじゃない。大好きだ。
贅沢は好きじゃないけど、預金通帳に金額が増えるのを見るのは大好きだ。
でも、お金を儲けて何をするのかというと、僕は本を買ったりオモチャを買ったりするだけだ。新しいパソコンを買うかも知れない。でもそれだって、仕事に 使うに決まっている。
「寿命があと一年だったら何をしますか?」という質問があるけど、僕の答えは簡単だ。
昨日と同じく仕事をする。
このブログを書いて、近所のスーパーで食材を買って自炊して、録画したアメトークを見て「最近つまんないなぁ」と文句を言う。
つまり、これが僕の人生なんだ。
長年かけて作り上げた、僕という人間そのものの行動パターン。
これが僕は気に入ってるんだ。
お金の多寡で変わるのは、ブログを書く時のパソコンと、買い物に行くスーパーの食材コーナーと、アメトークを見る時のテレビのサイズ程度。
お金ってそれだけのものだと思う。
外食する時は贅沢するかもしれない。
でも贅沢な外食ってカロリー高いだろうし、そんなに毎日食べたいようなもんじゃない。
こないだハワイに行った時はエコノミーだったけど、それがビジネスクラスにできるぐらいかな?でも海外旅行だって年に2回もやれば充分だ。
だいたい、ハワイに行ったのだって仕事をするため、カンヅメに自分を追い込むためだ。
ハワイで仕事するのは楽しかったぞ。
そう、楽しかった。
人生で楽しいことは、お金を使うことじゃない。
やりがいのある仕事。
自分が誇れる仕事。
それがないと、いくらお金があってもけっきょくは「生き甲斐」や「誇り」をお金で買うことになっちゃう。
それはあまりにカッコ悪い。
そんなことを考えて、僕はけっきょくダイエットのセミナーとか通販とか、そういうのはやらずじまいだった。
じゃあ、と話は最初に戻る。
僕はどうやって喰っていけばいいんだろう?
出版は限界に来ている。
テレビの出演?ギャラは出版より安いよ。
若くて僕よりもずっと最新のマンガやアニメに詳しい人もワンサカいる。
僕の出番は減る一方だろう。
だからぐずぐず言わずに、セミナーとかやって稼げばいいじゃないか!
そう自分を叱りつけたこともある。
さんざん考えて、ようやっと出た結論は「まず、どういう人が僕のお客さんなのか知りたい」だった。
とりあえず、「ひとり夜話」に来てくれる人はどんな人なのか?
このブログを読んでくれている人は、どんな人なのか?
マーケティング、という行為ができるような専門教育は受けていない。
ただ、勘みたいなものが働いた。
「どうやって稼ごう」以前に、いま現在僕に対してお金や時間を使ってくれている人、一人ひとりの顔がまったく浮かんでこない。
「お客」「ファン」というラベルの向こうに隠れて、一人ひとりを見ずにずっと仕事してきたんじゃないか?
どんな人が僕の話を聞いてくれてるのか知らずして、セミナーなんてオレはバカじゃないの?
そう考えたから、このブログで「岡田斗司夫とメール交換しませんか?」というプロジェクトをはじめたんだ。
ブログで呼びかけたら、反響は凄まじかった。
あっという間にメールの受信フォルダは未読であふれ、僕は毎日毎日メールを読んで返事を返すだけの日々を繰り返した。
いろんな人がメールをくれた。
はじめて知ることばかりだった。
実はかなりの主婦が、僕の本を読んでくれていること。
10年前にハマって読んで、また数年前から読み出したというパターンが多いこと。
そんなメールを見て、「う〜ん」と考えちゃったよ。
みんなやりくりして給料やバイト代や家計から僕の本を買ってくれる。
だから無料のGyaOジョッキー版「ひとり夜話」をどんなに楽しみにしてくれたか、たくさんのメールに教えられた。
東京や大阪で毎月イベントやって、僕としては「3時間で2000円のイベントだからお得だろう」「オレも頑張ってるよな」と思っていた。
とんでもない。
まず東京や大阪に行けるだけで、そいつは地理的に特権階級なんだ。
普通、そんなところには行けない。
スケジュールが合わない。
交通費や宿泊費を考えると、お金の余裕がない。
休日に家を空けるなんて、家族の賛成が得られない。
なんて僕はバカだったんだろう。
そんな人たちに向かって「タメになるから一回4万円の僕のセミナーを受けなさい」と言えるはずがないじゃないか。
それにね、セミナーって実は役に経たないと僕は思っている。
だって、その理由は・・・
というわけで、いよいよ話は核心に入るよ。
でも、今日はもう充分。長すぎたよね。
続きはまた来週にしよう。
良い週末を!
06. 本やセミナーは役に立たない
土曜のあっちのブログで、僕はこう書いた。
「実はセミナーは、役に立たない」
こんなこと書くといろんな人から怒られたり呆れられたりするだろう。
でも僕は、さらに怒られそうな事も書かなくちゃいけない。
「でも、本は、もっと役に立たない」
そう、本ってあんがい役に立たない。
『いつまでもデブと思うなよ』であれ、『レコーディングダイエット決定版』であれ、その他僕の本でも誰の本でも同じだ。
名前を出して申し訳ないけど、あれだけ賢い勝間和代さんの本だって、僕よりマシかもしれないけど、それでも役に立たない。
僕たちもの書きは、みんなイヤというほどそれを知っている。
今日はそのことを書こうと思う。
土曜日に続いて、かなり僕の心に負担がかかる話題だけど(笑)、できるだけ正直にくわしく説明してみるね。
『いつまでもデブと思うなよ』という本がある。
ダイエット本としては53万部という空前のベストセラーだ。後に出たムックや関連本を含めれば、総関係部数は100万部を越えるだろう。
えへん、偉いだろう。
俺ってこんなに役に立つ本を書いたんだぞ!
最初のうち、僕はこんな風に有頂天だった。
ところが、思っていた以上の人が「レコーディングダイエットやってみたけど失敗した」というではないか。
発売後数年たった今でも「チャレンジしたけど失敗した」「自分には向いていない」という人がかなりいる。
僕は、この事実を認めるのにかなり抵抗した。
みんな、ちゃんと本を読んでるの?
いいかげんなまとめサイト見ただけじゃない?
もちろん、そういう人も多いだろう。
でも、「ちゃんと僕の本を読んで」「ルール通りにチャレンジして」、そしたら成功率はどれぐらいなんだろう?
僕はドキドキと気になって、今までのメールやお便り、それにブログの書き込みを検索して数字を出そうと試みた。
いや、「試みた」という過去形はウソだね。いまでも調べているよ(笑)
各種検索エンジンを駆使して、僕の名前やダイエットなどの話題が出ているページにはかならず目を通して、もう3年近い。
我ながらキモチワルイ粘着質な(笑)、そんな努力をつうじて、僕なりの推論が立ってきた。
では、この本で提示されたレコーディングダイエットというメソッドは、どれだけの人を痩せさせたのか?
100万人のうち、果たしてどれだけの人がダイエットに成功したのだろうか?
もちろん、正確な数字なんかわかるはずはない。
それでもフェルミ推定を使えば「蓋然性の高い数字」をはじき出すことは可能だ。
僕の読みでは10万人前後だ。
5万人以上〜15万人以下の範囲だろう。
かなり多くの人からメールやお便りをいただいたし、ダイエットのイベントやトークショー、テレビに出た時の視聴者からのお便りなども勘案した。それらの データから考えても5万人〜15万人というのは相当に妥当性の強い数字だろう。
そう、たった1割なんだ。
あれだけのベストセラーなのに。
ダイエットを成功させて目標体重に到達できた人は、わずか10人に一人。なんとか体重を減らすことはできた。一度減ったけどまたリバウンドした、という 人を含めても30万人以下だと思う。
せいいっぱい楽観的に考えても三割。現実的に考えたら一割程度。
それぐらいの成功率しかないんだよね。
たぶんこれ、僕の本だけじゃない。
ライフハック系にしても思考法や自己投資系の本にしても、たしかに読んだら「やる気」や「勇気」はもらえるかも知れない。でも成功率は僕の本と似たり 寄ったりのはずだ。
本は、役に立たないんだ。
だから、本の著者はセミナーに熱心になる。
本だけじゃ足りない。伝えきれない。
本だけじゃ失敗率が高すぎる。
だから優秀な書き手やライターは、ベストセラーを出すとセミナーや講演に手を出すんだよね。
もちろん経済的な問題もあるだろう。セミナーや講演はびっくりするぐらいお金になるから。
しかし、本を書く人種、ライターやもの書きという人たちにとって、「生きるための劇的な動機」というのは「人にものを伝えたい」だ。儲かればいい、金に なればいい、と思ってるもの書きなんかいない。そう僕は断言できる。
なぜか?
土曜のブログに書いたとおり、そんなにお金が好きな奴は、もともとこの業界に入ってくるはずがないからだ(笑)
こんな、誰がどうやっても儲かりようのない業界に入ってくるのは「頭の回転は早いけど生きるのが下手くそなお坊ちゃん・お嬢ちゃん」だけだ。露悪ぶって 「金のために書いてる」とうそぶこうとも、金が欲しければこんなすきま風の寒い業界にいるはずがない。
ウソだ。
単なるスタイルだよ。
「人に読んで欲しい」「影響を与えたい」という、善良だけど業の深〜い奴らばっかりの世界なんだ、出版界は。
さて、では著者が読者にじかに言葉を伝えられるセミナーはどうだろうか?
成功率は上がるのか?
残念ながら、そうはいかない。
セミナーで上昇するのは、受け手つまり聴衆の動機付け、モチベーションばかりだ。高価なセミナーを聞くと、熱心にメモを取って参加すると、たしかに「や る気」は上がる。優秀なセミナーだったら「絶対にやりとげよう!」と決意できるのは間違いない。
でも、その決意はせいぜい一週間〜一ヶ月。ダイエットというロングレンジの目標には、やはり役に立たない。
というわけで、セミナーも役に立たない。
もちろん、本を読むだけより役に立つだろう。
それでも成功率はせいぜい20〜30%だと思う。
たぶん、良心的なセミナー主催者なら、僕の出した数字を認めてくれるはずだ。
「成功率が20〜30%もあったら上等すぎる。セミナーはそれぐらいで充分」
プロの誇りを持ってる人なら、そうはっきり言ってくれるかも知れない。
でもね、僕にしてみれば「本だけなら、成功率10%」「セミナーで繰り返し教えても成功率20〜30%」というのは低すぎるんだよ。我慢できないほど。
ではどうすべきだろうか?
簡単だ。「読むだけ」「聞くだけ」ではなく、もっと近づいて教えればいい。
英語を学ぶ時のことを考えよう。
英語を本だけで学ぶ、すなわちテキストだけ買って勉強したら、成功率はたしかに低い。英語を身につけられる人は10%以下かもしれない。
しかし英語学校に通うと話は違う。50%以上の成功率で、かならず成果はでる。
なぜか?
学びに必要不可欠な段階、「理解する」「やってみる」「成果を得る」があるからだ。
英語を習って(理解する)、自分で話してみて(やってみる)、通じるとすごくうれしい(成果を得る)。
この3つのプロセスを経ると、学びというのはかなり効果的になる。
語学を習得しようとする人が、テキストだけじゃなく学校に通うのはこういう理由なんだ。
で、だ。
実は完全な学び、会得するにはもう一段階必要なんだよね。
「理解する」「やってみる」「成果を得る」「人に教える」。
最終段階の「人に教える」という仕上げプロセスで、自分の中の学びはいきなりパースペクティブを持ち、はっきりした世界観を構成する。
これを「見識がある」というんだよね。
経験ないだろうか?
新入りや後輩に「なぜそうするのか?」を教えた瞬間、その刹那にいままでアイマイだったことがいきなり理解できる。
人に勉強を教えてると、自分のほうが成績が上がっちゃう。
そう、理解する・使いこなすというのは「人に教える」でようやっと卒業段階にはいるわけ。
だから今のこのブログは、価値がある。
ダイエットに成功したもの、失敗したものが互いに教え合い、悩みを打ち明けて、それぞれの成果を得ているから。
わかるだろうか?
このブログの最大コンテンツは、僕の日記や駄文じゃない。
そんなのは、ダイエット成功にたかだか10%程度しか寄与しない。
このダイエットブログの目玉は「ちびうさまきこ」さんだ。
「めるへん」「タッキー2世」「りあるぴんく」「うどんきつね」「ちゃーちゃん」「よめこ」「ミイ」「D子」、その他の、ダイエット初心者を優しく励ま し、適切で多様な助言を与えるコメントに常駐してくれている、常連さんたちだ。
彼らこそ、レコーディングダイエットの本質、学びの本質を体得している当事者なんだ。
「自分もわかんないかもしれないけど、教えてあげなくっちゃ」という気持ちからまさに学びつつある、レコーディングダイエットというメソッドに血肉を与え てくれる存在。
だから僕は、このブログを「レコーディングダイエット2.0」と名付けた。
もう、「岡田斗司夫のダイエット法」じゃない。
このブログに参加する全ての人の共有知財であり、僕はその管理者なんだ。
おっと、今日も長くなりすぎた。
でもまだまだ語らなきゃいけないことが多すぎる。
なによりもあの不幸な天才の話をしなくちゃ。
明日は栄光に包まれながら、誰にも理解されずに死んだ孤独な男の話を、
マイケル・ジャクソンの話を聞いて欲しい。
今日はここまで。