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2010年10月13日

2010年10月掲載・毎日新聞「異論反論」 科学離れとノーベル賞 

日本人科学者がまたノーベル賞を受賞した。「子どもの科学離れに歯止めが」という声も多い。でも僕には「子どもが科学に興味を持つ=技術大国の復活」という単純な図式は信じ切れない。

子どもをまきこんだ大ブームは、社会人として活躍する時期に、成果があらわれる。

 いま10歳の子どもが30歳、40歳になる頃、ようやく社会に大きな影響を及ぼす。ブームとは”埋蔵化石資源”なのだ。

 昨今のノーベル賞日本人受賞ラッシュは70歳代の科学者が中心。彼らが業績を残したのは今から30年以上も前の話だ。

 彼らの子供時代は、戦後の高度成長期。科学は人類を幸せにする、日本を豊かにする、と信じられていた時代だ。SF小説や手塚治虫がブームで、子どもたちの将来の夢は科学者だった。

 数学や物理、化学ができる子は理系に進む。会社と言えば、製造業という時代。大企業に行けなくても、製造業で「国作り」そのものに参加できる。そんな時代だった。

 理系を目指す子どもが大量にいた結果、競争原理が働き、優秀な科学者が生まれ、世界に誇れる成果がやがて生まれた。

 教育カリキュラムがどうこうの問題ではない。単に、母集団が大きかったと言う統計の問題。それがかつての技術大国日本の正体だ。

 別の例を考えてみよう。70~80年代、ロボットアニメなどアニメブームが巻き起こった。影響を受けた子どもたちは大人になって、20~30年後の90年代からアニメやマンガ、ゲームなどいわゆるオタク系コンテンツ産業が海外で広く認められるほどの強みを発揮した。

 携帯電話やIT産業の中心層は、かつてのファミコン、マイコンブーム世代の子どもたちが成長して支えている。
 さて、子どもたちのブームは良いことばかりを引き起こすわけではない。

 科学ブームで成長した子どもたちは、後に公害や環境汚染に鈍感な大人たちを作り出した。オタク世代は、多数の優秀なクリエイターを生み出すと同時に、さらに多くのフリーターを生み出した。

 80年代バブル時代の大恋愛ブームを経験した子供たちから、「結婚できないアラフォー」がいっぱい生まれた。

 90年代の自意識過剰型アニメブームは、30代になっても自意識が重くのしかかる世代を作り、彼らもまた家族や友人との関係、恋愛が長続きしなかったりと悩んでいる。

 子どもたちを巻き込むブーム。その成果は、彼らが成長するまでわからない。

 だから科学だ技術だと言う前に、なにより「大人の仕事は面白い」ぐらいが伝われば充分でないだろうか。




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